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警備業ヒューマン・インタビュー
――父への恩返し2023.10.21

島袋哲安さん(南日本警備保障代表取締役社長)

隙間埋めて売上伸ばす

<<沖縄市は今、バスケットボールが盛んだそうです。Bリーグで地元の琉球ゴールデンキングスが昨季初優勝、今夏はワールドカップも開かれました。警備の仕事にも好影響はありますか>>

2021年に開場した最大1万人収容の沖縄アリーナの施設警備を当社が担当しています。観衆が円滑に流れるよう動線が広く確保されるなどさまざまな工夫がなされています。

ワールドカップ期間中は主催者側が会場警備を担当し、当社はじめ地元の警備会社は市主催の関連イベントの会場などを警備しました。地元企業と世界的な大会の盛り上げに関わることで結束も深まり、イベント開催の効果を実感しています。アリーナではスポーツ以外の集客イベントも開かれるので、ホテルやコインパーキングなど関連施設の警備需要が今後も伸びていくと期待しています。

<<沖縄県の本土復帰の翌年に設立した会社は今年で創立50周年、社長就任も10年の節目です>>

創立50周年は節目ではありますが、通過点という位置付けです。また、創立記念日の時期はまだコロナ禍の感染対策が緩和される前で、セレモニーは無しです。社長に就任してからの10年で売上を3倍に伸ばし、赤字経営から黒字化することができました。

創立当初は常駐警備や交通誘導といった人的警備が中心でした。現在は売上シェア別で機械警備と常駐警備と現金輸送でそれぞれ3割ずつ、残り1割がイベントなどの雑踏警備という比率です。

売上を伸ばせた要因は「隙間を埋める仕事」を開拓してきたことです。施設警備の契約先の企業が抱えている課題について私達がお手伝いできることはないかと向き合う中で、新たなサービスを作り出し提供してきました。

例えば、取引先である液化石油(LP)ガスの元売り会社が行っている保安業務を当社が引き受けています。ガス利用者からコールセンターに連絡があった際、当社員が駆け付け対応や必要に応じてガス会社に連絡するサービスを提供することで、ガス会社の省人化に寄与しています。当社は警備員の資格以外にLPガスの保安に関する認定資格も取得しました。LPガスに関する駆け付けサービスは、当社が加入している同業者組織「ユニセキネット会」の三沢警備保障(青森県三沢市、佐々木仁社長)が取り組まれていて、手法を学ばせてもらい、沖縄では先駆的に始めることができました。

同様に、取引先の不動産管理会社が扱うテナントやアパートなど約2万5000件の物件、コインパーキングの管理会社が扱う約500件の駐車場への駆け付けなども取引先の省人化などの課題解決に役立っています。

ほかにも18年から始まった民泊物件への駆け付けサービスでは、旅館業法の許可を受けた民泊物件などを対象に、「水が出ない」などのトラブルが発生した場合に迅速に駆け付け対応します。観光が回復するにつれ、駆け付けのニーズも高まると考えています。

<<警備会社に進むきっかけは>>

短大に進学した当時はイベントやレストランでアルバイトなどをしながら学生生活を謳歌していました。しかし、高齢の父らが苦労して会社を経営している背中を見ている中で、「自分も手伝わなければ」という気持ちが芽生え、経理の専門学校で資格を取得して会社を支えたいと考えるようになりました。専門学校に行きたいと父に話すと「まだ遊び足りないんか」と難色を示され、土下座で説得し入学しました。卒業の時、学校から渡された複数の資格証を見せても、父は特に何も言いませんでしたが、私が本気で学んだことは伝わったと思います。

資格の取得がゴールだとは思っていません。資格を生かして会社に貢献しないと。会社は給料を多くもらっている順に働かなければならないので、社長に就任して以来、地元の異業種、各地の警備業の経営者と交流し、収集した情報を社業に生かしました。黒字化、売上増を果たせて、ようやく親孝行できたかなと思います。

<<沖縄の最低賃金は43円アップの896円です。経営者としては警備料金の引き上げについてどのように対応していますか>>

地域の経済状況を踏まえると料金引き上げは容易ではありませんが、取引先に理解してもらえるよう丁寧に説明を尽くしていきます。警備の仕事を基点に、取引先の困り事を解決できないか、隙間を埋められないかという意識で、地域と共に発展するべく取り組んでいきます。

