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警備業ヒューマン・インタビュー
――全警協表彰警備員⑥2021.02.21
平松和治さん 末次慶吉さん(セコム九州本部)
現金護送中、消火器を噴射
平松和治さんと末次慶吉さんは2019年9月6日、福岡市東区内のATMで補填作業を終え車両に乗り込む際にビル火災を発見、車載の消火器を噴射し迅速に消し止めた。
<<全警協会長から模範警備員表彰を受け、東消防署長から感謝状を贈られました。おめでとうございます>>
平松 ありがとうございます。「警備の日」大会の表彰式が終了した後に、「君たちはセコムの誇りだ」との言葉を当社の中山泰男代表取締役会長から掛けていただいて感無量の思いでした。
末次 大きな励みとなる言葉であり、今まで以上に自分を磨いて業務にまい進しようと決意を新たにしています。
<<表彰された消火活動はどのように行いましたか>>
平松 その日の昼過ぎ、私たちはATMで警送品を補填・回収し、駐車場に停めた現金護送車に向かいました。
ジュラルミンケースに入れた警送品を運搬する時は“間断なき警戒心”で周囲に目を配ります。不審な動きをする人物はいないか、いつもの風景と違う不審物などはないかと細心の注意を払うのです。この時も同様で、警送品を車両に積んで施錠し乗り込もうとした時、40メートルほど離れた3階建てテナントビルの裏手に火の手が上がっているのが見えました。
末次 日ごろから異常事態に遭遇した場合は、身に付けている非常ボタンを押して当社コントロールセンターに報告する訓練を受けています。ただちに消火しなければ大きな火災になりかねないと判断し、非常ボタンを押して状況を説明するとともに、不測の事態に備え周囲への警戒を継続しました。
平松 車両に常備してある消火器を持って走りました。ビルの1階、非常階段近くに置かれたダンボールや木材、エアコン室外機などが燃えており、炎は私の背丈近くまで上がっていました。火災現場は初めてで「消火器1本で消せるのか」と不安がよぎりましたが、訓練の通りに火元を狙って噴射し消し止めました。
末次 コントロールセンターからの通報で消防隊、警察官が駆けつけました。当時、周辺では不審火が続いており、人が集まって騒然となる中、消防署員が鎮火を確認しました。
現場に到着した上司が、ねぎらいの言葉を掛けて固い握手をしてくれたことは嬉しく、自信につながっています。出火原因はタバコの不始末らしいと後で聞きました。
<<消防署長からの感謝状贈呈では「現金護送隊員による的確な初期消火」を讃える言葉があったそうですね>>
平松 私たちの業務は、常に神経を研ぎ澄まし集中力を保つために心・技・体のスキルアップが欠かせません。基本動作や警戒棒などの防犯訓練、さらに心肺蘇生法など各種訓練を受けて切磋琢磨しています。
こうした教育・訓練に加えて、現金護送車に同乗する相勤者との“緊密な連携”が大切になります。今回、迅速な消火活動、コントロールセンターへの報告と警戒の継続という役割分担をして行動できたのは、訓練の賜物であり互いに培ってきた信頼関係の結果と思っています。
末次 私たちは毎朝2人1組で、携帯する装備、車載の装備品などを一つひとつ点検して対話し、業務に臨んでいます。厳しい訓練を受け、時には仕事が思うようにいかず悩む日もありますが、励まし合って前向きに進む仲間と出会えたことは職場の魅力です。
<<犯罪抑止に加えて安全運転の取り組みが必須となります>>
末次 私たちが所属する福岡現送センターは無事故・無違反の記録を伸ばしており、特に無違反の日数は約4200日、11年半を数えます。
この記録は全隊員が業務の前に車両をくまなく点検し、「信号よし、歩行者よし」などと声に出して確認する呼称運転を忠実に継続し、悪天候、交通渋滞、事故現場などに遭遇しても平常心を保ってきた成果だと思います。その一員であることに誇りを持ち、笑顔で仲間や家族のもとへ帰ることができるよう事故予防に万全を期しています。
平松 警備業は、業務はもとより日常生活の中でも、いざという時に周囲の方々を助けて地域社会に貢献する職業であり、さまざまなスキルアップが重要であると実感します。
