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警備業ヒューマン・インタビュー2025.04.21

大島史朗さん(コトナ 本部長)

DXで処遇改善

<<京都府警備業協会の副会長を務めています>>

警備業のさらなる発展に向けて役員と関係者は一丸となり、各種の協会行事、委員会活動に取り組んでいます。

昨年、私が委員長を務める業務委員会の中に「交通部会」が発足しました。交通誘導警備は慢性的な人材不足に悩み、熱中症対策、価格交渉、公共工事設計労務単価、検定の合格率などの課題を抱える中で立ち上げられたのです。

<<交通部会はどのような活動を行っていますか>>

全国警備業協会から講師を招いて警備料金をテーマに勉強会を開きました。より多くの会員が参加しやすいように会合はリモート形式です。適正な価格転嫁をはじめ全警協の施策について周知を図り、警備業界に関連した行政の動きなどの情報も共有しています。

スタートしたばかりで活動方法は模索中ですが、会員各社の経営基盤強化につながる勉強会の企画を進めているところです。

私は、交通誘導警備の特別講習講師を務めて20年になります。「資格を取得して会社に貢献したい」との思いで努力する多くの受講生を指導してきました。

協会が毎年開催する警備員表彰式では、かつての受講生が永年勤続の表彰を受けることがあります。会場で久しぶりに再会して、業務に励んでいることを聞くと講師冥利に尽きます。その一方で、何度も検定にトライして合格を果たした働き盛りの警備員が、わずか数年後には離職し、業界から去ったことを聞く場合もあって残念でなりません。

警備員の努力が報われる業界づくり、適正取引と処遇改善、職場環境改善の推進は、講師経験を持つ協会理事の責務と考えます。

<<全警協が立ち上げた「交通誘導警備業務ワーキンググループ」のメンバーに就任されました>>

メンバーは10人で、私は近畿地区警備業協会連合会から推薦を受け、3月18日に開かれた1回目の会合に参加しました。

交通誘導警備が直面する複数の課題について、全国規模で意見を交換し検討を進めていくチームに参加させてもらったことに感謝し、熱意を込めて取り組みます。

<<社業では『コトナ』の本部長を務めています>>

国内外からの観光客でにぎわう京都で、世界遺産や各種イベントの警備、建設現場の交通誘導警備などを手掛けています。

当社は近年、警備のDXとして、AIシステム、VR(バーチャル・リアリティー)研修、電子日報などの導入を進めています。古き良きものを大切にしつつ、新しい要素を積極的に取り入れる姿勢は“京都らしさ”と思っています。

祇園祭や複数の花火大会、初詣の警備などでは、AI雑踏検知システムを活用しました。これはAIカメラが群衆の密度を検知し、英語を表記した大型LED表示板で迂回案内を行いつつ、密度が急上昇する地点があると警備員が装着するウェアラブル端末に情報が送られ、駆け付けて雑踏事故を予防する仕組みです。

交通誘導警備では、国道の片側交互通行でAIカメラを活用するシステムを実施、行政の関係者の方々に説明を重ねました。3月には「京都御所」前の道路でAI交通誘導システムを活用し、工事に伴う規制をAI仲間とともに円滑に行いました。

AI交通誘導は、警備員が受傷事故に巻き込まれるリスクを低減するシステムです。単に省人化を図るのではなく、専門の研修を受けたAIオペレーターの警備員が現場に常駐することで確かな安全安心を提供するものです。

警備業のDX推進は、業務の質を高めて顧客満足度の向上、警備員の処遇改善に結び付いていくと考えています。

<<より多くの若者が警備業に入るために大切なことは>>

警備員という職業が今まで以上に魅力的になることは必須です。例えば建設業界では「建設キャリアアップシステム」が運用されています。技能労働者の保有資格や就業履歴をデータベースに登録し、スキルの評価につなげる仕組みです。警備員も同様に保有資格などを登録する仕組みがあれば、技能や経験に応じた適切な処遇、働きがいの向上に結び付くのではないでしょうか。

また、警備業のイメージアップは重要です。4歳になる私の息子は、海外の人気アニメ「パウ・パトロール」が大のお気に入りです。個性豊かなキャラクターたちが人命救助や宝物の警備に活躍する物語を熱心に見ています。アニメや児童向け書籍などを通じ、幼い頃から「安全を守る警備員」に親しみや憧れが広がれば、イメージを高める基礎になるはずです。

