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金子慶太郎氏(愛知警協副会長)に旭日双光章2025.05.01

地域警備業発展に貢献

政府は4月29日、「令和7(2025)年・春の叙勲」受章者を発表した。警備業からは愛知県警備業協会副会長(セクダム代表取締役社長)の金子慶太郎氏(73)が旭日双光章を受章した。警備業の受章者は計37人となった。

金子慶太郎(かねこ・けいたろう)氏は1974(昭和49)年に全日警愛知(現コアズ)入社。80年3月末に同社を退社して同年4月にセクダム設立。代表取締役社長に就任した。

愛知県警備業協会では、1996(平成8)年4月に理事、10年3月に副会長に就任した。

2005年に愛知県内で開催された日本国際博覧会「愛・地球博」では、警備10社が共同企業体で会場警備業務を受注したが、金子氏は総括会社(コアズ)を補佐し、大規模イベント警備の成功に大きく貢献した。

50歳で地元の南山大学大学院経営学研究科博士前期課程を修了するなど自己研鑽にも努め、業界の諸課題に自ら先導役となり取り組んできた。

1997年の愛知県警察本部長との災害支援協定締結をはじめ、2024年の愛知県警本部生活安全部長と締結の「安全・安心なまちづくりの推進に関する協定」、25年に愛知県知事と締結の「災害時における地域安全の確保等に係る警備業務の実施に関する協定」にも協定草案段階から適時適切な意見具申を行い、警備業の社会的地位向上に多大な貢献を果たした。自社独自でも今年3月、地元の学区防災安心まちづくり委員会と「地域防災の支援協力に関する覚書」を交わすなど、地域の安心安全に貢献している。

主な表彰歴は2000年「愛知県警察本部長・愛知県警備業協会長連名表彰」、14年「愛知県知事感謝状」、15年「全国警備業協会長表彰」、17年「警察庁長官・全国警備業協会長連名表彰」などがある。

新会長に浦氏が就任2025.05.01

群馬警協

群馬県警備業協会の第8代会長に浦友治氏(ALSOK群馬)が2月26日に就任した。昨年5月から副会長を務めていた。

浦会長は52歳。1991年綜合警備保障入社。外務省出向・在ペルー日本大使館(警備対策官)、在エルサルバドル日本大使館、横浜支社セキュリティーサービス部長、湘南支社長を歴任、2024年4月よりALSOK群馬代表取締役社長。

「日頃の備え、再点検を」2025.05.01

東京警協 警視庁と災害対策訓練

東京都警備業協会(澤本尚志会長)は4月14日、警視庁と締結している災害時支援協定に基づく災害対策訓練を同庁交通安全教育センター(世田谷区)で行った。会員各社の「登録警備員」、警視庁の担当官、災害対策委員、特別講習講師など142人が参加した。

澤本会長は「大規模災害の発生時に被害を最小限に食い止めることは、工夫や努力で可能になる。有事の対応をシミュレーションし、訓練を繰り返すことが大切」と強調した。

警視庁生活安全部・川原匡平生活安全総務課長は「いざという時の対応力をさらに高めることは重要」として、警備員を激励した。

警視庁・特殊救助隊は、毛布とモップ2本を活用し「簡易担架」による搬送要領を説明した。警備員は、警察官と連携した交通誘導、器具を使う放置車両の移動、AEDと胸骨圧迫、礼式・基本動作の訓練や視聴覚教養を通じスキルを磨いた。

訓練後、災害対策委員会・中田文彦委員長(協会副会長=ジャパンパトロール警備保障)は講評で、警備員の的確な動きや士気の高さをたたえるとともに「家庭と会社の備蓄品など、日頃の備えを再点検してほしい」と呼び掛けた。

特集ワイド 警備業の熱中症予防2025.05.01

WBGT測定と水分・塩分

5月から今後、全国では「熱中症」多発期を迎える。近年は、地球温暖化などの影響により「災害級の猛暑」が毎年のようにやってくる。交通誘導警備や雑踏警備など屋外・炎天下で行われる仕事の多い警備業。熱中症から警備員を守る方法を考える。

厚生労働省の調べでは、2024年に全国の職場で発生した熱中症による死傷者数(死亡と休業4日以上の業務上疾病)は、1195人だった。うち死亡者数は30人。業種別では、製造業が最も多く227人。次いで建設業216人、運送業186人など。警備業は、これら業種に続く136人だった。死亡者数は建設業8人、製造業と運送業がそれぞれ6人。警備業は2人だった(いずれも25年1月7日現在の速報値)。

一方、20年からの過去5年間では、全産業計の死亡者数は133人。業種別では建設業52人、製造業20人、警備業16人。警備業は、22年と23年に建設業に次ぐ6人が死亡するなど「熱中症多発業種」「死亡ワースト3業種」だ。

