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「人材確保と定着」我が社の取り組み⑰2016.10.21

倭文浩樹さん(JSS 代表取締役)

「ウェブ」は最高の求人広告

――「速巧」と毛筆で書かれ、額に入れて飾られてあります。

 上手で遅いよりも下手でも速い方がいいという孫子の兵法「巧遅拙速」から、「巧遅」と「拙速」の良い部分を組み合わせた造語で、当社の社是です。

――新卒社員が、毎年10人ぐらい入社しています。

創業時から新卒入社の実績を積み、各校からの信頼もあります。当社では「インターンシップ制度」と呼んでいますが、新卒社員は入社試験に合格後、学生でいる間にいくつかの現場を経験させます。この制度はキャリアとして認められ、入社時点で階級に差がつくこともあります。警備経験があることで、新卒社員研修も実感として身に付きます。

――中途採用の状況はどうですか。

最近は広告の効果があまりないので、手法を変えています。経営者同士のSNSはフェイスブックやインスタグラムでつながっていることが多いのですが、若い人たちは「ポケモンGO」など人気のあるゲームのコミュニティーでツイートしています。そこに自然な形で求人に関するリンクを貼る仕組みを約1年かけて作り上げ、間もなく試す予定です。若年層からの反響は大きいと思います。

――警備会社の求人に使われてない方法です。

 当社はゲームなど若者のイベントに賞品提供などで協賛して、社名をアピールしています。フォロワーを増やしてSNSの求人効果を上げるためです。今までのように広告を媒体に出して募集したり、賃金を上げて人を呼び込む時代はもう終わっています。

――会社のウェブサイトを見ましたが、募集要綱が警備の現場ごとに詳しく説明されています。

ウェブに手間と費用をかけている警備会社は大手とごく一部だけですが、実は最高の求人広告であり、優秀な営業マンでもあります。ウェブでの受注は顧客の元へ足を運ぶ以上に成約率が高く、適正な警備料金が確保できるのです。

――社員の定着は、どのように図っていますか。

飲み会などのレクリエーションは予算を組み、定期的に行うよう幹部に指示しています。社員にとってガス抜きの効果がありますが、私には情報収集の目的があります。社員の不満を初期に解決し、定着率の向上につながります。

 制度を一律に定めるやり方は時代にそぐわないようで、“個別対応”が求められています。例えば共働きで、保育園の送り迎えをする必要がある男性社員から「給料が下がっても定時で帰れる部署に変えてほしい」と要請がありましたが、そのために部署を新設して異動させました。

――まさに個別対応ですね。

女子社員も育休をとったあと、会社に復帰しています。やはり子どもの送り迎えがあるとのことで、役職が変わり給料は下がりましたが、午前10時出勤・午後4時退社の申し出を承認しました。子どもの成長につれて、徐々に元の勤務に戻していけばよいのです。

――高齢者も元気に働いています。

 当社は16期目ですが今まで定年退職者はいません。77歳の人も勤務しています。労働人口は減少していきますから元気なうちは働いてもらい、定年制度は廃止してもいいと思っています。退社時期は自分で決めてもらうべきです。

――他に定着への取り組みは?

全社員に対し年一回、6月に「役員面談」を行っています。社長、専務取締役、常務取締役の前で、1人ずつプレゼン資料を持参して自身を売り込んでもらいます。「自己評価と役員評価を合わせる」ことが目的で、頑張っているのに認められないと感じている社員にとっては大きなチャンスです。

給料や役職は、業績を四半期ごとに見て切り変えています。1年ごとだとスパンが長過ぎることから、社員のやる気が出るよう小刻みにしています。やる気のある社員にとってはいい職場環境ですが、逆にサボっているとすぐわかってしまいます。私が会社員だった頃に「こういう制度だったらいいのに」と思っていた理想を実現させたものです。

――制服のデザインが評判です。

2002年日韓共催サッカーW杯警備の際にデザイナーが考案し、サンプルを試作しました。地味なようで目立つところが気に入っています。警備服は重要で、特に若い人に「着たい」と思わせる必要があります。高齢者の人を、若く見せる効果もあります。

――提案力が強みと聞いていますが。

ある大型量販店では、万引きによるロス率改善のため、陳列の仕方やスタッフ教育について提案しています。「お客さまと目があったら『いらっしゃいませ』など声をかけることで、万引き防止と同時にサービス向上にもつながります」と提案し、スタッフの教育まで任せていただきました。ほかの警備会社が安い警備料金でアプローチしても、当社から切り変わることはありません。