これまで多くの先輩講師や講師仲間と「研修センターふじの」で時を過ごして、警備業のステータス向上や業界の将来について意見を交わし、夢を語り合ってきました。業界発展につながる夢を形にしていきたいと思います。

警備業ヒューマン・インタビュー2025.04.11

平井智仁さん(ジャガーノート 代表取締役CEO)

1年半で100社が導入

<<「クラウド管制・業務システムKOMAINU(コマイヌ)」が好評です。1年半で警備会社100社に導入したとか>>

当社は宣伝・広告費をほとんどかけていません。私や社員が警備会社を地道に訪問し、機能やメリットを説明しています。「知り合いの社長も困っているから話を聞いてあげてよ」と紹介してもらったり、評判を聞いて連絡をいただくなど、口コミでユーザー企業を開拓してきました。

<<導入することで、警備会社にどういう効果がありますか>>

最大のメリットは「業務の工数削減」です。管制業務だけではなく、請求や給与計算など事務作業の負担を軽減できます。

当社のシステムを導入した70人規模の警備会社では、バックオフィス(総務や経理、人事などの後方業務)の人員が必要なくなったそうです。経営者が週末に「KOMAINU」を操作するだけで済むようになったというのです。バックオフィスを担当していた皆さんは違う業務にシフトしています。

人手不足が深刻な課題であり、売上を確保するためにも効率化は経営戦略の大きな鍵になります。

<<管制システムは多くの会社から販売されています。「KOMAINU」の特長は何でしょう>>

大きく2点あります。「警備業に特化した機能の豊富さ」と「誰でも使える扱いやすさ」です。

当社は正社員と業務委託を含めて約20人体制ですが、営業1人、広報1人の他は全員エンジニアです。警備業で求められるシステムを設計するため、意見を出し合い一丸となって開発を進めています。

管制システムのデータは警備会社にとって重要な経営指標になることはあまり知られていません。警備員の稼働状況を一目で確認できるほか勤怠データから労務管理が可能です。請求、給与計算との連携もできます。

管制システムから経営状況や経営戦略のための資料を自動生成できることも、多くの警備会社に選んでいただいている理由と感じています。

<<経営者が管制システム導入に踏みきれない理由として「費用がかかる」「扱いきれない」の2つを耳にします>>

「KOMAINU」にかかる費用は初期費用20万円、以降は使用する機能により警備員一人あたり250円から利用可能です。導入した100社をモニタリングしてみて共通しているのは、費用以上の効果が生まれていることです。ユーザーに投資以上の価値を確実に提供できるよう、導入後のサポートを念入りに行っています。

システムの画面操作は大変扱いやすく設計されています。導入後には平均4回、会社を訪問したり、Zoomなどオンラインで操作説明を行います。「エクセルが使えない」などITリテラシー(知識や能力)に自信がないお客さまにも丁寧にサポートしています。

DX化による業務改善の相談も受けています。当社には警備業務を経験し知識と経験が豊富なブレーンもいて「警備業に特化したITコンサルタントサービス」を提供しています。単にシステム販売だけではなく、各社に合ったDX化の提案をして売上アップのお手伝いをしています。

<<警備業に特化した管制システムの開発を決意した理由は何でしょう>>

叔父が長く警備会社の社長をしていることから、私は子供の頃から警備業が身近にありました。大学卒業後、IT企業に就職しシステム設計をしていました。しかし社内のサーバーを使って顧客の予算内でシステム構築を続けているうちに限界を感じました。ユーザーの業務に合ったシステムを設計し、クラウドでどこからでもアクセス可能なシステムを構築したいと思うようになりました。

市場調査してみると警備業界はこれまで優れたIT企業による支援がなく、デジタル化が遅れている現状に憤りを感じ、30歳のときに起業しました。

<<忙しい毎日ですが趣味は?>>

私は高校卒業後にロックバンドを始め、ボーカルとギターを担当しました。プロのミュージシャンを目指していましたが喉を壊してあきらめ、大学に入学してITを学んだのです。

これまでは音楽を聴くことが一番の趣味でした。今後はアドベンチャーレースに挑戦します。第一弾として4月1日から16日までモロッコの砂漠を自給自足で約250キロ走る「サハラマラソン」に出場します。当社ロゴ入りのオリジナルTシャツを着て完走を目指します。

