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警備業ヒューマン・インタビュー
――新会長 東京警協2024.09.21
澤本尚志さん(セントラル警備保障 取締役会長)
人材確保へ環境づくり
<<東京都警備業協会の第13代会長に就任されました>>
協会一丸となって力を注いできた五つの取り組みをさらに進めていきます。教育事業による人材の育成、会員企業の人材確保に向けた支援事業、適正取引の推進、警視庁と連携した防犯啓発活動、災害への危機感が高まる中での災害対策事業です。
喫緊の課題である警備員不足は、会員個々の努力だけで乗り越えていけるものではありません。より多くの求職者、若者や女性が警備業に関心を持って就業の選択肢に入れるために“環境づくり”が大切と考えます。
<<どのような環境でしょう>>
会員各社の経営基盤強化と、並行して警備業のイメージアップを図ることです。
基盤の強化につなげる一環として昨年11月、村井豪前会長は東京都知事に入札制度の見直し、最低制限価格制度の導入、キャンセル料の制度化などを要望しました。引き続き実現に向けて努力していきます。
合わせて業界としてのPR、広報活動を通じて警備業のイメージをより高めることは非常に重要になります。「警備員さん」は暮らしに身近な存在、社会に不可欠な職業であるのに“しんどく大変な仕事”といった印象が先行してきたようです。
より多くの求職者に振り向いてもらうためには経営基盤の強化による処遇改善を進めるとともに、業界としてのPR、広報活動を通じ警備業のイメージアップを図る取り組みが必要です。
日常生活の中で警備会社が担っている役割、警備業界で働く魅力などをどのような方法でアピールしていくか、会員のさまざまな意見をもとに若者の感性、女性目線を取り入れた幅の広い情報発信が効果的だと思うのです。
<<警備業の広報活動では青年部会の活動が期待されています>>
今年2月に東京・豊洲で開催した「TOKYOセキュリティフェスティバル2024」では、青年部会も女性部会も精力的に活躍し、4500人の来場者、親子連れなどに警備業を分かりやすくPRして非常に好評となりました。私も会場を訪れて、関係者の多彩なアイデアが功を奏したことを実感しました。
これからも業界発展を視野に青年部会や女性部会の意見、アイデアなどを検討して実践につなげていく流れを、会長として支援していきたいと考えています。
<<協会の「機械・輸送警備業務部会」部会長を兼任しています>>
会員向けの研修会として異業種のスペシャリストを招いての講演や、列車の運行を管理する「指令業務」見学を行っています。インフラやエネルギーなど異業種の取り組みに知見を広げることで新たな発想、着眼につながればと願っています。
協会は、会員相互がコミュニケーションを深める場だと思います。より多くの会員が積極的に協会活動に参加して、警備に対するビジョンや信念を語り合っていただきたい。業界内の話にとどまることなく、それぞれ多様な情報を持ち寄って話し合う過程で、課題克服や新しい取り組みのヒントが生まれるかもしれないのです。
<<JR東日本の常務取締役などを歴任され主に電気部門、IT活用に携わりました。セントラル警備保障(CSP)においても新技術の導入を進めてきました>>
人間に依存してきた労働集約型産業は、情報ネットワーク技術を使うことでより少ない人数による高品質な業務サービスを提供できるようになりました。
警備の場合はAIカメラなどを活用して情報を把握し判断、対応しますが、テクノロジーが進んでも現場で事案に対処するのは警備員です。専門性の高い知識と技能を持つ人材の育成は欠かせません。「人と機械の融合」こそ重要です。
当社は、JR東日本の「品川開発プロジェクト」で2025年3月にオープンする「TAKANAWA GATEWAY CITY」(高輪ゲートウェイシティ)の警備を行います。AIなどを活用する「セキュリティプラットフォーム『梯(かけはし)』」を中心に警備ロボットや画像解析システムなどを集約し、超高層ビル4棟などの安全を守ります。
次世代の警備では、安全に関わるさまざまなデータの膨大な蓄積から、事案が発生する“予兆”をキャッチして迅速に対処し、事件・事故やトラブルを未然に防ぐことが可能になります。かつて“未来の警備”としてイメージされてきたサービスの実現を頼もしく感じています。
<<リフレッシュはどのように>>
