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警備業ヒューマン・インタビュー
――オープンイノベーション2021.08.21

上田理さん(セコム 常務執行役員 企画開発担当兼企画部長)

自由な議論が成果生む

<<セコムは社外の技術やアイデアを取り込み新たなニーズに応える取り組みを、2015年11月から進めています>>

セコムのIS研究所や開発センターでも基礎研究、システム・機器開発を長年進めてきましたが、新たなニーズや若年層にアピールできる成果が十分出ていなかったことが課題でした。

これを克服するため、自社の技術・ノウハウだけに頼らず世の中にある最先端技術を必要に応じて取り込んでいく方向性を打ち出し、社内外から自由に参加でき意見交換できる枠組みを、「オープンイノベーション(パートナーと共同で新たな価値を創出すること)」の名称でスタートさせました。社内の若手やITベンチャー企業などによる交流の場を設け、発想の転換を図っていくことにしたのです。

ただ、最初からビジネスに結びつけることを狙っていては議論が進まない恐れがあります。このため、高齢者問題やデジタル社会など一般社会で話題となっているテーマをピックアップし、社内外の有志が集まって自由に語り合うことから始めました。2〜3か月ごとに集まり、若手からベテランまで肩の力を抜き気楽にディスカッションする文化の醸成に努めました。

<<リラックスしたフリーディスカッション形式で始まりましたが、昨年あたりから具体的な成果が出てきました>>

多くのテーマについて話し合っているうちに外部との交流も活発になり、やがて「一緒にビジネスを創造していこう」という機運が高まりました。

外部と協力して取り組みますから、これまでとは毛色の違う「今までになかったセコムの商品・サービス」を作ろうという意識も強まります。テレビを使った高齢者見守りサービス「まごチャンネルwithSECOM」など、当社だけでは生み出せなかった商品・サービスが登場してくるようになりました。また、新型警備ロボット「ココボ」の特徴的なデザインも、こうした活動の成果の一つです。

自由な議論を重視し、業容拡大に直結する活動をしていたわけではなかったので、予算の確保などに苦労した時期もありました。ただ、歴代経営トップがデジタル分野を重視し活動を長期的視点で見守ってくれたことから、やや時間はかかりましたが成果を生み出すことができました。業務効率化につながり顧客から評価されたこともあり、開発した商品・サービスに対する社内の「ファン」は着実に増えています。

<<ベンチャー精神あふれる商品・サービスが多方面から注目を集めています>>

当社だけでなく警備会社は、創業以来ベンチャーそのものです。私自身ベンチャー企業に入社したつもりでしたし、実際社内にはベンチャー精神があふれていました。当時のセコムはネットワーク事業を立ち上げたり、第二電電(現KDDI)の設立に参画したり、既存概念にとらわれない新しい事業が次々と誕生していました。

一方、警備業界とともに当社も成長するなかで保守的な部分も出てくるようになり、最近は創業時の社風に少し変化もみられることから、余計に「新しいことをやりたい」という思いは強くなっているかもしれません。

警備業界の成長とともに安心・安全という言葉もポピュラーになり、警備業界は外部から保守的だと思われることもありますが、持続的成長を図るためにはチャレンジし続けることが不可欠です。それも、世の中の変化に柔軟に対応しながら若い人にもアピールできる対応を行っていくことが肝要だと思います。

<<ベンチャー精神を意識した取り組みは、セコムだけでなく警備業全体にとっても必要です>>

警備業界にとって役立つものであれば、開発した商品・サービスを当社だけが独占するつもりはありません。他の警備会社にも使ってもらい、それによって業界全体が発展すれば当社にも有益となります。オープンイノベーションは広く門戸を開けていますから、志のある警備会社に積極的に参加してもらえれば、それがさらなる成果につながると信じています。

<<警備業のイメージチェンジも期待できます>>

若い人が親しみやすい雰囲気を出していくことが大切です。代表例としてバーチャル警備システムがあります。当初はバーチャル警備員の部分に本物の警備員の映像を使う予定でしたが、外部の意見も参考にしてキャラクター映像を活用したところ、従来ならゲーム会社を志望するような人が当社に応募してくるようになりました。若い人も親近感を感じるような取り組みを、今後も進めていきたいと思います。