◇     ◇

厚労省は今年も「STOP!熱中症・クールワークキャンペーン」を行う。期間は5月1日から9月30日まで。特に熱中症が多発する7月は「重点取り組み期間」に設定、対策を強化する。

警備業は、全国警備業協会(村井豪会長)が業界団体として唯一、各種労働災害防止団体と並び、キャンペーンの主唱者として名を連ねている。

キャンペーンで厚労省が各事業者に求めている取り組みは、同省が21年に策定した通達「職場における熱中症予防基本対策要綱」(基発0420第3号)に基づく。以下、警備員の熱中症予防に必要な取り組みを紹介する。

◇     ◇

対策の基本は、暑さ指数(WBGT)の把握。日本産業規格適合の「黒球」のあるWBGT指数計による随時把握を行う。

一方、今年も気象庁と環境省が4月23日から、一日の最高暑さ指数33℃(35℃)以上が予測された際に発する「熱中症(特別)警戒アラート」を開始した。これら地域を代表する一般的な暑さ指数の参考は有効だが、個々の作業場所の状況は反映されていない。交通誘導や雑踏など直射日光下の警備業務では現場での指数実測が欠かせない。

実測した指数は、基準値(熱中症の危険のないレベル。警備業務は「定位置での誘導や案内」がおおむね28℃、「広範囲の巡回を伴う運動量の多い警備」同25℃)と比較、基準値を超える場合には必要な対策を行う。

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現場近くには休憩場所を設置する。休憩場所には、氷や流動性の氷状飲料「アイススラリー」、冷たいおしぼり、スポットクーラーや送風機など身体を適度に冷やすことのできる物品や設備を設ける。水分・塩分の補給を定期的・容易に行えるよう飲料水やスポーツドリンク、塩飴なども備え置く。

現場に警備業者自ら休憩場所を設置できない場合、建設工事現場では元請け建設会社、駐車場ではスーパーなど施設管理者、イベントでは主催者など、警備業務発注者が設けている休憩場所を警備員が自由に使用できるよう事前に許可を得て、その旨を警備員に周知しておく。

◇     ◇

測定した暑さ指数が基準値を大幅に超える場合は、原則として警備業務を中断する。やむを得ず業務を継続する場合は、単独配置を控え、休憩時間を長めに設定する。警備隊長など現場管理者は、警備員の心拍数や体温などの身体的状況、水分・塩分の摂取状況を頻繁に確認する。また、熱中症の発生しやすさには個人差があることからウェアラブルデバイスなどのIoT機器の活用も有効だ。

◇     ◇

警備員には、のどの渇きなど自覚症状の有無にかかわらず、水分・塩分を警備業務の前・中・後に適切かつ定期的に摂取するよう指導する。管理者は、警備員の水分・塩分の摂取を確認するための「表」の作成、巡視・巡察での摂取状況の確認、飲料の常備などにより、警備員の定期的な水分・塩分の摂取を徹底させる。

「尿の回数が少ない」「尿の色が普段より濃い」状態は、体内水分が不足している可能性があることを警備員に周知する。

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警備員には、当日の朝食未摂取、睡眠不足、前日の多量飲酒、体調不良などが熱中症発症に影響を与えるおそれがあることを指導する。また、「めまい・失神」「筋肉痛・筋肉の硬直」「大量の発汗」「頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感」「意識障害・けいれん・手足の運動障害」「高体温」など熱中症の重篤度に応じた具体的な症状についても教育し、警備員が自身の熱中症発症に早期に気づくことができるようにする。

健康診断の結果で(1)糖尿病(2)高血圧症(3)心疾患(4)腎不全(5)精神・神経関係の疾患(6)広範囲の皮膚疾患(7)感冒(8)下痢――などの疾病を有する警備員には、医師などの意見を踏まえ、配置場所や作業時間などを配慮する。

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本人や周りが少しでも異変を感じた際には、必ず、一旦、作業を離れ(離れさせ)、身体冷却や医療機関に搬送するなどの措置を行う。症状次第では救急隊を要請する。本人に自覚症状がない、本人から「大丈夫だ」などの申し出があったとしても躊躇せずに、あらかじめ定められた担当者に連絡し、措置の実施手順に従って医療機関への搬送や救急隊を要請する。

救急隊の要請の判断に迷う場合は、「#7119」(救急安心センター事業=「すぐに病院に行った方がよいか」「救急車を呼ぶべきか」など悩んだりためらう時に医師・看護師などの専門家に電話で相談できる窓口)などを活用する。

医療機関に搬送するまでの間や救急隊が到着するまでの間には、水分・塩分の摂取、衣服を脱がせ水をかけて全身を急速冷却する――などにより効果的な身体冷却に努める。その際は、一人きりにせずに誰かが様子を観察する。これら措置は、6月1日施行の改正労働安全衛生規則に新たに規定された熱中症による「重篤化防止」でもあり、事前の策定と関係者への周知が必要だ。