趣味は散歩です。日頃は早朝の街をウォーキングしています。健康的で良い気分転換になります。
警備業ヒューマン・インタビュー
――新会長 茨城警協2024.09.11
鴨志田聡さん(東関東警備保障 代表取締役社長)
協会会員を増やしたい
<<茨城県警備業協会の第13代会長に就任されました>>
当協会は昨年、創設50周年の節目を迎えました。新たなスタートを切った協会をよりよいものにするためには、残すべきものは大切にしながら必要があれば時代に沿った形に変革していくことも求められます。会員各社や協会職員など関係者の理解と賛同を得ることが条件となります。
<<具体的な取り組みがあれば聞かせてください>>
当協会が5月に開いた定時総会では、事業計画として「適正料金の実現」「青年部会の活性化支援」「女性と高齢者の活躍促進」の3項目が決議されました。私はそこに「会員の拡大」を加え、事業計画を4項目に増やしたいと思います。
茨城県内の警備会社の協会加入率は現在、50%ぐらいです。会員数が増えることは、適正料金の確保に向けた取り組みなどについて、県内で意思統一を図ることにつながります。
非加盟会社に入会してもらうためには「協会に加入するメリット」を示す必要があります。例えば会員になれば特別講習を優先的に受講できたり、警備業界のさまざまな情報をいち早く知ることができるなど、会員ならではの特典を明確にすることが重要です。
<<全国警備業協会の理事にも就任しました>>
県協会の会長に就任したばかりの私には身に余る役職ですが、心して全うしたいと思っています。前会長の島村宏氏は全警協副会長の役職に就いて、長きにわたり業界のため尽くしてきました。私も自分なりに尽力していきます。
私は「警備員という仕事を選んだ全ての人が、結婚して家を建て子供を大学に通わせる“あたりまえの人生”を送ることができる業界であってもらいたい」と思っています。将来の生活設計ができない業界には若い人の参入はなく、未来がないからです。
<<東関東警備保障の代表取締役社長としても多忙な毎日です>>
当社は「日々の業務を通して会社に関わる全ての人の幸せを実現する」を企業理念とし、「仕事は人生を豊かにする糧である」をモットーにしています。
従業員は中途採用を中心とし、平均年齢は50歳代で家庭を持っている人が多いです。定年は65歳ですが、希望により延長勤務が可能です。
真夏の警備現場は過酷で危険であることから、熱中症対策にも気を配っています。昨年、屋外で勤務する警備員全員にファンで外気を取り込む警備服を配布しました。テントなどの日除けを用意し、風で飛ばない工夫を施して現場に設置するなど、発注先の理解を得ながら警備現場の環境改善に努めています。
社用車15台には、企業ロゴとオリジナルのカラーリングを施し「走る広告」としてアピールしています。ロゴは2003年に考案したもので、企業名の頭文字「H」を基本とし、ヒューマンやハイクオリティ、オネスティ(誠実)、本社住所のひたちなか市などを表しています。人が大切なものを抱えているようにも、警備会社らしい「盾」の形にも見えます。
<<ひたちなか商工会議所の役員も務めています>>
商工会議所では同年代の横のつながりを中心にネットワークを持って情報交換を行ったり、新しい発想を得るなど助けられています。当社の受注先のお客さまに困りごとがあった際には、商工会議所内の適任の企業を紹介したりもしています。
<<警備業に就いたきっかけは何でしょう>>
私は20代のころは電気工事や飲食業など、警備業とは全く違う仕事に就いていました。今思うと、警備業の古くからの既成概念にとらわれすぎない考え方や取り組みは、この頃の経験が活きているのかもしれません。
私が30歳のとき、茨城県警で警察官を務めていた父が当社に入り社長に就任する予定でした。しかし入社直前に父が体調を崩したため、創業者の理解を得て私が代表取締役に就任することになったのです。警備業について学びながらの経営でしたが、なんとか軌動に乗せることができました。
<<多忙な毎日ですが、息抜きになる趣味は?>>
ゴルフは中学2年の時に始め、もう40年近くになります。父の趣味がゴルフだったことから私も興味を持ち、中学校の放課後には夕食を父と一緒にとってハーフラウンドをまわっていました。高校で一時やらなくなりましたが、社会人になった20代からは仲間とプレーを楽しみ、リラックスできる時間を持っています。
警備業ヒューマン・インタビュー
――新会長 佐賀警協2024.09.01