セコムグループ全社員の心にある「信頼される安心を、社会へ」という想いを行動に表していくため一層精進していきます。
警備業ヒューマン・インタビュー
――全警協表彰警備員⑤2021.02.11
河合紀幸さん(ALSOK岡山支社)
男性救出、二次災害防ぐ
河合紀幸さんは2020年2月14日、岡山県倉敷市内で横転した車を発見し、車内に閉じ込められていた男性を救出。その後、交通誘導を行い二次災害の発生を防いだ。
<<全警協会長から模範警備員表彰を受け、玉島警察署長から感謝状が贈られました。おめでとうございます>>
ありがとうございます。警備業に携わる者として当然のことをしたまでですが、このような感謝状をいただくのは初めてで光栄です。実は、昨年も同じ隊の仲間が全警協から模範警備員として表彰されており、2年続けての受賞に驚いています。
<<交通事故を発見した時の状況は?>>
午前0時30分ごろ、機械警備の異常通報現場の対応を終え待機所に車で戻る途中、片側一車線道路で運転席側を下にして軽自動車が横転していたのです。停車して駆け寄ると、エンジンがかかったままでライトも点灯しているのですが周囲には誰もいません。車内をのぞき込んだところ、40歳代ぐらいの男性が閉じ込められていました。「大丈夫ですか。けがはありませんか」と声を掛けると、意識はあるのですが気が動転しているようで会話になりません。
一刻も早く男性を車内から出そうと考え、横転している車両の車軸に足をかけて上側になっている助手席ドアを強引に開け、上体を中に入れ込むようにしたところ、男性は助けを求めるように手を伸ばしてきました。私はその手を握って車外に救出するとともに110番通報しました。
男性を安全な場所に移動させて落ち着かせたところ、打撲はありましたが、出血や目立った傷などは見当たりませんでした。男性からは「なんとか大丈夫です。ありがとうございました」と感謝されました。
<<警察署長からは、男性救出後の二次災害を防ぐ行動が高く評価されたそうですね>>
その道路は深夜でも物流車両の交通量が多く、事故車両が原因で交通事故発生の心配があったため、通行車両の交通誘導を行うことにしました。事故現場周辺は暗闇だったため恐怖心はありました。しかも私は業務でも訓練でも交通誘導の経験はありません。携帯している懐中電灯を手にして、普段目にしている交通誘導警備員の身振りを思い出しながら事故車両があることを後続車に知らせ、事故が発生しないように車両を導入しました。
110番通報から15分後に警察官がバイクで到着しましたが、男性に事情聴取をしていたため私は交通誘導を続けました。それから40分ほどして別の警察官が到着し、交通誘導を引き継いだのです。無事に誘導を終えることができ、感無量でした。警察署長からは「深夜にも関わらず、1時間にもわたり二次災害防止に貢献していただきありがとうございました」との言葉がありました。
<<横転した車両から男性を救出するだけでなく、二次災害を防ぐための適切な行動をとりました>>
私は機械警備隊員として、センサーからの発報を受けると現場に駆け付け、対処しています。業務の際に重要なのは、現場を冷静に観察して異常の有無を見極めることです。異常があるのに見逃してしまえば、お客さまに迷惑をかけることになり、場合によっては私自身の生命を脅かします。常にそのように意識しているため、事故当日も冷静に対処することができたのだと思います。
<<新卒で入社して14年目です。職場では後輩の指導も期待されていると思います>>
警備業はスポーツで言えば団体戦で、職場の一人ひとりが自分の役割をしっかり果たすことが重要です。私一人が業務を完遂してもチームは機能しません。スポーツと違うのは、私たちの業務はお客さまの財産や生命を守るためのものであり、失敗は許されません。会社から特に指示はされていませんが、職場全員の能力を高めるために後輩に自分の経験や心掛けていることを伝えるようにしています。
私自身もスキルアップを続けるつもりです。私は大学4年時の就職説明会で、当社社員から「業務の幅は広く、覚えることは多い。しかし、その分とてもやりがいがある仕事です」と説明されて、興味を持ち入社しました。今でも新たに覚えることは多くて大変ですが、それは業務の質を向上させるだけでなく私自身の成長につながります。向上心を忘れずに成長を続け、顧客と地域の安心を守り抜きます。
