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警備業ヒューマン・インタビュー
――新会長⑦ 大阪警協2022.09.21

豊田正継さん(関西ユナイトプロテクション 代表取締役副社長)

万博へ、警備レベルアップ

<<大阪府警備業協会は、一昨年に50周年を迎えました>>

今こそ未来に向けて新たなスタートを切る時です。当協会は総務・業務・労務・教育・防犯災害支援対策・選挙管理常設の6つの専門委員会と、大阪関西万博に向けたイベント対策特別委員会があります。そこに「未来改革広報特別委員会」を新設しました。SDGs(国連の持続可能な開発目標)や業界内外への広報活動、選挙制度や定款など規約の見直し、協会ビルの賃貸料など経費の見直しを行います。

“縦割構造”による委員会業務の重複を整理し、労務と業務の両委員会については統合することを考えています。協会6支部の理事は、現在の2人体制から3人体制に増やすことを検討したい。全国的に見て大阪警協の理事数は少ないからです。

メディアを利用したりキャンペーンを行うなど、協会活動を広く知ってもらう広報活動に力を入れます。協会のホームページは一新して見やすくしました。協会6支部や8委員会、青年部会、女性部会で各々のページを作り、活動をタイムリーに掲載していきます。

<<大阪警協は青年部会と女性部会の活動が活発です>>

現在青年部会は45人、女性部会「ひまわり会」は38人の体制で、前任の寺尾政志会長のときに総務委員会の下部組織から独立した組織としました。今は両部会とも予算を持ち独自で運営しています。

青年部会は協会と同様の委員会をシミュレーション的に作り勉強してもらっていて、将来は協会の委員会での活躍を期待しています。青年部会、女性部会ともにインスタグラムを始め、写真や動画を投稿して活動のPRと連携を図っています。ティックトックなどSNSをさらに活用します。

<<3年後には「大阪・関西万博」が開かれます>>

東京2020では日本の民間警備が海外メディアから高く評価されました。私は一人の警備員として制服を着て東京2020会場で警備業務を行いましたので、警備現場を肌で感じることができました。JV(共同企業体)を組んだ警備会社間の連携は素晴らしいものがありましたが、会社ごとの「警備の質の差」を感じました。

大阪・関西万博では大阪の警備レベルの底上げを協会として取り組みたいと思っています。業務を正確にこなすことはもちろんですが、あいさつや礼儀作法、立ち居振る舞い、服装などで警備員が品格を備えることが重要と思います。マナー講座や勉強会、実技訓練で学んでいただきたい。

<<発生が懸念されている南海トラフ大地震に備え、災害支援協定の見直しを検討しているとか>>

防犯災害支援対策委員長を拝命した2020年、当協会の安全協力隊164人は災害発生事に実際に動けるのか疑問を感じました。1996年に大阪府と締結した災害支援基本協定に目を通すと現実的でなかったり、現在の社会事情とマッチしない内容が多くあったからです。私は昨年、大阪府の危機管理室を訪問し、料金・保険・出動先の3項目をテーマに話し合いをしました。今後は岡山警協の松尾浩三会長の話も聞き、内容をよく精査して新たな災害支援協定を締結したいと考えています。

<<豊田会長は十代の頃から警備業に関わっていると聞きました>>

父ががんで余命宣告を受けたことから、私は大学進学せず19歳のときに関西ユナイトプロテクションにアルバイトとして入社しました。警備業を選んだのは、当時友人たちとバンドを組んでギターを担当しており「イベント警備の仕事をすればコンサートを見られる」という単純な思いからでした。

入社してみて、警備員の仕事はそんな甘いものではないことがわかりました。業務はスポーツやコンサートなどイベント会場の警備、芸能人の身辺警護、施設警備などでした。まだ警備員教育が義務化されていない時代でしたが、当社グループ会長の峯留春をはじめ先輩方から厳しく教えていただきました。20歳でイベント部長やグループ会社取締役に就かせてもらい、芸能関係者の方々と仕事をしたりイベント警備の受注を拡大するなど、社会人として貴重な経験をさせてもらいました。

しかし家業のため23歳で退職し、父が経営していた繊維会社の取引先であるサンリオ、住商繊維貿易、松尾捺染などに勤めました。そして父が亡くなった歳である50歳になったとき「これからは“おまけ”の人生。最初にお世話になり成長させてもらった警備業に戻ろう」と思い、27年ぶりに当社へ再入社しました。峯会長からは「広く警備業界の役に立ってほしい」との言葉があり、大阪警協の西大阪支部幹事になりました。