警備業ヒューマン・インタビュー
――ドローン事業2023.10.11

鍵山礼二さん(セントラル警備保障開発営業部ドローン事業担当課長代理)

「空からの警備」現実に

<<セントラル警備保障は、10月11日から13日まで東京ビッグサイトで開催される「テロ対策特殊装備展」に初出展します>>

テロ対策事業とドローン事業を紹介するため出展を決めました。2025年の大阪・関西万博を控え、テロ対策用資機材を関係者にPRする目的もあります。

当社はテロ対策業務を行っていることはあまり公表してきませんでしたが、以前より実績を重ねていて、官公庁から一定の評価を頂いています。今年5月の「G7広島サミット」では爆発物探知犬や車両突入阻止バリケードなどを提供し、テロ防止に貢献しました。

<<展示の目玉「不正ドローン対処」はどのような内容でしょう>>

ジャミングガンと不正ドローン無力化システムの2機種です。ジャミングガンは妨害電波を照射してドローンを無力化します。不正ドローン探知装置と組み合わせることで犯行を未然に防ぎます。

不正ドローン無力化システムは探知・識別した不正ドローンのみに、周囲に影響を及ぼさずピンポイントで対処できます。不正ドローンの制御を支配して強制的に着陸させることも可能です。

<<ドローン事業はいつからスタートしたのですか>>

2021年9月、社内にドローン事業とテロ対策の専門組織が発足しました。ドローン点検業務やドローンパイロット育成、自律飛行型ドローンによる巡回警備の自動化を目指しています。組織は「D―SIT」(ディーシット)という名称です。現在、開発営業部担当部長の加藤勉以下8人が在籍しており、今後さらに拡大していく方向です。

D―SITはドローン/ディフェンス・スペシャリスト・イノベーション・チームの略で、ロゴの4つの輪(写真参照)はドローンの4つの回転翼でもあり、当社の3原業「警務」「営業」「技術」に「ドローン」を加えた4業務も表しています。

<<D―SITのこれまでの歩みを教えてください>>

ドローンメーカー・Liberaware(リベラウェア・千葉市、閔弘圭代表取締役CEO)の屋内空間専用の産業小型ドローン「IBIS(アイビス)」を使った設備点検業務からスタートしました。GPSが届かない屋内の狭所や暗所では、パイロットの高い操縦技術が必要です。スキルを磨くため、あえて難度の高い業務から取り組みました。

22年3月には「CSPドローンスクール町田校」を当社の東京研修センター(東京都町田市)内に設立、開校しました。当社は国交省登録団体のドローン操縦士協会(略称DPA)に加盟し、航空局ホームページ掲載講習団体として登録されています。当初はドローン点検パイロット養成やドローンの知識操縦技術を持った警備員養成など、パイロットの内製化を目的に設立しました。今後は、要望がある警備会社にも受講していただき、スクールの規模を拡大させていく計画です。

カリキュラムは座学1日・実技2日で、「ドローン操縦士回転翼3級」という民間ライセンスを取得できます。受講者は最大2人とし、一人ひとりの実技時間を長く確保しました。今後は国家ライセンスを取得する登録講習機関を目指しています。

<<警備業のドローン活用はどのように進んでいくでしょう>>

航空法などの法整備が過渡期であること、機体の性能面に課題がある点などから、警備業ではまだ活用されていません。今後は外周に巡らせた赤外線センサーと連動させたドローンが発報時に現場に急行して状況確認を行ったり、巡回業務を行うドローンにAIによる映像解析機能を搭載することで異常を検知するなど「空からの警備」が現実となっていくでしょう。

機体については情報漏えいのリスクを避けるために国内メーカーとの関係を強化していきます。その1社であるエアロセンス(東京都北区・佐部浩太郎代表取締役社長)と当社は今年6月、幕張メッセで開催された「JapanDrone2023」に共同出展しました。

<<ドローン事業に携わる日々で感じることは?>>

海外の戦場ではドローンが兵器として使用されています。日本では悪用された事例を耳にすることはまだ少ないですが、今後いつ爆弾や薬物を積んだドローンが使用されても不思議ではありません。不正ドローンへの対処はドローン事業の中でも特に急務と感じています。

