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警備業ヒューマン・インタビュー
――全警協表彰警備員③2023.01.21

大澗直樹さん 宮澤雄介さん(コアズ千葉支社)

逆走車、乗り込み止めた

コアズの大澗直樹さんと宮澤雄介さんは、2021年8月3日、千葉県印西市内の物流施設で警備中、ゆっくりした速度で県道を逆走する軽自動車を発見。中央分離帯をこすった車に大澗さんが駆け寄ってドアを開けブレーキを踏んで止め、宮澤さんは現場で交通誘導警備を行って二次災害を防いだ。

<<逆走車を発見した時はどのような状況でしたか>>

大澗 私は、物流の拠点となる4階建ての大型施設の警備に従事し、人や車両の出入管理、防災センターでの業務、敷地内外の巡回などを行っています。

その日、夏の盛りの午後3時20分ごろ、守衛室の受け付けで荷物の搬入車両をチェックしている時でした。目の前の県道を軽自動車がゆっくり逆走しているのを発見したのです。

時速20キロメートルほどで、他の車は車線変更して避けていました。運転手は、ハンドルにうつ伏せになっています。大型車も多く通行し重大事故につながる恐れがありました。防災センターの担当者に無線機で報告し警察への通報を要請して逆走車を追いました。

宮澤 私は守衛室での勤務を終え防災センターに向かっている時、大澗警備士と防災センターの無線を傍受して現場へ急行しました。

<<どうやって停車させたのですか>>

大澗 私は1分ほど全力で走り、中央分離帯をこすって速度を落とした車に追い付くことができ、運転席のドアを開放しました。ハンドルにもたれた男性(60歳代後半)は、ほぼ意識を失った状態です。とっさに車内に潜り込んで、左足でブレーキペダルを踏み込むと、交差点の手前で車は止まりました。ギアをパーキングに入れ、ハンドルの下方をくぐる体勢で右手を伸ばし足元のパーキングブレーキを押し込みました。

車内は蒸し暑く、男性は熱中症の可能性があると考えて冷房を最大にしました。

宮澤 私は止まった車に駆け寄って大澗警備士に「交通誘導を実施します!」と声を掛け防災センターに無線連絡し、通行する車の誘導を開始しました。

交通誘導警備業務2級の資格を持っていますが警備の経験は施設がほとんどで、公道上で交通誘導警備を行ったことは数えるほどでした。“絶対に二次災害を起こしてはならない”という強い気持ちで取り組みました。

大澗 まもなく物流施設の関係者、救急車が駆け付け、男性は救急隊員が引き継ぎました。やはり熱中症だったようでした。車は警察官がレッカーで移動しました。

<<今回の経験で感じたことは何でしょう>>

大澗 社内ではさまざまな訓練を毎月実施しており、教育の成果を改めて実感しました。物流拠点の警備では、逆走車両の発生は想定すべき事案です。車両対応、救急対応、交通誘導、一つひとつを慌てず的確に行うことが重要です。常に「警備意識」を持って、あらゆる状況を視野に教育訓練を重ねていれば、落ち着いて行動できると思いました。

宮澤 日頃の業務経験と訓練の積み重ね、資格の取得など、これまで身に付けてきたことが、いざという時に物を言うのだなと感じました。体がスムーズに動いて冷静に判断することができると思います。

<<全国警備業協会会長表彰に先立ち、印西警察署長、小塚喜城社長から表彰を受けました>>

宮澤 私は前職で郵便配達に携わっていた際、団地での火災に遭遇し台布巾を用いた窒息消火での初期消火を行って千葉市と消防署から感謝状を頂いた経験があります。再び感謝状を頂くことができて、家族から褒められました。

大澗 家族からは身の安全を気遣う言葉もありました。安全に十分留意しつつプロとして業務を行っていくつもりです。同じような事案が発生すれば可能な限り対応すると思います。

新人の警備士から「思っていた以上に警備は多様な知識が必要で、複雑な業務だと分かりました」と言われることがあります。警備業に対する一般の方々の理解が今まで以上に広がって、暮らしに欠かせない大切な仕事だと思ってくれる方が増えるよう願っています。

宮澤 私はデスクワークよりも体を動かす仕事がしたかったので警備業を選びました。安全を守る警備は世界共通の職業であり、なくてはならい職業に携わっていることに誇りを感じています。