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警備業ヒューマン・インタビュー2025.08.21
長谷川朋弘さん(福井県警備業協会会長 第一警備保障代表取締役)
課題解決に役立ちたい
<<福井県警備業協会の第13代、10人目の会長に就任しました>>
最年少の都道府県会長です。全国警備業協会では教育委員会に所属していますが、他県の先輩会長から教わったことも合わせて福井に持ち帰り、加盟会社の課題解決に役立てていきたいです。
福井は日本総合研究所発表の「都道府県幸福度ランキング」で12年連続総合1位の県です。教育、仕事、生活分野の項目が突出して高く、生活安全産業として県民の安全・安心な暮らしに引き続き寄与していくことが警備業界、警協加盟会社に与えられた社会的な役割であると考えます。
加盟会社の皆さんには加盟意義を感じてもらうため、業務に役立つ各種事業を通じ警協の魅力を一層高めていかなければなりません。一方で人手不足は福井も深刻です。警備員の処遇と労働環境を改善するには原資が必要で、取引先との価格交渉が重要です。特に、省人化や業務の効率化につながるDXを進めるには、各社で経営や業務の中核を担っている若い方々の協力が欠かせません。加盟各社の賛同を得た上で、次の定時総会をめどに当協会に青年部会を設立できるよう準備してまいります。
<<青年部会にはどのような活動を期待していますか>>
DXをテーマとする「研修会の企画」をはじめ、県民の安全・安心に貢献しながら加盟会社の顔が県民に見える「児童の登下校見守り活動」、警備業の魅力を伝える「就職説明会」などに取り組んでもらいたいです。北陸・東海の中部地区など他県青年部会との連携、災害被災地への支援活動にも期待しています。
<<北陸新幹線の延伸は県内警備業界の人材確保に影響はありましたか>>
昨年3月、県内に新幹線駅が4駅同時に開業した際、記念イベントや各駅構内の警備を警協加盟18社が対応しました。警協理事会社が各駅で幹事社を担当するなど、連携して業務を完遂しました。県内外の皆さんに警協加盟会社の高水準の警備を提供できたことで、参加した加盟会社の経験は「レガシー」として、県内の花火大会やマラソン大会など人手を要するイベント警備に応用できると確信しています。
とはいえ、人材確保のためには各社がさらなる職場環境や処遇などの改善に取り組まなければなりません。イベントや交通誘導の現場は屋外で、過酷な暑さや寒さに加え、トイレや更衣室が十分に確保されていない現場もあります。
<<自社では職場環境の改善のため、どう取り組んでいますか>>
ファン付きベストや防寒着の導入などの暑さ・寒さ対策、交代要員の配置などは以前から取り組んでいます。
加えて現在、交通誘導警備の現場に仮設トイレと車両が一体化した「トイレカー」を導入できないか検討しています。他社のニーズも踏まえ、どのように展開できるか探っているところです。
<<会社の代表に就任して丸10年が過ぎました>>
当社は私が生まれた年に祖父が創業しました。警備業と清掃業を手掛けています。私は大学を卒業し、大阪で医療資機材を扱う会社勤務などを経て入社しました。
交通誘導、雑踏、施設、巡回の警備員指導教育責任者の資格を取得し、隊員教育を担当し、昨年他界した前代表の父からは経営を学びました。
当社では警備品質を保つため、抜き打ちの現場パトロールを行い「評価シート」を作成し隊員を指導しています。長く勤務し当社に貢献してくれている隊員にはシートを活用し、所作や礼儀作法などを自己流にアレンジすることがないよう丁寧に説明しています。
清掃やビル管理業務は現在、分社した関連会社「エコビルズ」が手掛けています。同社は「ケイビーズ」というアパレルブランドも運営しています。薄暮時の交通事故撲滅を目指し、若者に反射材を普及させるため、デザイン性と機能を兼備した虹色に光る反射材を用いたバッグやレインコートなどを製造しています。反射材は地元企業が特許を持つ「オーロラリフレクター」を用いています。
<<座右の銘は何ですか>>
福沢諭吉の『学問ノススメ』にある「現状維持は衰退だ」が気に入っています。当社に入社すると、先代が掲げている社訓が「知恵のない者は汗を出せ、汗を掻かない者は反省し善処せよ」でした。言わんとするところは同じで「血は争えない」と感じました。
