視点
労働環境整備2025.07.21
働く人をより大切にする
6月の全国平均気温は明治時代に統計が始まって以来、最高を記録した。日本の夏は年々長くなっているという。「危険な暑さ」「災害級の暑さ」に備え、警備員の熱中症を防ぐ対策を強化徹底しなければならない。
熱中症対策とともに、企業が働く人の心身の健康に配慮して労働環境の整備を進めることは、質の高い業務の安定的な提供や定着促進に結び付くものだ。
全国警備業協会の2025度事業計画では、労働環境の整備に関して「サングラス着用ガイドライン」の普及啓発、「座哨警備」の在り方を検討することが盛り込まれた。
同ガイドラインは、猛暑日が増え紫外線が人体に及ぼす影響が懸念される中で警備員の目を保護し、視認性を確保して安全に業務を遂行するよう策定された。「品位を損なわない実用的なもの」と明記した上で、サングラスの必要性を警備業者がユーザーに説明し理解を促すことも呼び掛けている。
警察官や消防職員、列車の運転士、バスの運転手、郵便配達員などに勤務時のサングラス着用を認める動きは広がっている。ガイドラインは警備員が着用しやすいよう後押しするものだ。
座哨警備は、現場の状況に応じ警備員が椅子に腰掛けて警戒を行う。全警協の実証実験によると座哨は、立哨と比べて血圧や心拍数の上昇を抑え、ストレス値も軽減されることが明らかになった。
厚生労働省のサイトでは、各業種の「立ち作業の負担軽減対策」事例を公開中だ。この中で、座哨警備を実践する山形県の警備会社の取り組みが紹介されている。
炎天下、サングラスの着用を推奨し、現場の状況によっては座哨を取り入れて足腰をいたわる。それは企業が警備員を今まで以上に大切にしようとする試みとなる。
働く人に掛かる負担の軽減は、さまざまな業種で人材確保を背景として進められてきた。酷暑、大雨、酷寒など厳しい就労環境で業務を行う警備員のために経営幹部は、現場の声に耳を傾け、働く人の目線から職場を見直して、より効果的な装備品の検討や導入を進めることが欠かせない。
従来の取り組み推進や新しい試みによって、多くの企業が職場環境の改善に注力し「警備業は働く人が大切にされている業界」といったイメージが社会に一段と広まってほしい。
【都築孝史】
行動宣言2025.07.11
「仲間と連携」広げよう
警備業界で存在感を増している青年部会には「行動宣言」というものがある。「常に時代の最先端に立ち、柔軟な発想と情熱をもって、警備業界の発展に率先して尽力する」「全国の青年部会の仲間と連携を強め、切磋琢磨し、自由闊達な意見交換を通じ、警備業の将来あるべき姿を追求する」「警備業の魅力を内外に発信していく中心的役割を担う」――の三つからなり、2023年に開かれた全国青年部会長会議で採択された。
埼玉県警備業協会青年部会では、「ゼロからイチを生み出す」(長谷川功一部会長)を掲げ、独自の活動を行っている。一例として「闇バイト」にいち早く着目。若者に注意を呼び掛けるオリジナルポスターを23年に作成し、埼玉県内の大学や高校に配布した。B2判のポスターには、犯行グループのイメージや闇バイト関連の文字を入力したスマートフォンの画像を配置。背景色を黒にすることで闇バイトの危険を訴えた。
評価の高いポスターには、作成者である「埼玉県警備業協会青年部会」と、協力した「埼玉県警察」の表記がある。同青年部会ではこの部分を全国各地の青年部会、警察の表記に変えて活用してもらうことを提案している。行動宣言にある「仲間と連携」を具現化するものだ。
同青年部会では、警備業による闇バイト対策を推し進めたいと今年、女性講談師とともに「講談」を作り上げた。実例をもとにしたストーリーとプロの話術には聞く人々を引き込む力がある。ポスターと同様に各地の青年部会に、この講談の活用を提案している。
「仲間と連携」では既に事例がある。埼玉警協青年部会が企画して2月に開いた「DX体験セミナー」を、鹿児島警協青年部会が5月に同じ形式で開いた。出展した3社のブースを回り、警備業務のDX化を体験した参加者からは、貴重な機会になったという声が聞かれた。出展各社の協力でこのセミナーも、各地の青年部会への横展開が可能になっている。
「いい意味で自由にやっている」(長谷川部会長)という埼玉を一つのモデルとして、これまでにない活動が生み出され、連携が広がっていくことを期待したい。青年部会が活動を競い合うような「切磋琢磨」は必ずや、警備業界のさらなる活性化につながっていく。
【伊部正之】
ドローン警備2025.07.01
一等操縦士を育てよう
警備業界の人手不足や警備員の作業効率や安全性向上の一助として交通誘導や監視カメラへのAIシステムの導入、警備ロボットの配置が進んでいる。ドローン(無人航空機)による上空からの警備についても国が「空の産業革命」として推進している。
政府は2015年から中央省庁や民間企業や団体による官民協議会を開催し、警備を含むドローンの商業利用を拡大する制度設計を進めてきた。24年には作業工程表「空の産業革命に向けたロードマップ」が2年ぶりに更新された。工程表にはドローン警備の実用化に向けた24・25年度の取り組み項目に「雑踏警備強化のため、機材の整備等を推進」「機材の耐風性能・防水性のさらなる向上」などが盛り込まれた。
官民協議会のメンバーでもある全国警備業協会は5月16日、加盟企業向けにウェブセミナーを開催した。テーマは「警備業におけるドローンの活用の実際と制度動向」。ドローンビジネスの市場や警備分野での活用など6項目を解説する内容で、約300人が聴講した。聴講者アンケートでは、7割が「将来のドローン活用を考えている」と回答する一方、「現在、ドローンを活用していない」は92%だった。
実際にドローンを導入している警備会社はごく一部。大手警備会社による重要施設の巡回やインフラ設備の点検、災害支援協定に基づく被災状況把握のほか、地方の中小警備会社による工事現場の空撮などにとどまっている。
ドローン警備が進まない一因は、市街地でのドローン飛行「レベル4飛行」に欠かせない国家資格「一等無人航空機操縦士」の資格者不足だ。一等操縦士は全国でも1000人ほど。物流など他分野でも普及の足かせになっている。
取得には高額な講習費や長時間の訓練が必要で、中小警備会社にとって負担は軽くない。警備員も不足している状況で「新たな投資はできない」と参入をためらう経営者も少なくないだろう。
ただ、見方を変えれば、ドローンは人材確保の突破口になり得るのではないか。一等操縦士を育成しドローン警備を推進することは、若者の警備業に対する関心を高めることにもつながる。新しい技術の担い手が加わることで、さらに魅力的な警備会社が増えることを願っている。
【木村啓司】