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警備業ヒューマン・インタビュー
――主任講師2025.01.21

平川昌哉さん(東亜リライアンス 代表取締役社長)

「教える引き出し」増やす

<<兵庫県警備業協会の副会長で、特別講習の主任講師を務めています>>

兵庫の特別講習講師は私を含め24人です。警備員にとって、国家資格の検定合格は誇りとなります。合格率向上と、受講が意義深い貴重な経験となるよう講師陣一丸となって取り組んでいます。

講師は受講生の知識や技能のレベルを把握しスキルを高めなければなりません。私は、より理解しやすく受講生の集中が持続する講義のスタイルを長年にわたり模索してきました。

<<どのように行うのですか>>

受講生の反応をよく見て講義を進め、話にメリハリを付けポイントを強調します。

法律の条文などを説明する時は警備現場の事例にあてはめ、身近に感じてもらうことが大事です。私のさまざまな経験、失敗談や豆知識も織りまぜ、興味深く分かりやすい講義を心掛けてきました。受講生からは「平川先生は怖そうに見えても講義は分かりやすい」といった声もあるようです。

20年以上前、私が新人講師だった頃は教本を読み進める形の講義が一般的でした。しかし当時の主任講師で、私に「特別講習講師をめざさないか」と声を掛けてくれた先輩は、講義の中で警備現場の豊富な体験談や思わぬ失敗を語り、ジョークも交えていました。学生時代、じっと聞いている座学が苦手だった私は、退屈させない講義、受講生の知的好奇心をそそって引き込む講義を行いたいと思い立ち、試行錯誤しながら今に至ります。

若手の講師には「より多くの講義を聴講して、先輩の模倣から始めて自分なりのスタイルを作っていけば良い」と話しています。

<<若手講師を育成する時に大切なことは何でしょう>>

現在、講師経験が5年に満たない若手は4人ほどいます。分からない事柄があれば先輩に遠慮なく聞ける雰囲気、教えを請いやすいムードづくりが主任講師の役割と考えています。知らないことを質問するのは全く恥ではありません。講師間の活発なコミュニケーションは重要です。

若手講師は先輩に質問しやすく、一方、受講生は疑問点などを講師に質問しやすい環境は、講習の充実につながるものです。

講習で実技訓練の際には、的確な動作を大きな声でほめて、受講生の自信を高めるようにしています。同じように若手講師を積極的にほめることで伸ばしていきたいと思っています。

事前講習2日間と特別講習2日間という限られた時間の中、時に講師は強めの口調で指導する場合があります。その際に「怒られた」ではなく「熱心に教えてもらっている」と相手が感じてこそ意味があります。常に受講生のためを思う気持ちが欠かせません。

社業と講師活動の両立は大変ですが、研修会などを通じて全国の講師と切磋琢磨し、警備業について活発に意見を交わしてきたことは、自分の成長に結びついたと思っています。

<<社業では「東亜リライアンス」(兵庫県尼崎市)の代表取締役社長を務めています>>

弊社は地域社会に密着した警備会社として、父で先代社長の平川哲哉(故人)が創業しました。私は大手警備会社に勤務し機械警備などを経験した後、入社して30年余りになります。

先代は「警備業はマンパワーだ」と言っていました。これは単に人数を多く集めるという意味ではなく、従業員を大切にして技能を磨き、質の高い業務を提供することです。教育訓練を手厚く行い、創業当初から従業員の社会保険加入100%を実践し、安心して長く働くことのできる職場をめざしてきました。

私が経営に携わるようになった時期は、バブル崩壊直後の非常に厳しい時代でした。武士が一か所の領地を守り抜く「一所懸命」の思いで、適正な警備料金を確保し教育と福利厚生の充実を図り、お客さまの評価を勝ち得て現在につながっています。

<<座右の銘は何でしょう>>

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」。事業が順調な時ほど、人の話を謙虚に聞くようにと先代から言われ、心に留めています。従業員、お客さま、業界内外の方々の話に耳を傾けます。いわゆる“悪口”は案外、当たっていることが含まれるものです。自社や自分にとって“耳の痛い話”をしっかりと聞いて改善や向上のヒントをもらいました。

講師は毎日が勉強です。新しい情報を吸収し、より魅力的な話し方を模索して「教える引き出し」を増やさなければなりません。これは若手もベテランも同じです。講師の道にゴールはありません。