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警備業ヒューマン・インタビュー
――新会長③ 東京警協2022.08.01

村井豪さん(ALSOK 代表取締役 グループCEO兼CTO)

五輪遺産「価値創造」共有へ

<<東京警協の12代会長、ALSOKではCEO(最高経営責任者)とCTO(最高技術責任者)を任されました。はた目には、重い責任を双肩に担ったように思われます。感慨はいかがですか>>

いずれも重責であることは間違いありません。東警協は6月の理事会で新会員を承認し、加盟社は大台を超えて1002社になりました。ALSOKの社員は連結グループで4万3000人を超える会社になりました。それぞれ歴史のある組織です。びっくりするようなことをやるのではなく、積み上げてきたものをしっかり継続しながら発展していく道筋を示したい。皆さんの信任を得られるように頑張りたいという思いです。

<<「東京2020」から、ちょうど1年です。警備JVでは幹事長を務められました>>

いろいろなことがありました。なにしろ、553社が「オールジャパン」「ワンチーム」で過去最大の警備を展開したのです。国際オリンピック委員会(IOC)にJV方式を提案したときのことです。「そんなにたくさんの会社を集めて統制はとれるのか?警備の品質を保てるのか?」と散々でした。私らは「日本はものを決めるまでは慎重だ。しかし形が見えてきてやるとなったらやる。約束は守る。他の国とは違う」とIOCの責任者にはっきりと言いましたよ。

警備の人数一つでも50人だ、それを100人にしてくれ、やっぱり30人でいいみたいな。そんな話が何度も発生しました。そんな困難を乗り越え、踏みとどまって、やりきる力がこの業界にはあるということを確認できたことが大変なレガシー(遺産)なのじゃないか。警備業界は「約束を守れる業界」を示した。日本だからできたのではないかと自負しています。

<<JV警備のポリシーは「想像と準備」でした」>>

何が起こるか分からないことを想像し、警備計画を練るということです。いろいろなトラブルが起こったので、その都度警備の仕様を練り直すことになりました。担当者は追い込まれることもあり、それを担っていただいた人たちは変更を強いられたのです。東警協の主要会社には、運営サイドにも回っていただきました。いくつかの仕掛けが機能したからこそやりきれたと考えます。途中でJVから離脱するとペナルティーを課すルールも作りました。1回参加を決めた会社には約束を守ってもらいたいという思いからです。

一方で、仕事が減ることがあれば、キャンセルフィーを払います、という仕組みも作りました。参加するに値するしっかりした体制です。そういう仕事の進め方を東警協会員の皆さんも体験できた。協会には衣川淳一専務理事をはじめ有能なスタッフが揃っています。これは今後の仕事に生かされると思います。

思い起こすと、スタジアム設計のやり直し、ロゴの変更、そしてコロナ、組織委の会長さんも途中で代わられました。想像できるトラブルは全部来た感じです。起こらなかったのは地震、台風とかの「天災」だけだったのではないでしょうか。

<<好結果をもたらしたカギは、どのあたりにあると?>>

2つあります。1つはトラブルを回避できたこと、もう1つは先端技術を使用したということです。象徴的だったことをお話しします。大会期間中、クリーンにしなくてはいけないエリアで23件の侵入被害を防ぎました。ペリメーターフェンスにセンサーを張り巡らし、カメラと連動して侵入者があれば、センサーが反応しカメラがその方向に向き、警備員の所持するデバイスに映像が送られる仕組みです。侵入者に「あなた、何をしているのですか?」と身柄を抑えることが出来たのです。

警備員はそういうものを使ってテクノロジーを体感できました。顔認証の使い方も彼らは習熟したのです。業界の向かう方向をイメージできたと思います。使った人と使わなかった人では差が出ますよ。

<<警備員の高度な技術は警備料金の適正価格につながります>>

新しい価値の提供なしに自分たち側だけの主張をすることは難しいことだと思っています。警備会社は頼りになると認められ、マーケットはそれに見合う対価を払ってくれるのです。適正な金額を払っていただくには、その前提となる丁寧な説明が必要です。ここは警備会社に頼まなければダメなんだ、となることに価値がある。先端技術をきちんと使って、どんなにしんどくても逃げ出さない。そういうことになってくると周りの人が認めてくれるのです。警備業界は世の中に貢献している、給料も悪くないじゃないか、ということになれば若者の目も警備業に向いてくるのではないでしょうか。

「東京2020」は警備業の新しい半世紀への転換点でした。体験を生かす50年にしていかなければならない。チャレンジする業界であることを念頭に置いて、皆さんと取り組みたいのは「価値の創造」です。これが共有できれば、業界は日々成長するでしょう。そこを疎かにしてしまうと単なる要求団体になってしまうのです。

<<代表取締役社長でCOOに就任された栢木伊久二さんとは、どんなタッグを組みますか。退任された代表取締会長でCEOだった村井温さん、代表取締役社長でCOOだった青山幸恭さんのリーダーシップはどうでしたか>>

栢木さんとは緊密に連絡しあって二人三脚でやっていくことが大事だと思います。ざっくり言いますと、グループ全体は私が制度、仕掛けを考え、ALSOK本体は栢木さんがしっかりやっていくことになるでしょう。

村井前会長は当社を「規律と秩序」ある会社に仕上げてくれた人です。20年くらい前はかなり“やんちゃな会社”でした。自由で、型にはまらない会社で、世間も寛容でした。現在は世の中も規律を求めるようになって、コンプライアンスが重要視されるようになりました。時代の流れに合わせるように、大きな会社に変わっていく「成長痛」みたいなものではないでしょうか。そんな中で規律と秩序をもたらせた人です。

青山前社長は、仕掛けができつつあるときに、それをうまく活用して具体的に推進する、いい時期に来ていただいた。官僚時代に培ったネットワークをもって、それを生かすフットワークを存分に発揮された。高速回転で仕組みを活用する人の陣頭指揮は当社に幸運だったと思います。

私がこの会社にお世話になった20数年前に比べ、仕組みが整ってきています。それを丁寧に育んでいきたい。まだ根付いていないものにはしっかり根を張らせ、成長過程にある木には養分と水分を与え、多少の風にはびくともしない大きな木にしたいと考えているのです。