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警備業ヒューマン・インタビュー
――労災事故防止2019.11.21
黒川智洋さん(スワット 代表取締役)
「安全な職場」で人材確保
<<千葉県警備業協会の青年部会が企画・運営する「セーフティフォーラム」に立ち上げから携わってきました>>
「セーフティフォーラム」は、千葉警協の労働安全衛生大会で、会員が労働災害事故の防止を図る意識をより高めることが目的です。毎年11月1日「警備の日」に開催して、今年で4回目を数えました。私は青年部会の副部会長を昨年まで務め、現在も部会の役員とともに運営を統括しています。
フォーラムでは、労働災害を防ぐ基本的な知識を再確認して新しい情報も共有するため、労働基準監督署の担当官をはじめ、消防局や安全運転管理協会の方などに講演していただきます。青年部会員は「安全で安心して働くことのできる明るい職場づくり」に向けた大会宣言を行います。
労災事故は、他の業種は減少傾向にありますが、警備業は依然として増加傾向です。警備員は現場の安全安心を守り、経営者は警備員の安全を守らなければなりません。業界の記念日である「警備の日」に、事故防止の徹底を関係者に改めて呼び掛け、情報発信することは大切と考えています。
<<立ち上げまでの経緯はどうでしたか>>
青年部会は2015年の発足以来、3つのグループ「社会保険加入促進」(現・雇用促進)「労災・安全衛生」「社会貢献活動」に分かれ、それぞれ調査研究を行っています。私は労災・安全衛生グループに入り、業務中の交通事故や巡回中の転倒など事故事例を集めて部会員と分析したところ、社内の取り組みで予防できた事故は少なくないとわかりました。
青年部会の一同は、協会活動に役立ちたい、警備業界をより良く変えたいという熱い思いを持っています。千葉警協ではそれまで、労働安全衛生大会を開いていなかったことから、部会員がアイデアを出し合って「セーフティフォーラム」を企画し、協会役員の力添えを得ることで実現したのです。
フォーラムに参加した会員から「若い人たちが業界をより良くしようと頑張っている姿を見ると、元気をもらえる」などの言葉を聞いた時は嬉しく思いました。
<<社内では労災事故防止にどのように取り組んでいますか>>
管理職などがこまめに現場を回る「巡察体制」を強化しています。巡察を通じて、現場ごとにひそむ危険を把握し“見える化”するマップを作成するなどして、警備員に注意喚起します。
必要に応じて事故防止用の資機材を置き、朝礼で注意事項を確かめ、指差呼称の徹底、熱中症対策、KYT(危険予知トレーニング)を行うほか、安全意識が足りない警備員には再教育を行うなど、基本的なことを継続していくことが重要と考えます。
労災事故のない安全な職場づくりは、定着を促進する効果もあるのです。人材確保の面でも労災防止は重要です。管理職が頻繁に現場に出向いて、警備員から仕事についての不満や要望を聞くことも離職防止につながると実感します。
<<フォーラムでは、事故防止の論文、ポスター、標語を会員から募集し、優秀者を表彰します>>
当初は青年部会員の所属する会社からの応募が中心だったのですが、回を重ね、会員各社からの応募が増えています。これは、安全対策の向上を図る意識が会員に浸透している証しと思っています。
労災事故を防ぐためには、経営側の取り組みとともに、警備員自身の安全に対する意識付けが重要になります。事故防止がテーマの標語を警備員が考えることは、危機管理の視点で職場を見直し、働く上での安全を再確認することに通じるのです。
<<採用活動の取り組みは>>
人手不足が続く中で、当社は来年度から、高校・大学の新卒者の採用活動に力を入れます。「魅力ある職場づくり」が重要であり、そのために労災事故の根絶を図る取り組みは必須です。
また、若者の雇用拡大に向けては、警備業の新しいイメージを打ち出すことが大切と考えます。当社は施設警備の中にAI搭載の防犯カメラを導入し、ドローン関連の新事業も手掛けるなどして若者にアピールします。
