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警備業ヒューマン・インタビュー
――全警協表彰警備員④2022.01.01

髙橋正幸さん(スワット)

現金輸送の経験が活きた

スワットの髙橋正幸さんは2020年9月2日、警備を担当していた千葉県市川市の大型商業施設「ショップス市川」で立哨警戒中、万引き犯を取り押さえた。その後通報で駆け付けた警察官に犯人の身柄を引き渡した。

<<男性2人が駐輪場で口論している現場に遭遇したことが始まりだったそうですね>>

最初は買い物客同士のもめごとだと思いましたが、しばらく見ていると万引き犯と店舗内で万引き行為を取り締まる私服警備員だということが分かりました。犯人が私服警備員を振り切って逃走したため、2人で30メートルほど追いかけ身柄を確保したのです。

まず私服警備員が犯人を捕まえたのですが、犯人は私服警備員の左手親指にかみつき抵抗しました。私が代わって犯人の上半身を押さえ制圧します。犯人は話し方から東南アジア系の外国人だと分かりました。

犯人を追いかける途中、買い物客の若い男性が逃走する犯人を阻止しようとします。お客さまにけがをさせるわけにはいきませんから「絶対に逃がすものか」との思いで犯人を取り押さえました。

<<強い意志が犯人逮捕につながりましたが、身柄確保の決め手となったのは何でしょうか>>

当時、私はスワットに入社して1年半でしたが、それ以前は他社で約20年現金輸送警備に携わり年2回の現任教育も受けていました。今回の犯人逮捕にも、現金輸送警備を担当していた時に受けた盗難防止のための技能教育が役立ったと思います。

<<犯人制圧の過程で危険は感じなかったのですか>>

犯人は50歳くらいで体格がよく、72歳の私からみると制圧は難しいと思いましたが、警備員としての使命感もありました。刃物などの凶器を出す恐れもありましたが、最初に犯人が私服警備員ともみ合っている時は何も出さなかったので「凶器は持っていないだろう」と判断しました。逮捕後の取り調べで中国人と判明しました。

警察官に犯人を引き渡した後、私服警備員が「力がありますね」と驚いていました。現金輸送警備に携わっていた時は重量物を運搬することも多く、力を使うことに慣れていたのかもしれません。

<<勇気ある行動が評価され、数回にわたって多方面から表彰されました>>

会社や千葉県警備業協会、「警備の日」全国大会など計4回表彰されました。会社で表彰された時は会長・社長以下が勢ぞろいしていましたので、非常に緊張したことを覚えています。黒川利夫会長からは「けががなかったのは何よりだった。さすが髙橋さんだ」との言葉がありました。金一封もいただいています。

<<ご家族からは?>>

妻からは「非常に名誉なこと。けががなくてよかったし、よくがんばった。でも無理しないでね」とねぎらわれ、「せっかくだから背広を新調したら」と言われました。背広は十年以上購入していませんでしたが、今回新調したものを着用して「警備の日」全国大会の表彰式に臨みました。一人娘も「おめでとう」と言ってくれ喜んでいると思います。

<<警備業との出会いはどのようなものだったのでしょう>>

私は北海道出身で、20歳の時に東京で袋物繊維製品製造・販売会社を営んでいた姉夫婦を手伝うため、上京しました。その後社長だった義兄が亡くなり30代半ばで経営を引き継いだのです。厳しい経営環境でしたが、後継者だった甥が成長したので50歳で道を譲り警備員として働き始めました。

友人の紹介で現金輸送警備の仕事に就き70歳まで勤めます。経営の重圧からは解放されましたが、新たに警備業務に対する責任感が生まれました。上司や仲間に恵まれたことは幸いだったと思います。スワットで施設警備を始めてからは、以前はなかった買い物客との触れ合いがあり、自分なりにやりがいを持って仕事をしています。

<<警備員人生も20年を超えましたが自身の評価はいかがですか>>

最近、警備員が自分に向いていると感じることが多くなっています。思いがけず始めた仕事ですが、人との出会いなど多くを得ることができました。これからは、新たに警備員を始める後輩に自分の経験を伝えていきたいと思います。妻からは「大変だったらいつでも辞めていいよ」と言われていますが、体の続く限り続けていくつもりです。