<<多くの業界を見てきて警備業に活かせることも多いのでは>>

「こうすればよいのに」という“気付き”は数多くあります。警備業のよいところをアピールできていないために社会的地位が低いのが現状です。大阪府は最低賃金が全国3位なのに、警備料金は下から数えた方が早い状況で、協会が一丸となって変えていきたい。

私は台湾の警備業協会に行ったことがありますが、台湾では警備員は高学歴のエリートが就く職業なのです。日本でも「お父さんみたいな警備員になりたい」と子供が思う時代にすることが目標です。

警備業ヒューマン・インタビュー
――新会長⑥ 北海道警協2022.09.11

長尾昭さん(ALSOK北海道 代表取締役社長)

支部が連携、品質向上へ

<<前会長の小松裕さんはALSOKの先輩です。協会運営についての“引継ぎ事項”はどのようなものでした>>

小松さんが力を入れてやってこられた特別講習の回数を増やすなどして、検定合格者も増えて結果もついてきています。さまざまな課題についても継続して、精いっぱい頑張ってやり遂げたい。オリンピックの時、どのように人員を集めたとか、今後に参考になる細かい申し送りも多々ありました。

現在、道警協は369社が加盟、7支部体制となっていて各支部の支部長には道警協の理事になっていただいています。書面での意見交換などはやっていましたが、8月25日、新体制になって初めて対面で理事会を開催しました。理事会では各支部からの意見を取り入れ警備品質の向上につなげていきます。広い北海道です。支部が連携し、イベントなどで急な警備員の要請がある場合の対策も確認しました。

今年で創立50周年を迎える道警協の記念式典を11月24日に行うことも決まりました。

<<業界には、人手不足、適正な警備料金など山積する課題があります>>

人手不足は業界にとって永遠の課題と言っていいと思います。少子化も進んでいます。警備業が魅力ある仕事であると、若者に思われるようにしなければいけません。服装、装備も大事です。そして一人ひとりの動きも大切です。警備員は警備の現場で多くの人々の目に止まります。社会の安心・安全を担っているのだという自覚をもっていただきたい。

人材確保のため札幌、函館、旭川、帯広のハローワークと連携にも務めています。北海道は自衛隊の基地、駐屯地が各地に点在しています。自衛隊員の数も多いです。退職自衛隊員の再就職の道としての教習にも力を入れています。女性警備員の数も増やしたい。施設警備でトイレ、脱衣所など、女性でなければできない場所も多くあります。

適正料金については全国警備業協会(中山泰男会長)がまとめたガイドラインに沿って、国の定めた労務単価を基に積算し、法定福利費等の必要経費、一般管理費を含む適正な業務料金での受注に努めたい。

<<2018年、北海道は43人が死亡する胆振東部地震に見舞われました>>

地震は最大震度7を記録し、782人もの負傷者も出ました。ブラックアウト(大規模停電)も発生。地域の人たちは大変な思いをしました。今年も8月11日、宗谷北部で震度5強があったばかりです。いつ来るか分からない災害に対応できるように、万全の体制を維持しておきたい。災害支援活動については毎年、道、道警と連携して数回訓練を行っています。“支援隊”として動員可能な278人の名簿を道警に提出してあります。

<<「東京2020」ではサッカー、マラソン、競歩が北海道で開催されました。警備について内外から称賛されました。このレガシー(遺産)は今後の警備に生かされなければなりません>>

我々にとっての東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会は7月5日から8月15日まで42日間にわたりました。その間、道内の各社に協力していただき90社、延べ1万4000人を超える警備員を出動しました。

予期せぬことも発生しました。外国人選手が飛行機で移動中に機内に新型コロナウイルス感染者がいたことから濃厚接触者と認定され、急きょホテルに隔離するとの指示が大会組織委員会からあり、警備するべきホテルの数も増え、警備員の増員要請が飛び込んできました。緊急事態も各社に協力してもらい乗り越えることができました。

女子マラソンのスタートが、前日に急きょ1時間早まり、朝6時スタートとなりました。遠くから札幌に業務に来る人にとっては電車、バスの運行がまだ開始していない時間帯です。これに対しても警備員同士、速やかに連絡し合い、自家用車に相乗りするなど工夫しました。コースには1200人の警備員を動員。エリアごとに各社に割り当て、A社はこの区域、B社はここというように、的確に配置ができました。

また、札幌ドームで行われたサッカーでは「DX(デジタルトランスフォーメーション)」も活用しました。東京で行っていた警備体制と同様にセンサーと監視カメラが連動、その映像が警備員のデバイスに送られるシステムです。ドームの外周と内部で連絡を取り合って関係者以外の侵入を防ぎました。

期間中は“北海道らしくない夏”で気温30度を超すことも何日もありましたが、警備員には熱中症対策として塩アメを配ったり、保冷剤付きの弁当を持たせたり、水分補給には気を使いました。

