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警備業ヒューマン・インタビュー
――福岡警協あやめ会2022.10.21

入里真弓さん(セキュリティスタッフ代表取締役)

TikTokで動画配信

<<福岡県警備業協会の女性部会「あやめ会」第3代部会長として、インターネットを活用し警備業のPRに取り組まれています>>

あやめ会は6年前の11月1日「警備の日」に発足し、女性経営者や経営幹部など28人で活動しています。コロナ禍の中でもオンライン会議を重ね、活動プランなどを話し合ってきました。

現在、SNSのTikTok(ティックトック)で、部会員が出演するショート動画を10本ほど配信中です。若者をはじめ、より多くの視聴者に見ていただこうと“福岡にちなんだジェスチャーゲーム”など楽しい動画をつくりました。再生回数は多いものでは900回を超えています。

視聴者からは「警備業界に女性部があると初めて知りました」「警備は男性のイメージですが女性も頑張っていますね」などのコメントをいただき、部会員の励みになっています。警備業に親しみを感じて、興味を持ち、働いてみたいと思う人が増えることは部会員一同の願いです。

<<対面で警備業をPRする予定はありますか>>

10月27日にハローワーク福岡中央で開かれる求職者向けセミナーで、あやめ会メンバーが警備業について説明します。

求職者の中には、警備員がどのような仕事をするか分からず応募に不安を感じる人もいるようです。不安をやわらげ応募につなげるには、警備各社が新任教育を行うので未経験者も安心して働けること、努力して国家資格を取得すればキャリアアップを図れることを伝えるのは大切と考えます。

警備業界では青年部会の発足が続いています。女性部会もさらに発足が広がって、皆でアイデアを出し合い情報発信し、業界を盛り上げていければと思います。

<<社業では、ご主人の入里健二専務取締役と立ち上げた「セキュリティスタッフ」の代表取締役を務め、9月に創業20周年を迎えられました>>

交通誘導警備をメインとして、地域の皆さまに支えられ節目の年を迎えることができました。

夫は福岡警協広報委員会の委員長を務め、年に3回発行する協会広報誌「セキュリティ福岡」の編集に携わっています。広報誌は会員に郵送することに加えて、昨年から協会ホームページで閲覧できるようになりました。協会活動の紹介、会員企業訪問などの記事をスマホで手軽に見ることができ、業界の内外に向けた情報発信となっています。

私はJA(農協)などに勤務した後、高校生の時から知っていた同じ年の夫と20代後半で結婚しました。夫は友人と警備会社を共同経営しており、私は事務職で入社して現場にも出るようになりました。道路舗装工事に伴う警備が多く“屋外の仕事は大変だけど奥が深い”と感じて交通誘導警備業務2級、警備員指導教育責任者の資格を取って仕事に励みました。

しかし、雨が降ると業務は中止になり、当時は今のようなキャンセル料もありません。夫も私も「より安定した受注を得て、地域社会に根ざして貢献したい」という目標を持って独立し、当社を立ち上げたのです。

<<夫婦二人三脚の警備業です>>

夫は営業に専念する“外向き”、私は経理と隊員の管理を担当する“内向き”と役割分担が明確なことで円滑に回ったと思います。

創業当初は施設の駐車場警備などを手掛けて順調でしたが、リーマンショックによる景気後退で複数の顧客が警備費を削り、厳しい状況に直面しました。低価格競争(ダンピング)が起こる中、「警備料金は下げず、警備の質を上げよう」と資格者育成に力を注ぎました。ユーザーの評価を得て、電気、ガス、水道などインフラ工事の受注に努めることで経営基盤を強めることができたのです。

私は、隊員にこまめに声を掛け、話しやすい“お母さん”の役割を心掛けてきました。仕事面やプライベートで困り事があれば相談に乗って離職を防ぎました。毎年ホワイトデーには隊員たちからプレゼントを頂いています。

地域貢献活動では、西警察署(福岡市西区)管内の警備業者で構成する「西警察署警備業防犯連絡会」の会長を夫は15年務め、小学生に防犯ブザーを毎年贈っています。私は社会福祉法人「JOY明日への息吹」に参加し、障害を持つ方々が演奏する音楽会を応援しています。こうした活動は継続してこそ意味があると実感します。

