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警備業ヒューマン・インタビュー2025.07.01

髙木雄太さん(キステム)

「選ばれる」講習に

<<18歳の時、王子警備企画(東京都、2013年にキステムと合併)にアルバイトで入り、警備の仕事を始めました>>

アルバイトは学費を稼ぐためです。新任教育で警備業法や憲法、刑法といった法律が出てきて、衝撃を受けました。大学では法学部に進んだので、勉強とつながりがあると思い興味が湧きました。

警備の現場は主に交通誘導でした。年齢や経験もさまざまな警備員の方々と出会い、いろいろなアドバイスを受けました。警備の仕事がうまくできなくて、辞めようと思った時がありましたが、「ここで君は働いてきた。ほかの仕事に移ると、また一年生になるのだよ。もうちょっと頑張ってみないか」と声を掛けてもらったことを覚えています。

その後、片側交互通行の現場で交通誘導をしていた時に、遠くにいたもう一人の警備員に大きな声で合図をしたことがあります。電柱に登って電話工事をしていた方がその日、「すごく大きな声で、大きい動作で合図をして、頑張っていたね。良かったよ」と言ってくれました。私自身、「こうやってやればいい」と気付くことができました。警備のアルバイトでは、いろいろな方に救われ、「生かされてきた」と思います。

<<大学卒業後、アルバイト先に正社員で入社しました。現在はどんな仕事に携わっていますか>>

一つは「安全衛生管理」です。社内や警備現場の状況をチェックしています。現場では安全な場所に立って警備をしているか、休憩をしっかり取っているかなどを確認していて、今の季節は水分や塩飴を持って現場に行っています。

もう一つは「教育研修」です。新任・現任教育や、検定資格取得を目指す警備員の送り出し教育を担当しています。送り出し教育は事前講習の2か月前から始めていて、実技では私がやってみせた上で、一緒にセリフや動作を繰り返しやっています。学科では模擬問題を解いてもらっています。

送り出し教育を受けることで、安心して事前講習、本講習(試験)に臨むことができると思います。そして検定資格はステップアップを可能にするものです。

<<埼玉県警備業協会で2008年から、特別講習講師を務めています>>

埼玉警協が講師を公募していたことがきっかけでした。私自身、いろいろな検定資格を取得してきましたが、講習で指導していただいたおかげです。講師の方々の思いを、私が講師になってつないでいきたいと思いました。

今は、ほかの登録講習機関ができて、講習を受ける人が選べる時代になりました。「埼玉警協で講習を受けて良かった」と思ってもらえるように、丁寧な接遇、分かりやすい講義・訓練を今まで以上に心掛けていきたいです。

埼玉警協では熱中症対策として、6月から9月にかけ、Tシャツやポロシャツなどの軽装で事前講習、本講習を受けられるようにしました。今までは各社規定の制服を着なければなりませんでした。こうした取り組みが、選ばれる講習につながると思います。

<<社会保険労務士の肩書を持っています>>

私は一般企業に勤務しながら社労士の仕事を行う「勤務社労士」です。社内向けに、関係法律の改正について解説したり、書類の書き方に関する支店や営業所からの問い合わせに対応したりしています。埼玉警協の研修会で講師をしたこともあり、今後も法改正の時などにやらせていただければと思っています。

<<警備業界では課題が山積しています。提言はありますか>>

正しい会社運営の担保とするためにも、警備業法を改正して、警備業協会への加盟を義務付けた方がいいと思います。また、採用競争に負けないように、採用までの手続きの時間を短くする必要があるのではないでしょうか。

働き方を変える必要性も感じています。道路に人が立って警備をしている限り、走ってくる車にひかれる確率はゼロにはなりません。車が走行するところには警備システムを置き、警備員がそれを安全な場所で操作するという交通誘導警備が広がってほしいです。

警備員の収入が低いというのは「もはや過去の話」です。資格を取得して真面目に勤務している人は安定的な収入を得られますし、一定の資産形成ができます。そういったPRを一層していかなければなりません。

<<オフはどのように過ごしていますか>>

昇段を目指して、会社帰りに杖道、居合道の稽古に通っています。休みの日に関東近郊の温泉地へ家族で出掛けることが増えました。