警備業ヒューマン・インタビュー
――全警協表彰警備員④2021.02.01
小島清人さん 延永大空さん(愛媛綜合警備保障)
〝豪腕コンビ〟侵入者を制圧
小島清人さんと延永(のぶなが)大空さんは2019年12月22日、愛媛県松山市内の小学校に窃盗目的で侵入した男をもみ合いの末取り押さえ、同行した警察官が身柄を確保した。
<<全警協会長から模範警備員表彰を受け、松山南警察署長からは感謝状が贈られました。おめでとうございます>>
小島 ありがとうございます。大きな会場で立派な表彰状をいただき恐縮しています。警備員の栄誉であるこの賞に恥じないよう、日々の警備業務を一層がんばりたいです。
延永 業務の中で侵入者と対面することはあまりないことで、われわれも初めての体験でした。日々行っている業務は「お客さまの安全を守ること」だと、身をもって自覚できました。
<<感謝状授与の際に警察署長から「犯人は体力もあり、動きが素早かったと聞いています。両隊員の活躍がなければ逃走されている事案でした」と感謝の言葉がありました。侵入者をどのように取り押さえたのでしょうか>>
小島 私は機械警備業務で午後11時ごろ、小学校から多重警報を受信し、110番通報するとともに他のエリアを担当する延永警備長に応援を要請して現場に向かいました。合流した警察官2人と計4人で校舎内部を確認中に、警察官の一人が2階の教室から出てきた不審者を発見しました。
その不審者は身長165センチぐらい、中肉中背で20代の男性でした。凶器は持っていませんでしたが、侵入に使用したと思われる工具を手にしていました。男は、取り押さえようとした警察官を振り切って逃走を図り、われわれの方に向かってきました。2人で横並びになり両手を広げて進路を防ぎ、取っ組み合いになりました。暴れる男をどうにか押さえ込み、警察官に引き渡すことができました。
延永 当社の警備員は、こうした状況で最も重要なことは「自分の身を守ること」だと、現任教育や研修で学んでいます。今回は、相手が侵入に使用したピッキング工具のほか凶器を所持していないと判断し、制圧に向けて全力を尽くしました。
<<お二人は、それぞれ柔道とアームレスリングの経験があるそうですが、不審者の確保に活かせましたか>>
小島 私は小学校1年生のときに柔道を習い始め、高校でインターハイ準優勝、現在3段を取得しています。この事案では使命感から夢中で対処しましたが、見ていた人の話によると無意識のうちに両手で相手の両脚を刈る(取る)「双手刈(もろてが)り」で男を倒していたようです。
これまで柔道を続けてきてよかったと感じています。今も、ALSOKグループが参加する柔道大会と30歳以上で競い合うマスターズ柔道大会には毎年出場しています。業務があるので練習時間の確保は難しいのですが、これからも2つの大会には出場して腕を磨きたいと思います。
延永 私は20歳からアームレスリングを始めて今年で6年目になり、2017年の愛媛国体には代表選手として出場しました。侵入者は動きが素早い上にダウンジャケットを着ていたのですべりやすく、捕まえた後は逃がさないように必死でした。腕力にまかせて羽交い締めにしていました。
アームレスリングの経験を業務で活かすことができ、うれしいです。今は県内のアームレスリングチームに所属しており、週に1・2回、仲間と練習を続けています。この競技は、腕っぷしや体格だけでは勝つことはできません。指から前腕、上腕、背筋まで連動させて力を一体化することが重要な奥が深い競技です。4月に兵庫県内で開かれる大会に出場を予定しています。
<<侵入者は、警備員2人の剛腕に驚いたでしょうね。表彰を受けて、ご家族からはどのような声がありましたか>>
小島 女房からは「表彰おめでとう」と「お仕事、気をつけて」の言葉をもらいました。小学生の息子と娘からは「パパ、かっこいい!」と言われ、父親としての株が上がりました。これからも警備員という仕事に誇りを持ち、業務にあたります。
延永 表彰を報告しようと賞状を実家に持ち帰ったところ、両親や兄弟たちから大いに祝福されました。その一方で身体の心配もされ、業務中に自分の身を守ることの大切さにも改めて気付かされました。