熱中症 警備員の死亡災害事例

2023年と24年に警備業では熱中症により7件の死亡労働災害が発生した。いずれも建設工事現場での交通誘導警備業務中に発生しているが、業務が終わり、帰宅途中に倒れて死亡していた例もある。主な概要は次の通り(24年は1月7日時点の速報値)。

◇     ◇

▽警備員(80歳代)は工事現場で交通誘導警備業務に従事していた。途中20分の休憩を取ったものの、現場に戻った際にふらついて後方に倒れた。幸い意識はあり、近くの日陰で1時間休憩後にタクシーで病院へ行ったが、その後病院で死亡した。当日の気温は27.0℃、暑さ指数(WBGT値)は26.3℃だった。

▽警備員(50歳代)は午前8時から午後5時まで道路改良工事現場で交通誘導警備業務に従事していた。午後5時頃に現場近くで待機していたところ、突然地面に倒れ込んだ。すぐに水分補給したが同11分頃に意識を失ったため、緊急搬送されたが、搬送先の病院で死亡した。当日の気温31.7℃、暑さ指数は不明。

▽警備員(40歳代)は午前11時頃から一般通行車両などの交通誘導警備業務を行っていた。午前11時30分頃、作業が終了した際に、同僚が同警備員の体調異変に気付き、車内に移動させようとしたところ意識を失った。病院に搬送されたが、死亡した。当日の気温32.0℃、暑さ指数30.8℃。

▽警備員(60歳代)は午前8時から道路上の工事現場で交通誘導警備業務に従事していた。

午後3時頃に体調が悪くなり現場を早退したが、帰宅途中の駅で倒れた。病院に救急搬送されたものの、翌日病院で死亡した。当日の気温35℃、暑さ指数不明。

▽警備員(60歳代)は午前8時30分から道路拡幅工事現場で交通誘導警備業務に従事していた。適宜休憩を取りながら作業し、午前11時に休憩場所へ向かったが、同11時35分頃に休憩所近くで倒れている姿を発見された。緊急搬送されたが、その後、搬送先の病院で死亡した。当日の気温31.8℃、暑さ指数29.3℃。

▽警備員(50歳代)は片側交通規制の交通誘導警備業務を行っていた。午後4時頃、業務を終えて自家用車で帰宅していたところ、現場から50メートルほど先の民家に衝突する交通事故を起こした。意識はあり、救急搬送されたが、搬送先の病院で同日死亡した。当日の気温34.4℃、暑さ指数32.6℃。

▽警備員(50歳代)は交通誘導警備業務を行っていたが、午後3時頃に気分が悪くなり、その場で倒れた。救急搬送されたが、翌日死亡した。当日の気温33.2℃、暑さ指数32.2℃。

早期発見と重篤化防止

厚生労働省は熱中症による作業者の死亡を防ぐため、改正労働安全衛生規則を4月15日に公布、6月1日に施行する。

改正点は熱中症による作業者の「異常の早期発見」と「重篤化防止」。それぞれに必要な措置の策定を事業者に罰則付きで義務付けた。これにより同省は「熱中症による死亡災害の7〜8割をカバーできる」としている。

早期発見のための措置は、▽作業者が熱中症の自覚症状を訴えた時▽作業者が他の熱中症を発症した疑いがある人を見つけた時――に、その旨を報告させるための体制(連絡先や担当者など)を事業場ごとに定める。

対象作業現場は、屋外・屋内を問わず熱中症を発症するおそれのある「WBGT値=暑さ指数28℃または気温31℃以上の作業場所」で、「継続1時間以上または1日当たり4時間超の作業」が行われる現場。

また、熱中症の症状がある人を“積極的に見つける”ために、「職場巡視」「バディ制(複数人でのチーム)」などの導入、「ウェアラブルデバイス」などの活用を通達で明示、推奨する。

重篤化防止措置は、熱中症を発症するおそれのある作業を行う際、必要な措置内容や実施手順を事前に事業場ごとに定める。具体的には、「作業中止」や「身体冷却」、「医療機関への搬送」などがある。

いずれの措置についても、策定に加え、事前に関係作業者への文書や口頭、Eメールなどによる周知を事業者に義務付けた。これら措置を怠った事業者には「6か月以下の懲役」または「50万円以下の罰金」の罰則が科される。

熱中症で送検

「熱中症で警備員が死亡したのは会社が必要な措置を怠ったため」――。兵庫労働局管内の2つの労働基準監督署は、2013年と20年に県内の警備会社2社を労働安全衛生法違反の容疑で検察庁に書類送検した。

具体的な容疑は「高温多湿の作業環境下で、警備員に塩分や水分を与えていなかった(労働安全衛生法第22条=健康障害防止のための措置、労働安全衛生規則第617条=発汗作業に関する措置)」というもの。

熱中症で事業者が送検されるのは全国的にも珍しく、労基署の警備業での熱中症に対する“厳しい目”がうかがえる。