高木進さん(ALSOK佐賀 代表取締役)
会員、県民への情報発信強化
<<佐賀県警備業協会の会長に就任しました。抱負は何ですか>>
今年5月の定時総会で会長に選任されました。まず着手したいことは情報発信です。今後は会員と県民に向けた情報提供を強化していきます。
会長に就任後、全国警備業協会や九州地区警備業協会連合会の会合に出席し、他県の取り組みを知る機会も増えました。価格転嫁の問題はさまざまな業種の課題でもありますが、とりわけ警備業界では大きな課題です。この延長上に警備員不足の問題があります。適正料金で労務費を確保し、警備員不足も解消するという好循環の実現に向けて、全警協の「警備業における適正取引推進等に向けた自主行動計画」や関連リーフレットの活用が進むよう会員に周知していきます。
<<「警備の日」のPR活動では青年部会が活躍しています>>
11月1日の「警備の日」はちょうど佐賀市内で開かれる「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」というアジア最大級の熱気球大会の時期に重なります。コロナ禍を経て3年ぶりに開かれた昨年は青年部会が会場で「佐賀県警備会社制服コンテスト」を行いました。参加した14社の警備員の制服デザインを来場者の投票で競い、大いに盛り上がりました。
今年は活動場所を同じ佐賀市内の佐賀駅に移してPRする予定です。同駅はバルーンフェスタだけでなく、唐津方面などへの旅行者も利用する交通の要衝で、より多くの方に警備業を知ってもらえることでしょう。
ほかに、春・秋の全国交通安全運動期間中に街頭啓発を通じ、警備業が県民の安全安心を守っている業種であることを伝えています。青年部会の活動が活発になることにより協会の活性化につながるものと考えています。
<<10月には国民スポーツ大会(国スポ)・全国障害者スポーツ大会(全障スポ)が控えます>>
10月5日の国スポ・総合開会式から28日の全障スポ・閉会式まで、会場や周辺を県内の警備会社が中心となって警備しますが、会員会社51社の佐賀警協だけではとても対応できないため、福岡、長崎、熊本を中心に県外からバスで応援に来てもらいます。
各会場施設を管理する市や町からの発注では、警備料金が従来の地域イベントに比べて上昇しました。大会後のイベント警備でもこの水準が維持されれば、人材確保の後押しになるものと期待しています。
<<人材不足の問題は警備員だけでなく、講習講師など教育人材にも及んでいます>>
指導教育責任者講習講師の育成が急務です。現在、佐賀警協では指教責講習講師を担当している15人のうち4人が70歳以上と高齢化が進んでいます。若い講師を育成していくためにも、会員会社にしっかり説明し、理解と協力を得なければなりません。
<<ALSOK佐賀における人材確保はいかがでしょうか>>
新卒採用だけで充足させることは難しく、通年採用も行っています。新卒採用では警察官など公務員を志望する学生の応募が多く、内定後に公務員試験に合格されて内定を辞退されるケースが少なくありません。一方、高校生は地元に残って就職という志向が高まっていることを実感します。
昨年4月、当社はALSOK本社とともに佐賀県と防犯・防災、スポーツ振興に関する包括的連携協定を結びました。スポーツ振興の関連では小学生から高校生までを対象とした五輪メダリストらによる柔道教室、防犯では一般向けの護身術教室を開いています。社会貢献を通じ、県民に当社を知っていただくことも重要です。
<<佐賀に赴任するまで印象に残った仕事は何ですか>>
高校生だった私は大手企業に入りたいと考え、北九州の門司から上京し1984年、当時の綜合警備保障本社に入社しました。最初の担当は、新宿の百貨店での警備業務でした。97年から3年ほど一家でトルコに渡り、在外公館警備の担当官として在イスタンブール日本国総領事館に勤務しました。
帰国後、ALSOKの法人営業部門に復帰しました。大手金融機関の再編でメガバンクが誕生していく中、4月1日からの社名変更に合わせ、行員がいない全国の出張所のATMに張っているポスターや置かれている封筒の交換などを、一晩中に完了できるよう警送隊員や施設警備員への指示や銀行間の調整を室長として担当したことが印象に残っています。
<<出身地の九州での勤務です>>
約30年ぶりの九州勤務は4年目に入り、単身生活にも慣れました。休日は福岡で暮らす母に顔を見せに行ったり、フルマラソンに挑戦したりして、リフレッシュを心掛けています。