求職者は、事故の起こりがちな職場を選びません。働く人を守り、“危険”などの3Kイメージを払拭するため、労災事故防止の取り組みを一層進める時です。
警備業ヒューマン・インタビュー
――警備員教育2019.11.11
山﨑松惠さん(国際警備 会長)
資格保有者を増やそう
<<群馬県警備業協会の会長に就任されて半年になります>>
私は警備業に50年以上携わり、協会の前身である「群馬県警備会社連絡協議会」から参加しています。日本の高度経済成長期に警備の需要が広がり、業界が飛躍を遂げる過程を経験してきました。
飛躍の節目となったのは、警備業法の施行(1972年11月1日)です。これ以降、法令を遵守する健全な企業の集まりとして警備業界は、警備員教育を充実させ社会の信頼を勝ち取って成長してきたのです。
<<警備業法施行規則の改正により、新任・現任教育とも時間数が短縮されました>>
教育時間数の短縮には正直驚きましたが、その意味するところを考えました。これまで各社の努力と、検定制度など業界を挙げての取り組みによって、警備員の技能は高まってきたと感じます。当協会も2001年に「警備員教育センター」を開設するなどして会員を対象とする教育事業に力を注いできました。
今回の時間短縮は、警備の質が全体的に向上してきたことを背景として、警備員の教育方法が各企業の裁量に委ねられる部分が増えたことを意味していると受け止めることができます。今後、万が一にも警備員の質を低下させることがあってはならない。それは長年にわたる業界の取り組みに水を差し、積み上げてきた信頼を損なうことに他なりません。
<<教育の充実を図るため、重要なことは何でしょう>>
警備員の技能向上で明確な目標となるのは、警備業務検定をはじめとする各種の資格取得です。当社の場合、社員245人のうち4割以上が資格を持っています。今後は社員の2人に1人、さらには3人に2人と資格保有者を増やすことを目指します。会員に対しても「皆で業務の質を上げるために資格者を増やしましょう」と強調しています。
資格者が増えることは、教育にコストをかけて業務品質を高めているとユーザーにアピールできます。企業は、特別講習の受講者に社内勉強会を行って応援し、資格取得を賃金に反映させて警備員のやる気を一層引き出すなどの取り組みが求められます。
昨今は、施設におけるテロ防止策、高齢者や体の不自由な人への接遇、訪日外国人への対応など、警備員が勉強すべきことは増えています。現場ごとの業務に特化した個別の研修を行うなど、教育方法には一層の工夫が必要と考えています。知識・技能と合わせて、「より良い仕事をしなければならない」という警備員の心構え、使命感を醸成するための講話なども大切と思っています。
教育を受けてスキルを磨き社会の安全を守る警備業は、崇高な職業です。しかし警備員の社会的なステータスは、以前に比べれば上がったものの、決して満足できるものではありません。それが慢性的な人手不足につながっているのです。地位向上のためには、警備員の処遇改善を進めることです。
<<協会活動に取り組む中で思われることは何でしょう>>
自社と業界の発展を目指す上で、協会活動は非常に重要です。研修や会合を通して業界が抱える課題や新しい情報を会員が共有して、各社の取り組みを進めなければなりません。
会員に対しては「経営基盤の一層の強化」を呼び掛けています。強化する方法は、適正な警備料金の確保であり、協会の役割は、全国警備業協会が策定した自主行動計画、適正取引の周知徹底を図ることだと考えています。
大切なのは、より質の高い業務サービスを行うことで先方の評価を高めることであり、質の高い業務は、教育の賜物です。“警備業は教育産業”と言われ、実際に半世紀にわたる業界発展を支えてきた原点は、教育に尽きると思っています。
業界が地域社会に向けて「警備の日」などの広報活動を行って、警備業の認知度を高めていくことも必要だと思います。
<<警備の日に群馬警協は書道展覧会を開きました>>
前会長(川﨑弘氏)の発案を継承して地域に根付くよう、回数を重ねていきます。社会になくてはならない警備の仕事に小・中学生と家族が親しみを感じて関心を寄せ、そうした輪が少しずつ広まることで警備業への理解が深まり、就業する人が増えることを願っています。
