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視点

ドローン警備2025.07.01

一等操縦士を育てよう

警備業界の人手不足や警備員の作業効率や安全性向上の一助として交通誘導や監視カメラへのAIシステムの導入、警備ロボットの配置が進んでいる。ドローン(無人航空機)による上空からの警備についても国が「空の産業革命」として推進している。

政府は2015年から中央省庁や民間企業や団体による官民協議会を開催し、警備を含むドローンの商業利用を拡大する制度設計を進めてきた。24年には作業工程表「空の産業革命に向けたロードマップ」が2年ぶりに更新された。工程表にはドローン警備の実用化に向けた24・25年度の取り組み項目に「雑踏警備強化のため、機材の整備等を推進」「機材の耐風性能・防水性のさらなる向上」などが盛り込まれた。

官民協議会のメンバーでもある全国警備業協会は5月16日、加盟企業向けにウェブセミナーを開催した。テーマは「警備業におけるドローンの活用の実際と制度動向」。ドローンビジネスの市場や警備分野での活用など6項目を解説する内容で、約300人が聴講した。聴講者アンケートでは、7割が「将来のドローン活用を考えている」と回答する一方、「現在、ドローンを活用していない」は92%だった。

実際にドローンを導入している警備会社はごく一部。大手警備会社による重要施設の巡回やインフラ設備の点検、災害支援協定に基づく被災状況把握のほか、地方の中小警備会社による工事現場の空撮などにとどまっている。

ドローン警備が進まない一因は、市街地でのドローン飛行「レベル4飛行」に欠かせない国家資格「一等無人航空機操縦士」の資格者不足だ。一等操縦士は全国でも1000人ほど。物流など他分野でも普及の足かせになっている。

取得には高額な講習費や長時間の訓練が必要で、中小警備会社にとって負担は軽くない。警備員も不足している状況で「新たな投資はできない」と参入をためらう経営者も少なくないだろう。

ただ、見方を変えれば、ドローンは人材確保の突破口になり得るのではないか。一等操縦士を育成しドローン警備を推進することは、若者の警備業に対する関心を高めることにもつながる。新しい技術の担い手が加わることで、さらに魅力的な警備会社が増えることを願っている。

【木村啓司】