視点
管制システム2025.08.01
「警備業DX」の急先鋒
警備業界で「管制システム」の導入が進んでいる。かつては「警備員の上・下番報告を携帯電話からの打刻方式にして集中する電話対応から管制員を解放すること」が導入目的だった。そして今――。
管制システムを提供する企業は切磋琢磨して新機能を開発。導入メリットが一層高まった。例えばスマートフォンの画面上に現場管理者の手書きサインをもらいメール送信できる「電子日報」や、勤怠システムと連動した「発注書・請求書の自動作成」「給与自動計算」などの機能だ。いずれも現場と管制、バックオフィスの手間と経費を削減する。
最近発表された機能の一つに「体調報告」がある。straya(ストラーヤ)の管制システム「くもかん」に追加された機能だ。「熱中症対策が6月から強化され、体調不良の警備員が現場に出るリスクを事前に把握したい」というユーザーの声に応えたもので、使い方はこうだ。
警備員はスマホアプリで「自宅出発」を報告する際に表示される「体調報告画面」から「体調の良し・悪し」を選択。「悪い」を選んだときは症状を入力する。管理者は事前に警備員の体調を把握し、適切な配置を組んで熱中症発生のリスクを減らすことができる。strayaの渡辺拓也社長は「体調不良の警備員を早期にケアすることは長く勤めてもらう効果も期待できます」と語る。導入効果は今や警備員の健康管理や定着率にまで及んでいる。
本紙はこれまで8社の管制システムを記事紹介してきた。取材で感じたことは、システムの機能以上にメンテナンスやカスタマイズなど運用面でのサービスが大切であること。システムが本稼働し使い慣れていくうちにユーザーのリテラシー(能力)が向上、機能拡大などの要望が出るためだ。
管制システム「ShiftMAX(シフトマックス)」を10年以上前に開発、提供を続けるKYODOU・澤橋秀行社長は「お客さまの困り事を解決するためには技術力の他に経験値が必要。当社ではサポート力を強化する社員教育に一層力を入れたい」と話す。
スマホが普及し「警備業DX」の急先鋒となった管制システム。今後はAIを活用し最適な配置を提案する「自動配置」などが実現される見通しだ。本紙は引き続き動向をお伝えしていく。
【瀬戸雅彦】