――どのように提案力を指導していますか。

会議で私は、話の内容より話し方について指摘します。理由から始める話は「できない言い訳」をしている場合が多く、よい印象を持たれません。提案・折衝・報告は全て、結論から話すことを指導しています。

「人材確保と定着」我が社の取り組み⑯2016.10.11

馬場善志雄さん(東海警備保障・東警・名宝警備保障代表取締役社長)

入社時の教育を重視

――新卒者の採用状況は、どうですか。

高校・大学の新卒者20人ぐらいを15年前から毎年、採用しています。実績ができ各校から信頼いただいていますが、昨年と今年は人材確保が厳しい状況でした。

――入社後の教育に力を入れていると聞いています。

新卒社員は一週間、合宿研修を行います。その後、一定期間ずついくつかの部署を異動して実務経験を積み、本人の希望を聞いた上で人事部が判断し正式に配属を決定します。その後は、各部署で業務に沿った専門的な教育を行います。

私は全警協の技術研究専門部員を長く勤めた経験もあるので、教育には強い思い入れがありますから、特に入社時の教育には時間とお金をかけたいと思っています。

――中途採用の求人については?

 私が代表取締役を勤める警備会社は、東海警備保障、東警、名宝警備保障がありますが、現在この3社で営業所は愛知県と岐阜県に15拠点、山陰地方は6拠点です。東海警備保障の業務は機械警備がメインで、中部国際空港セントレアの空港警備、愛知県庁をはじめとする施設警備、貴重品運搬業務などですが、東警と名宝警備保障は特に電力関連の警備に力をいれています。

また警備業以外の業容拡大にもチャレンジしており、気象庁から予報業務許可事業者の認可を受け、「緊急地震速報サービス」の提供や、「心臓マッサージ補助機能付きAED」の旭化成ゾールメディカル製AEDを代理販売し、講習会も開催しています。電気保安業務と太陽光発電の設置管理・LED・電動バイク等、エコ商品の販売も行っています。

以上の事業内容から、1号から4号までの警備員だけでなく、営業・管理・技術の社員を幅広く採用しています。求人活動は、新卒は本社採用、中途採用は基本的に各社・各拠点ごとに行っています。

――中途採用の人材確保は、順調ですか。

決して好調とはいえませんが、各拠点で業務に合わせたきめ細かい募集内容としているので、応募は安定しています。雑誌など紙媒体からネット、ハローワークなど広く活用しています。

――女性の採用は積極的に?

当社が初めて女性警備員を雇用したのは昭和60年頃で、全国の警備会社でも早い方だと思います。当時、ある警備部隊でソフトなイメージときめ細かな案内が提供できる「女性警備員の部隊」をお客さまに提案しました。現在当社は空港警備などで、女性警備員は欠かせない存在です。

――合気道サークルがあるとか。

「東友会」という団体が運営しています。合気道は機械警備を行う隊員の護身用に始めたものですが、現職の警察官に毎週土曜日、指導していただき、自己研鑽の場として社員が自由に練習に励んでいます。道場は社内にあり、稽古のほか昇段試験も行っています。

――社会保険は加入済みだと思いますが。

創業当時から全員が加入しています。労災に関しては「上乗せ保険」に早期から加入して、万が一の事故にも備えています。定期的な健康診断の受診も創業時から行っており、ストレスチェックも全員に受けさせています。

定年は60歳から65歳に引き上げ、健康であればさらに定年の延長を認めています。社員の楽しみとして定期的に親睦会などのレクリエーションを行っているほか、幹部社員に対しては結婚を応援する意味でお見合いなどの“婚活”に補助金を出しています。

――馬場社長は「愛知県警備業協同組合」の理事長でもあります。

 30年前に協同組合を当社創業社長が設立し、現在72社が加盟しています。愛知万博の駐車場警備や高速道路の集中工事、今年はサミットの空港警備も担当し、愛知県で開催される大規模なイベント・雑踏警備で実績をあげてきました。組合は協会の加盟員であることが入会条件になっており、30年間協会とは他府県以上の関係が築かれてきたと感じています。

警備業協同組合は県内に、トヨタスタジアムとその関連イベント警備を中心に行う「豊田警備業協同組合」、名古屋港周辺の安全を守る「名古屋港ワッチ業協同組合」があります。

――恵まれた環境にあります。

長く会社を運営している中でよい縁があってお客さまに恵まれ、その結果、社員にも恵まれてきました。これまで経営を続けてこられたのは、お客さまと社員に感謝の気持ちを忘れず、行動指針である「まず、すべき事をして、さすがと言われる警備を提供しよう」を合言葉に、常に基本に立ち返りプロの警備会社としてやるべきことをコツコツ地道にやってきたということに尽きます。