警備業ヒューマン・インタビュー
――警備業をアピール2019.11.01
増子弘さん(日本パトロール警備保障 専務取締役)
フェアは青年部活動の原点
<<宮城県警備業協会が10月19日と20日に開催した『警備業セキュリティフェア』の実行委員長を務めました>>
フェアは2009年に始まり、当時の「実行委員会」が母体となって2013年に宮城警協青年部が発足しました。その意味で、フェアの企画と運営は、青年部活動の原点です。
青年部が発足した当初は、同業他社としてのライバル意識が強かったものです。しかし、人材確保や料金問題などで同じ悩みを持つ仲間であるとわかって、イベントや研修会などへの取り組みを通じて親睦が深まっていきました。
青年部が活発に活動できるのは、親会(協会理事会)が若者らしい斬新な発想を期待してバックアップしてくれるからであり、感謝しています。
<<フェアは、どのように準備しましたか>>
準備期間は半年余りです。会場が前回までの公園広場から仙台駅に代わったことで、アピールする人々の幅が大いに広がった一方、駅は構内放送があるためマイクの使用が制限されるなどの制約もありました。
フェアを人材確保につなげるため、まず青年部がイベントを盛り上げて、“警備の仕事”に興味を持った人が会場を回り、ハローワークのブースを訪れて会員各社が作成した会社紹介パンフレットを手に取ってもらう、という流れを目指しました。
警備員のファッションショー「ランウェイ」は5回目ですが、単に華やかな雰囲気のショーでなく、登場する警備員一人ひとりの“思い”を伝えることに意義があると考えます。そこで今回は「業界の魅力、自社の魅力」を語ってもらいました。
出演者は当初、“警備員は縁の下の力持ちなので、音楽に乗って歩くのは恥ずかしい”という気おくれがあったようです。しかし、青年部メンバーからダメ出しを受けながら、ウォーキングやメッセージを話す練習を重ねるうちに「出演することに意味がある。積極的に警備業をアピールしよう」という気持ちに変わっていくのがわかりました。
初の会場で観客が集まるか不安でしたが、予想した以上に多く若者や家族連れが警備員の言葉に耳を傾けて、拍手を送ってくれたことを非常に嬉しく思います。
<<体験型ブースを設置して警備業務を説明しました。来場者の反応はどうでしたか>>
「将来は警備の仕事をしてみたいと考えています」という男子高校生と話す機会がありました。聞いてみると、以前から警備業に興味はあったものの、具体的な仕事内容がわからなかったそうです。青年部のメンバーから説明を受け、警備現場の様子なども聞くことができたと喜んでいました。
今回、ハローワークのブースを訪れた人は90人ほどで、中高年が中心でした。情報発信を重ね、方法を工夫することで、警備業に関心を向ける人は、今後さらに増えると感じました。
<<撮影会では、若い女性が警備服を試着し、誘導灯やトランシーバー、金属探知機を持ってポーズをとる姿が多く見られました>>
これは、SNSによる広報の効果を実感します。宮城警協のPRポスターに登場した6人組の人気アイドル「ぜんりょくボーイズ」は、全員が県内の出身・在住で、公式ツイッターのフォロワー数は4400人以上です。そのツイッターでフェア開催を告知していただき、集客につながったのです。
若い女性は警備業に対して“男性が圧倒的に多く、仕事がきつそう”といったイメージを持っているようですが、こうした機会に制服や装備品に触れることで親近感を持って、いずれ仕事選びをする時の選択肢に警備員が加わるよう願っています。
<<青年部のアイデアや行動力による活動が一層期待されます>>
12月には、東北6県警協の「青年部サミット」が初めて開催されます。青年部活動の一層の活性化につなげたいと思っています。
警備業界に入って20年以上になりますが、特にここ数年は、各社が適正な警備料金を確保して処遇改善を進め、業務の質を高めており、警備業のイメージは確実に向上していると感じます。
社会になくてはならない職業として、警備業が今まで以上に評価されることが青年部の願いであり、今後も切磋琢磨しながら、各種の活動に取り組んでいきます。