私たちは昨年の五輪警備で仕事をやり遂げた実績が自信になっています。

警備業ヒューマン・インタビュー
――新会長⑤ 滋賀警協2022.09.01

井上雅裕さん(新大阪警備保障 代表取締役)

資格者の輩出めざす

<<創立50周年を迎えた滋賀県警備業協会の10代会長に就任されました>>

当協会は、大きな節目をPRする「創立50周年ポスター」を作成して会員や関係者に配りました。ポスターのキャッチコピーは「つなぐ」。これは県内警備業の半世紀にわたる成長の歩みを将来に“つなぐ”ため、会員相互が“つながり”をより深め一致協力し、さらなる業界発展をめざそうという協会役員・関係者の意気込みを表す言葉です。10月21日に琵琶湖ホテルで50周年記念式典を行います。

会員は94社を数え、大台の100社加入が当面の目標です。「協会に入って良かった」と会員の皆さまがメリットを実感できるよう協会活動に取り組んでまいります。

<<取り組みのポイントは何でしょう>>

「人材育成の推進」と「広報活動のパワーアップ」に重点を置きます。

人材を育て技能・知識を高める方法として警備業務検定の資格取得があります。より質の高い業務を行うため、特に交通誘導警備では配置路線に対応するため、資格取得を一層進めなければなりません。

滋賀県の検定合格率は年々上昇しており、これは特別講習講師の皆さんが尽力された賜物です。情熱を込めて予備講習・本講習を行って受講者のやる気を引き出し好結果につながっているのです。教育事業は協会の柱であり、より多くの資格者輩出をめざし講師・事務局が一丸となって推進します。有資格警備員が増えるほど顧客の評価や社会からの信頼も高まって、警備業の地位向上に結び付くと考えます。

<<広報活動では、どんなツールを用いますか>>

業界内外に向けてはインターネットを、会員には年2回発行の機関誌を、それぞれ活用します。

現在、当協会ホームページには「警備の日」に制服警備員が行った児童見守り活動の写真を掲載していますが、サイト全体の刷新を検討中です。警備員の役割、存在感を伝える画像や情報を盛り込んでアピールしたい。広報する目的は警備業の認知度アップですが、目先の成果を急がずに中長期的な視野で継続してこそ意味があると思います。

協会機関誌の名称は「ニュースレターKEIBIWA(ケイビワ)」、警備と琵琶湖を合わせた言葉です。従来の行事予定などに加え、新たに会員の話題、例えばボランティア活動に励む会員や警察・消防から表彰を受けた警備員の活躍などを紹介しようと、編集を担当する広報委員会は張り切っています。

業界の動向から身近な事柄まで、さまざまな情報を会員が共有することは大切です。昨今、警備員不足が続く中でAIなど新技術の導入、DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応は業界の課題となっています。中小企業は業務や労務管理にデジタルの要素をどう取り入れていくか、アンテナを立てて情報収集し、知恵を出し合って進むことが求められるのです。協会としては経営者研修会などを開催し、会社の舵取りに役立つ各種情報の発信を心掛けます。

<<社業では交通誘導警備業務を手掛ける「新大阪警備保障」の代表取締役を務めています>>

当社の前身は、かつて大阪市に存在した警備会社の大津支社でした。支社長を務めていた父・井上光夫が暖簾分けの形で31年前に独立開業したのです。

私は、地盤調査を手掛ける会社で建設コンサルタントとして勤務していました。建物や道路、橋梁、ダムなどの建設場所で地質を調べ、防災面で課題があれば技術による解決をユーザーに提案する仕事です。警備員の育成や各現場への配置に忙しい父の後ろ姿を見て“経営は苦労が多い”と感じ、継ごうとは考えませんでした。

13年前、私が50歳の時に父が病気で急逝し、会社の存続が問題になりました。悩みましたが「従業員の生活が掛かっている以上、続ける責任がある」と決断し、長年勤めた会社を退職して継承したのです。

<<経営で大切にされているのはどのようなことですか>>

「真面目にきっちりと業務・教育に取り組む」ことを父から受け継ぎ、目新しいことはしていませんが、警備員には「仕事を通じてファンを増やそう」と呼び掛けています。より良い仕事をして顧客満足度を高めればリピーターになってもらえます。スキルの高い資格者、現場の近隣住民に人あたり良く応対するのが得意な隊員、それぞれが業務に誇りを持って“得意なこと”を伸ばせば自社の強みになります。

警備業は人材確保、料金問題、職場環境改善などの課題を抱えていますが、業界全体で警備の質をさらに向上させ適正料金確保を広げることで活路は開かれると信じています。