警備業ヒューマン・インタビュー
――全警協表彰警備員⑥2025.04.01

杉山翔太さん 山崎優人さん(エスピトーム)

「盗撮男」逃がさず

エスピトームの杉山翔太さん(33)と山崎優人さん(21)は2023年11月5日夕、静岡市内で行われていたイベント「大道芸ワールドカップin静岡」の警備業務中、女性(20歳前後)のスカート内を盗撮した男(50代)の確保に協力した。

<<4日間にわたったイベントの最終日に起きた事案でした>>

山崎さん 警備の配置場所で屋台の人から、盗撮を目撃したという話を聞きました。ペットボトルの中に仕込んだ小型カメラで盗撮していたとのことでした。現場は駿府城公園です。当社警備員が各所に配置されていました。

私は、盗撮行為をした男に「一緒に来て下さい」と言って、警備本部へ向かいました。盗撮を実際に見たわけではなかったので、力ずくで連れていくことができない中、男は一緒に歩いている時に逃げ出したのです。その瞬間、「意地でも捕まえなければ」という感情が沸き起こり、走って追いかけました。別の警備員と挟み撃ちにして男を取り押さえました。

杉山さん その日は、忙しい配置場所へ応援に行く「遊撃」の立場で警備に当たっていました。遅い昼ご飯を食べていた時、警備本部から無線で盗撮事案の報告を受け、駆け付けました。取り押さえられ横になった男は暴れていましたが、逃げないように、ばたつかせていた足を押さえました。

<<確保した男を警察に引き渡しました>>

山崎さん 警察署へ行った時に聞いた話では、被害女性は以前にも盗撮の被害に遭っていたとのことでした。女性の母親は「犯人が捕まって良かったです」と話していたそうです。警備の仕事に携わっていれば、今後もこうした事案に遭遇する可能性があるので、遭遇した時には今回の経験を生かしたいと思います。

杉山さん 私は手助けしただけなので、こんなに大きな話(全国表彰)になるとは思っていませんでした。対処の仕方を見て学べたことは大きかったと思います。

<<警備会社に入ったきっかけは何だったのでしょう>>

杉山さん エスピトーム入社前にホテルマンをしていた時、ボクシングをやっていました。体幹を鍛えたいと思い、仕事終わりや休みの日に、自宅近くのジムに通っていました。合宿でフィリピンのボクシングジムへ行った際、ジム関係者のボディーガードをしたことがあり、その時に味わった緊張感や「人を守っている実感」が警備会社に入るきっかけになったと思います。

山崎さん きっかけはありませんでしたが、誰かを守る、誰かの助けになる仕事をしたいと思っていました。そういう性格なのかもしれません。行ったことのない場所に行くことも好きで、新型コロナで長い休みがあった高校生の時、自転車で行けるところまで行ったことがあります。交通誘導警備の仕事なら、いろいろな現場に行けていいかなと思いました。

<<今の仕事のどこにやりがいを感じていますか>>

杉山さん 機械警備隊員として、お客さまが困っているところに駆け付けるので、「花形」をやらせてもらっている感覚です。事案は駐車場が比較的多く、バーが上がらずにその場に閉じこめられたケースなどです。機械警備の仕事をひと通り覚え、いずれは管制をやりたいと思っています。

山崎さん 昨年夏から管制をしています。現場とは違って、事務の仕事が多いです。起こったことを解決することに精いっぱいですが、安全を守るというところにやりがいを感じています。隊員と仕事をしていく中で、「この会社で働き続けたい」という環境を一緒につくっていきたいです。

<<趣味はありますか>>

杉山さん 料理が趣味で、炒め物をよく作ります。もやし炒めは、鶏ガラスープをベースに、魚粉だしやお酒を入れて、塩で味付けをします。肉は入れていませんが、肉の味がするもやし炒めです。最近はコンソメベースのスープパスタを作るのも楽しいです。

料理は食材がまとまってできた作品です。“チームワーク”は警備の仕事に通じるところがあると思います。

山崎さん 上司が主宰している歌劇団に入っています。誘われて、挑戦してみたいと思いました。昨年2月に初舞台を踏み、今は新しい公演に向けた準備に入っています。お客さんの前で歌って演技をすることは緊張しますが、そこに楽しさがあります。