警備業ヒューマン・インタビュー
――防災訓練指揮官2023.10.01

清水達矢さん(北関東綜合警備保障 常駐警備部長)

練度上げて災害支援

<<本社がある宇都宮市で9月4日、記録的大雨が降り、3時間降水量が観測史上最大となりました>>

集中豪雨があって、市街地を流れる田川が氾濫危険水位を超え、避難指示が出ました。流域の旭陵・宮隠地区の幼稚園から「避難させてもらっていいですか」と連絡があり、「いつでも来てください」と答えて準備を進めました。

高台にある本社ビル(愛称=あんしんかん)の2階多目的ホールに避難所を開設し、園児と先生85名くらいを受け入れたのです。氾濫にはならなかったので、保護者が随時、園児を迎えに来られました。避難指示が解除になって、その日に全員、無事に帰宅。宇都宮市の危機管理課に逐一、報告を行いました。

<<2011年の東日本大震災、19年の台風の際も本社内に避難所を開設し、避難者を受け入れています。経験は生きましたか>>

防災担当として受付や交通誘導、毛布配布などの人員確保を各部署に振りました。社員たちは「これお願い」「ここ、こうするよ」といったやりとりをしていました。警備会社だから、あたふたしません。過去の経験を生かし、社員が配置や役割を理解しているので、スムーズに受け入れることができたのです。

<<その2日前の9月2日、今年で28回目となった防災訓練をグループ会社とともに本社で行いました。本格的な訓練は4年ぶりのことで、「指揮官」を務められました>>

内容を毎年グレードアップし、地域の方が来てくれていましたが、コロナ禍で途切れていました。再開でき、地域の方にも見ていただいて良かったです。災害は日常的に、いつでも起こり得るので、練度を上げていくことが大切です。毎年、同じ内容ではなく、新しいものも取り入れていきたいと思います。

<<宇都宮市とは2019年に協定を結ばれています。災害発生時にドローンや警備指揮車を活用して情報収集を行い、映像をリアルタイムで伝送することになっています>>

今回の訓練実施にあたり、市の危機管理課へ行って調整しました。「災害発生当初はなかなか情報が入らない。発生直後の映像がほしい」とのことでした。訓練では本社の3階に指揮本部を設けて、そこに映像が届くようにしたのです。屋上のヘリポート、最上階(12階)からや、街中を走らせた警備指揮車、バイクからの映像をまとめて今後の参考資料として使えるようにしました。

指揮車には車体上部に360度回転可能なネットワークカメラが搭載されています。ドローンは買い替えた新しい機種も使いました。市からは訓練後、「実際に映像を提供していただけると、本当に助かります」と言われました。ある程度の流れ、情報収集の土台はできたので、練度を上げていきたいと思います。

ただ今回は限られた地域での訓練でした。当社には広範囲に拠点(14支社)があるので、違うパターンも考えていきたいと思っています。

防災訓練では、「水難救助隊」のお披露目も行いました。線状降水帯による豪雨が相次いでいることから、レスキュー隊(2004年編成)から5人を選任しました。低いところにある旭陵・宮隠地区は田川が氾濫すると、水をかぶってしまう。浸水地域の助けにならないかということで、青木靖典社長の指示により、新たに作った部隊です。

資機材の購入にあたっては、市の消防本部に確認して、ボート1隻、ライフジャケットと胴付長靴を各5人分、捜索用の棒2本を購入し、最新のものをそろえました。災害時の対応の仕方について消防本部と検討も行いました。今後、沼や川に行って訓練することを考えています。

<<会社は創業以来、「安全はすべてに優先する」をモットーにされています。どう受け止めていますか>>

この言葉がすべてを網羅しています。本社では避難所機能の他、自家発電システムや受水槽、備蓄庫を備え、災害による断水地域で給水活動を行ったことがある消火用タンク車も保有していますが、安全で何もないのがベスト。事件・事故を発生させないのが一番です。

<<入社して1年半になります。栃木県警での長年にわたる刑事の経験は、現在の職場で生かされていますか>>

「第二の職場」として来たわけですが、情報収集のやり方というものは過去の仕事が生かされていると思います。組織立った報告の仕方も役に立っています。指示命令系統がスムーズにいくように頑張ります。