暮らしに身近な警備業について情報発信を重ねれば、社会の認知度は一層向上すると思うのです。これからもあやめ会は、協会・業界の発展に向けて活動を重ねていきます。

警備業ヒューマン・インタビュー
――大阪警協ひまわり会2022.10.11

若林勝美さん(ブラザーメンテナンス代表取締役)

「女性部活動」発信したい

<<大阪府警備業協会の女性部会「ひまわり会」の部会長に就任されました>>

6月の女性部会総会で選任されました。ひまわり会は2001年5月に発足しました。女性代表者と女性役員の経営能力の向上、親睦を深めて共存共栄を図ることが目的でした。総務委員会の下部組織でしたが、20年からは独立した部会として活動しています。

私は、初代・中嶋幸子さん(中央保安警備保障)、第2代・谷富子さん(城南警備保障)、第3代・河西邦江さん(サンパティックエスジーアイ)に次ぐ第4代の部会長です。部会員として現在38人の女性経営者・役員に加盟していただいています。

<<ひまわり会は、どのような活動を行っているのですか>>

勉強会、講習会、親睦会の3つが主な活動です。勉強会は全警協の業務適正化委員や社会保険労務士の方などに講師をお願いし、警備料金や労務管理、税務管理など業務に役立つ知識から、英会話・茶道など趣味の分野まで、幅広いテーマで学んでいます。講習会は、AEDを使用した救命救急や護身術を専門の先生や大阪警協安全協力隊からご指導いただいています。

「11月1日警備の日」の街頭キャンペーンや防犯防災総合展に参加し、広報活動も行います。

<<若林さんが今後、新たに取り組みたい活動は?>>

“外に向けた発信”です。大阪警協の豊田正継会長から「女性部会として20年以上の歴史と実績があるのだから、大阪府内だけの活動ではもったいない」というご指摘がありました。近畿地区の他府県の女性経営者の皆さんと合同で勉強会や親睦会を開き、連携をとる機会を持てればと思います。全国に目を向ければ、山口警協・豊島貴子会長と福井警協・田﨑真弓会長と2人の女性会長がおられ、ぜひ女性部会として話を聞き勉強させていただきたいです。

また東京警協、福岡警協、岐阜警協の3つの女性部会とも連携を取り、全国に女性部会を増やしたいと思います。

<<女性の活躍は社会全体で広がっており、警備業では人手不足解消の観点からも求められています>>

女性に警備の仕事に就いていただくためには、労働環境の整備が必要です。例えば子供がいるお母さんが働きやすいように短時間勤務のシフトも求められ、そのためには発注先の理解も必要です。日焼け対策やデザイン・機能に配慮した女性用制服の採用など、女性が働きやすい職場づくりが大切で、部会員同士で情報交換しながら進めていきたいと思います。

<<若林さんは、どういう理由で警備業を選んだのですか>>

私の父はタクシー会社に勤務し一時期は河内長野市の市会議員を務めていました。1995年に発生した「阪神淡路大震災」の被災地でパトロール活動を行っていた警備員を見掛け、「警備業は人が資本で、年配の人も働くことができる。同年代の人が『兄弟』のように働ける風通しがよい会社を立ち上げたい」という思いで「ブラザーメンテナンス」という社名の警備会社を創業しました。私は当時、専業主婦でしたが、父の会社を手伝うために入社し、やがて経営を任されました。主人も入社し専務取締役として経営を支えてくれています。

会社経営で大切にしていることは、警備員さんとのコミュニケーションです。一人ひとりの思いを聞く時間を大切にしています。

「私は人に恵まれている」と感じます。10年ほど前、当社の営業の者が警備員を引き連れて退職し、新しい警備会社を立ち上げたのです。今思うと欠勤が増えたことなど不可解な行動もあったのですが、私は「人を疑わない性格」で、気が付きませんでした。画策した者は、当社の警備員全員に良い就労条件を提示し、新しい警備服まで用意して勧誘しました。しかし有能な警備員は皆、誘いを断って当社に残ってくれたのです。

そのときに親身になって私を支えてくれたのが、ひまわり会のメンバーでした。警備員の配置ができなくなったポストを快く引き受けてくれ、励ましてもらい、ピンチを乗り切ることができました。

