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クローズUP

ALSOK 商号を変更2025.08.01

発表会に松山ケンイチさん、伊調馨さん

綜合警備保障からALSOKに――。7月16日、創立60周年を迎えたALSOK(東京都港区、村井豪代表取締役グループCEO兼CTO)は、商号を「ALSOK株式会社」に変更した。2003年から展開してきたコーポレートブランド「ALSOK」が正式に社名になった。同社グループの警備、FM(ファシリティマネジメント)、介護などの制服を新調し、各種車両のデザインも刷新。同日、社名変更発表会を本社内で開催した。

同社は「社名変更を通じて、私たちは警備にとどまらず、多様な事業領域において安心をお届けできる存在として、さらに進化してまいります」としている。ブランドスローガンは、これまでの「ALways Security OK」から「ALwayS OK」に刷新した。

発表会では、同社イメージキャラクターとしてCMに出演中の俳優・松山ケンイチさんが「機械警備隊員」の新制服を着用して登壇。「僕が一番最初に着させていただいた。着心地が非常に良く、機能性も優れています」と話した。

トークセッションでは、松山さんとレスリング女子で五輪4連覇を達成したALSOK社員の伊調馨さんが「挑戦と安心」をテーマに、思いや経験を語った。

発表会の冒頭、同社は次のように説明した(要旨)。「1965年の創立以来、綜合警備保障は『ありがとうの心』と『武士の精神』を経営理念として邁進してきました。時代の変化とともに領域を広げ、多用なリスクに対応する企業としてブランドスローガン『ALwayS OK』のもと取り組んでいきます」。

テイケイ「HMD」を運用2025.08.01

万博「日本館」警備

テイケイ(東京都新宿区、影山嘉昭社長)は大阪・関西万博の日本館の警備で、自社で開発した「ヘッドマウントディスプレイ(HMD)」を運用している。片方だけのメガネのような形状で、警備業務に必要な情報がリアルタイムで画面に表示される。日本館に配置の全警備員が装着している。

HMDは情報伝達の迅速・正確化を目的に開発された。業務に応じて被るヘルメット、制帽、キャップで固定し、胸に装着したウェアラブルカメラとセットで使う。

万博警備では、日本館内の防災センターからパソコン操作で送信された要人や不審者の画像、文字情報による要人の到着予定時刻の変更、館内の混雑予測などを画面に表示。無線機でのやりとりで起こる「聞き直し」の手間を省き、警備業務の効率化を実現した。駆け付け対応などの緊急時に、透明な画面を電動スライドで覆うブラインド機能も備える。また、警備員がウェアラブルカメラで撮影した映像を防災センターに送ることができ、情報共有を素早くできる。

HMDは現在、日本館のみで運用しているが、他の警備業務に広げていく予定。テイケイの開発担当者は「現場の意見を吸い上げて改良を重ねていきたい」と話している。

HMDの形状は漫画「ドラゴンボール」登場のスカウター(相手の戦闘力を測る装置)に似ていることから、SNSなどで話題になっている。

府県が活動計画を報告2025.08.01

近畿地区連総会

近畿地区警備業協会連合会(池田博之会長=大阪警協会長)は7月18日、京都市内で2025年度の「総会」を開いた。各府県協会が今後の活動予定を報告するとともに、抱える課題について意見を交わした。

地区連総会には、近畿2府4県の警協会長と専務理事、開催地・京都警協から西野公宏氏(太陽保安警備)と大島史朗氏(コトナ)の両副会長が出席した。ほかに全国警備業協会の黒木慶英専務理事と総務部の小澤祥一朗次長、警察庁近畿管区警察局広域調整部の横田誠治広域調整第一課長、地元京都府警からは谷正徳生活安全部長の各氏が来賓として参加した。

池田会長は「この時期、京都大阪では大規模な祭礼が続きます。警備員の熱中症対策には十分に気を付けてください」と、6月に施行された熱中症予防対策強化を柱とする労働安全衛生規則を念頭に、連日猛暑の中で業務に当たる警備員を気遣った。

全警協・黒木専務理事は、昨年に続き警備業に関する事項が盛り込まれた、政府が6月13日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太の方針)と「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」に言及。「全警協と全国警備業連盟の働き掛けにより実現した。主な内容は国や地方公共団体などの官公需での“価格転嫁”の推進。自治体に骨太や実行計画を示し、警備料金への(労務費などの)価格転嫁を実現してほしい」と呼び掛けた。

24年度事業や収支決算報告、25年度事業の説明に続き、2府4県の警協専務理事が活動計画などについて次のように報告した。

▽滋賀警協 9〜10月に国民スポーツ大会(国スポ)と全国障害者スポーツ大会(障スポ)が県内で開催されることから、加盟各社が両大会の警備に取り組む。

9月に県と県建設業協会が開催する「建設フェスタ」では、青年部会が中心となって活動する。

▽大阪警協 初の試みとして高卒予定者の「就職セミナー」に青年部会が主体となって参加する。

このほか各警協からは、▽各種教材の全警協ホームページからの購入(ECサイト)の利便性向上▽特別講習の学科科目のeラーニング▽全警協と警察がそれぞれ行っている「実態把握調査」と「各種調査」の一本化――など全警協や警備員特別講習事業センターへの要望・意見も寄せられた。

