視点
SNS詐欺2025.06.11
急増する被害防ごう
「SNS(ネット交流サービス)型特殊詐欺」の被害が急増している。各地で開かれた警備業協会の総会では、来賓として参加した警察関係者の多くが状況を報告し注意を呼び掛けた。
警察庁は5月、2024年に発生したSNS型特殊詐欺の被害を公表。一年間の被害額は1271億円で、前年の3倍近くに拡大した。還付金詐欺など電話を使う特殊詐欺の被害額は719億円で、それよりはるかに多い。電話型の被害者は高齢者が多いが、SNS型は30代〜60代を中心に幅広く、被害拡大の要因となっている。
SNS型詐欺には2つの手口がある。一つは「投資詐欺」。フェイスブックやインスタグラムなどに著名人をかたった広告を掲載し、LINE(ライン)に誘導する。儲け話を持ち掛けて投資資金を入金させるやり口だ。
もう一つは「ロマンス詐欺」だ。マッチングアプリなどで外国人を名乗る異性と知り合うよう仕向け、恋愛感情を抱かせる。「会いに行くから航空券代を振り込んでほしい」などとかたって入金させる。被害者は家族に知られることや世間体を気にして被害届を出さないケースも多く、実際の被害件数は計り知れないという。
社会安全産業として警備業にできることはないだろうか。各地のATMでは警備員が不審な振り込み行為を確認し、声を掛けて被害を未然に防いでいる。今後は犯罪の導入部でも防止を図りたい。例えば、各警備会社で従業員とその家族に詐欺の最新の手口を周知したり、警察と連携した地域住民への広報活動の実施などだ。
山梨警協は5月に開いた総会後、県警の管理官が講師を務め「特殊詐欺被害防止」をテーマに研修会を開いた。犯人と被害者の電話のナマのやり取りを公開したり事案を紹介して注意を促した。
神奈川警協の総会では県警が県警公式アプリ「かながわポリス」を紹介。特殊詐欺の発生情報を画面の地図上で確認でき、期間を指定して過去の発生状況も確認できるなど最新情報をつかめることからダウンロードを勧めた。
最近では大手警備会社になりすました不審電話やメール、偽ウェブサイトなども確認されている。警備業の社会的信頼を悪用する卑劣な犯行だ。社会問題となっている特殊詐欺に業界全体で向き合う必要がある。
【瀬戸雅彦】
広報動画2025.06.01
警備員は安全守る「主人公」
「静かなヒーロー」――。これは全国警備業協会の特設サイトで公開されているプロモーション動画のタイトルだ。前編は4月2日、後編は5月7日から公開され、スマートフォンなどで手軽に視聴できる。
警備業の魅力を業界の内外に発信する広報啓発活動として、全警協広報プロジェクトチームが制作した。都道府県警備業協会や加盟員に向けて積極的な動画の活用、周知を呼び掛けている。
慢性的な人材不足を背景として複数の警備業協会、警備会社が求職者に向けたウェブ動画を制作してきた。その多くは、実際の警備員が登場して業務について説明するスタイルだった。
「静かなヒーロー」は、NHKのドラマや映画、舞台で活躍中の俳優陣が、ベテラン警備員、警備員になろうとする青年などを演じている。
主人公は、娘の誕生をきっかけに警備の仕事に就き、経験を積んできた。「日常の安全と安心をつくる職業」に誇りを持っている。美術館の警備では、来場者に丁寧に対応し事故の芽を摘む。部署異動で交通誘導警備の教育担当となり、夜間の工事現場を巡回。新人警備員に対しては、仕事のやりがいを飾らぬ言葉で語り、内に秘めたプライドを打ち明ける。
持ち場の安全安心を守り続ける警備員は「静かなヒーロー」であることが、じんわりと伝わってくる短編ムービーだ。“街で警備員を見かけるが、どのような仕事をしているか知らない”という人たちに、また、警備業界で働いている人や新たに警備員として働こうとする人に見てほしい。
一般に警備員は、歩行者やドライバーに“協力をお願いする”立場で業務を行っている。警察官と違って法的な権限は持っていない。警備員の存在を軽んじる相手からの暴言など、カスタマーハラスメントに直面する場合もある。
しかし、担当エリアの安全に関することなら、警備員一人ひとりが現場の主人公。誇りを胸に業務を遂行することで人々や社会の安全安心は守られ、社業と業界の発展につながる。
警備員のために、経営者のさらなる取り組みは重要だ。手厚い教育訓練によるスキルアップ、処遇改善、働きやすい職場づくりなどを推進することで、より多くの「静かなヒーロー」が育成され、定着するに違いない。
【都築孝史】