ある友人から「あなたは人を信じすぎる」と忠告を受けましたが、私は多くの人に助けられて生きています。「人を信じたい」という気持ちは今も変わりません。

警備業ヒューマン・インタビュー
――新会長⑧ 愛媛警協2022.10.01

田中克幸さん(フジセキュリティー代表取締役会長)

「価格転嫁」が最重要課題

<<協会活動2年で、会長にスピード就任されました>>

私は36年間警察官として愛媛県警察本部等に勤務し最後の役職は生活安全部長(警視正)で、警備業の許認可に関わる業務に従事しました。警備現場の現状や課題については、協会活動の中で学ばせてもらいました。

愛媛警協は今年7月、50周年の節目を迎えました。前会長の二宮義晴さんは県警時代に直属の上司で、その頃から温厚な人柄で人望を集めておられました。私は二宮前会長が大切にされていた「会員相互の融和協調」を図りながら、生活安全産業として社会貢献していきたいと思っています。

<<業界に課題は多いですが、特に尽力する取り組みは?>>

警備業にとって、労務費などの上昇分を発注者が負担する「価格転嫁」が最も重要な課題と考えます。賃上げをしなければ警備員が集まらず、慢性的な人手不足は解消しません。どの協会会員も新規就労者の確保に苦慮しており、人手不足で警備業務に支障が生じそうな時には、協会会員が協力し合いながら凌いでいるのが現状です。

働き方改革への対応を含めた労働環境の整備も必要です。警備員の立場は弱く、交通誘導警備ではドライバーから理不尽に叱責されることもあります。昼夜問わずの現場や悪天候などの過酷な労働条件の中、精神的にも肉体的にも厳しい仕事であり、心身をケアする職場環境の充実を図ることが求められています。

<<愛媛警協は2018年7月の「西日本豪雨」で、協会活動として災害支援に出動しました>>

当協会の「災害支援隊」は1998年に発足し、現在45社・80人で構成しています。西日本豪雨では被災地の大洲市など3地区で1か月間、空き巣等の犯罪を予防するため12社・延べ174人が出動してボランティアで警戒活動を行いました。地域住民から感謝され、県警からも評価され生活安全部長から感謝状を受賞しました。今後は活動の有償化が課題です。

当協会は97年、県・県警との間に「災害時における交通誘導及び地域安全の確保等の業務に関する協定」を締結しました。今年も8月に内子町などで行われた「県総合防災訓練」に参加しました。日頃から各種会議に参加するなど関係機関との連携を強化し、災害発生時の出動要請に迅速な対応ができるよう努めています。

<<青年部会の活動も活発です>>

青年部会は2020年、若手経営者の育成と会員相互の研鑽や資質向上を目的に、四国地区で初めて設立しました。警備業務適正化に向けた課題の調査研究や地域貢献活動を積極的に行っています。昨年の「警備の日」には、「安全安心産業として社会に不可欠である警備業」に理解を深めてもらう広報活動を行いました。松山市繁華街のアーケードでキャンペーンを盛大に展開し、協会会長や役員も会場を訪れ激励しました。

警備業が一般市民の皆さんから身近な存在として理解を得るためには、こうしたイベントを企画・実行する青年部会の“若い力”が必要不可欠です。業界のさまざまな課題克服につなげるためにも、大きな期待を寄せています。

<<警備会社のフジセキュリティでは、代表取締役会長を務めています>>

県警を退職し縁があってお世話になることになりました。当社は98年、総合小売業を営むフジの関係子会社として設立されました。会員各社と同様、人手不足などの課題を抱えていますが、職場の雰囲気がよく福利厚生が充実していることから、定着率が高いことは有り難いです。

<<週末は果物と野菜作りで大忙しだとか>>

松山市内に父が所有していた約3000平方メートルの山を県警退職後に譲り受け、一部を開拓してミカンなど5種の果樹園を作りました。山の近くには畑を約150坪借りて、カボチャなど8種の野菜を作っています。

畑はもともと「黒ニンニク」を作る目的で借りました。愛媛のニンニクは小ぶりですが釜で熟成させた“黒ニンニク”にすると臭いがなく食べやすくなり老化防止の効果があります。毎年1000個ぐらい作り、近所の人や親戚、知人などに配っています。土日はほぼ毎週、農業をしており、足腰の強化など健康維持になっています。