特集ワイド 価格転嫁、道半ば2025.08.01

中小警備会社をはじめとする企業にとって、労務費などコスト上昇分を適切に取引価格へ転嫁し、賃上げや職場環境改善の原資を確保することは大きな経営課題となっている。国による直近の調査では平均の価格転嫁率が初めて50%を超えた一方、全く転嫁できていないケースも少なくなく、進ちょくは道半ばだ。行政や業界団体による一層の支援や、受注側の戦略的行動が期待される。

直近の転嫁率52%

中小企業庁など国は2021年9月から、コスト上昇分を取引価格に転嫁するための環境整備として、9月と3月を「価格交渉促進月間」に定めている。価格改定を半期に一度、10月と4月に行う企業が比較的多いことが背景にある。月間後には業務を受注した中小企業を対象に「フォローアップ調査」を行い、価格交渉・転嫁がどの程度できたかについて把握している。

8回目の月間となった25年3月終了後の調査では、抽出した30万社にアンケートを送付。24年10月〜25年3月における発注企業(最大3社分)との価格交渉・転嫁の状況について尋ねたところ、6万5725社から回答があった。回答率は21.9%で、前回(24年9月の月間後調査)の17.1%を上回った。

調査結果によると、価格交渉が行われた割合は、前回から2.8ポイント増の89.2%。発注企業からの申し入れで価格交渉が行われた割合も増え、3.2ポイント増の31.5%となった。

コスト上昇分をどれだけ取引価格に転嫁できたかを表す「価格転嫁率」は、「10割」25.7%、「9〜7割」21.3%、「6〜4割」11.1%、「3〜1割」25.0%で、「転嫁できなかった」16.9%。平均の価格転嫁率は前回を2.7ポイント上回る52.4%となった。

「価格交渉が行われたものの全額転嫁に至らなかった場合」の発注企業からの説明については、「納得できる説明があった」61.8%、「説明はなかった」24.2%、「説明はあったが、納得できる内容ではなかった」14.1%だった。

コスト別の平均価格転嫁率は、「原材料費」54.5%、「エネルギー費」47.8%、「労務費」48.6%。労務費の上昇幅(3.9ポイント)が最も大きかった。

調査結果を受けて中企庁は「価格交渉できる雰囲気がさらに醸成され、価格転嫁できた割合が増えている」とする一方、「転嫁できた企業と転嫁できなかった企業との二極化がみられる」としている。調査結果では回答企業からの声も紹介している。

中企庁は8月中に、調査で主要取引先として挙がった発注企業の価格交渉・転嫁への対応状況を公表する。

全警協リーフレット「適時更新」

全国警備業協会(村井豪会長)は、加盟会社に価格交渉で活用してもらうためのリーフレットを2024年2月に作成した。内閣官房と公正取引委員会が23年11月に「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を公表したことを受けたもので、「発注者は定期的に協議の場を設ける」「受注者は情報収集して交渉に臨む」といった指針の要点や、政府公表資料に基づくコスト上昇率の一覧などを掲載している。警備業はコストに占める労務費の割合が業種の中で高い状況にある。

コスト上昇率の一覧は適時更新されている。現在のリーフレットをみると、25年3月から適用の交通誘導警備員の公共工事設計労務単価、同4月から適用の施設警備員の建築保全業務労務単価は、21年度適用との比較で25.2〜26.8%(全国平均)上昇。24年10月から適用の最低賃金は、20年度適用との比較で17.0%(同)上昇しており、価格転嫁の根拠を示す。

全警協によると、適正取引の手引きである自主行動計画の改訂(7回目)を9月中に行うことを予定している。計画のフォローアップ調査では加盟会社から「好事例」を聞き取っており、内容をホームページに掲載。契約料金アップを実現した企業の声として「適切な資料を用いて説明すれば、取引先から納得していただけることが多い」「『これはできない』と伝える勇気が社員を守るために必要」などを紹介している。

成功事例集を作成

埼玉県は「価格転嫁成功事例集」を作成している。事例集ではさまざまな業種の9例を紹介。取引先のカテゴリー別にアクションプランを策定したことや行政発出文書を活用した理論武装、付加価値と顧客満足度を同時に高めたことなどが価格転嫁につながったという。

専門家の伴走型支援を受けて「価格交渉しやすいサービス」(強みがある)、「難しいサービス」(強みがない・競合がある)に分類し、シナリオを準備して交渉したことによる成功事例も紹介している。

埼玉県は「価格交渉支援ツール」「収支計画シミュレーター」を全国の自治体で初めて開発するなど、価格転嫁の後押しに先進的に取り組んでいる。

下請法「取適法」に

改正下請法が先の通常国会で成立し、来年1月に施行される。

改正は約20年ぶり。「中小受託取引適正化法」(取適法)に名称変更するほか、親事業者を委託事業者に、下請け事業者を中小受託事業者に改める。下請けという用語をなくすことで発注側と受注側が対等な関係にあることを浸透させ、適正取引の推進を図る。

法改正では、現行で資本金規模のみとなっている適用基準に従業員数を追加。警備などサービス提供の委託では発注側が従業員100人超、受注側が100人以下の取引が対象となる。

取適法では、協議を行うことなく、一方的に取引価格を決定することを禁じる。現行でも「買いたたき」を違法としているが、該当する「著しい低価格」の算定に難しさがあることから、新たな禁止規定を設けた。