私はさらに「困ったときは助け合い」という言葉も付け加えています。警協でも会員同士助け合いながら発展していきたいです。
警備業ヒューマン・インタビュー2025.08.01
北豊秋さん(和歌山県警備業協会会長 紀州熊野綜合警備代表取締役)
より魅力ある業界めざして
<<和歌山県警備業協会の第7代会長に就任されました>>
私は7年ほど前から理事として協会運営に携わってきました。先輩方とさまざまな活動に取り組む中で「警備業界は厳しい課題に直面しながらも、前へ進もうとしている」と感じたものです。協会活動を通じ、多くの学びや交流の機会に恵まれました。
今後の抱負は、協会と業界に恩返しの思いを込め、雑巾掛けを行う気持ちでコツコツと取り組みたいと決意を新たにしています。
加盟社の皆さまに向けては、タイムリーな情報発信を行うなど社業の発展を側面から支援する取り組みを関係者一丸となって進めます。加盟社の新規加入を促進して協会組織の充実強化を図り、今まで以上に魅力のある協会・業界をめざしていきます。
大阪・関西万博の開催に伴い、和歌山県内にも多くの方々が訪れています。インバウンドも増え人流が活発になる中で、社会の安全意識は高まって警備業のニーズは多様化していくと考えます。また、公共工事設計労務単価の上昇傾向は、警備料金交渉の“追い風”となるものです。
しかし依然として警備業は複数の課題を抱え、厳しい環境に取り巻かれています。
<<人材確保は慢性的な課題となっています>>
警備員不足を解消する上で処遇改善、福利厚生の拡充は急務です。その原資となる警備料金の確保は不可欠であり、全国警備業協会による各種の施策、警備料金に関する情報発信が行われ、連動する形で当協会も経営者研修会、料金セミナーなどを開催してきました。
猛暑や酷寒の中で懸命に使命を果たそうとしている警備員の皆さまのために、引き続き警備料金をめぐる課題と向き合い、今までと異なる新たなアプローチも模索していきます。
人材確保と適正料金の課題は、個社の努力だけで乗り越えることには限界もあり、業界一丸で物事を進めることが大事です。
企業それぞれが法令順守の徹底はもとより、質の高い業務を安定的に提供してユーザーからの評価、地域社会の信頼をより高めてほしいと思います。特に警備業務検定の資格者の育成は、評価や信頼の向上に結びつくものです。
<<特別講習の現況はいかがでしょう>>
当県の交通誘導警備業務2級の合格率は、上昇傾向にあります。以前は50%前後でしたが昨年11月の特別講習では59.4%、今年3月の特別講習は68.3%の好結果が出ました。
これは主任講師をはじめ講師陣による努力の賜物です。社業と並行して教育に情熱を燃やし資格者を送り出すことは、県内警備業発展の原動力となってきました。
一方で、講師不足は数年来の課題です。次世代を担う新人講師を発掘して育成することは業界の将来に極めて重要であり、今後も加盟社の皆さまに講師候補者を積極的に出していただけるよう呼び掛けていきます。
<<全警協・労務委員会の委員にも就任しました>>
7月に「警備業全国安全衛生大会」が都内で開催されて初参加しました。「労働災害ゼロ」に向けた大会宣言が採択された後、労務委員会の皆さまと喫緊の諸課題について意見交換を行う機会があり非常に有意義でした。
今後も情報を共有し視野を広げて、自県の協会活動に役立てたいと思っています。
<<社業では「紀州熊野綜合警備」の代表を務めています>>
和歌山県内や三重県内で交通誘導警備、イベント警備を行って18年になります。
人材確保は悩みの種ですが、会社の長期的な発展を視野に若手人材を現場のリーダーに育成していく取り組みは大事です。若い求職者に警備業を選んでもらうには処遇改善に加え、業界のイメージアップも必要だと思うのです。
当社は本州最南端に位置する串本町にあります。国内初の民間ロケット発射場「スペースポート紀伊」が開設し、串本町は「ロケットの町」としてメディアに登場することが増え、全国から見学ツアーの方々が訪れています。
<<リフレッシュはどのように>>
釣りが趣味で、熊野灘に注ぐ古座川の清流で鮎、うなぎを釣るひと時は息抜きになっています。
刃物を研ぐのも好きで、ご近所の方に頼まれて包丁を研いだところ近隣の奥さま方から「うちの包丁もお願いします」と次々に依頼が舞い込み、年に200本ほど無料で研いで喜ばれています。ささやかですが、地域社会の皆さまが警備会社に親しみを感じるきっかけになるなら嬉しく思います。