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警備業ヒューマン・インタビュー2025.09.01
金子慶太郎さん(愛知県警備業協会会長 セクダム代表取締役社長)
「会員のためか」自問自答
<<愛知県警備業協会の7代目会長に就任されました>>
私一人では何もできません。キャリアが豊富で優秀な5人の副会長とチームを組み、理事・監事の皆さん、専務理事・事務局長をはじめ事務局の方々の協力をいただきながら、協会を盛り上げていきたいと考えています。
現在、警備業界は深刻な人手不足や、進まない価格転嫁など、多くの課題を抱えています。常に「会員の皆さんのためになっているかどうか」を自問自答しながら事業を進めていきたいと決意しています。就任してまだ2か月余ですが、少しずつ活動を始めています。
最初に、労働安全衛生規則が改正され熱中症対策が6月から罰則付きで義務化されました。当協会では愛知労働局から講師を招き、企業に義務付けられる対策の具体的内容や対応手順について学ぶ研修会を開催しました。
また年2回発行している協会機関誌「SECURITY AICHI」のデジタル化の取り組みを広報委員会が中心となり開始しました。紙媒体からの移行は、作業負荷や経費の大幅削減につながることがわかり、2026年1月号から実現できればと考えています。
さらに、協会会員数は現在529社ですが、県内には警備会社が約800社あることから、未加入会社がメリットを感じ入会していただけるよう会員増強を図っていきたいと思います。
最後に、安定した収支の維持です。出費を抑えながらも会員のニーズがあれば思い切って資源を投入するという姿勢で、将来にわたって健全な収支を維持できるよう努めたいと考えています。
<<セクダムの代表取締役社長としても多忙な毎日です>>
当社は企業理念の中に「誠実」を掲げています。コツコツと誠実に仕事に向き合うことを信条とし、「拡大より継続」を重んずる経営を心掛けてきました。
また大手企業とは比較になりませんが、少しずつデジタル化の取り組みも進めています。当社の場合、給与計算のパッケージソフト以外は、全て自社開発の基幹システムで運用しています。上・下番報告の自動化を含む勤怠システムは数年前から稼働させており、今は請求書作成との連動を図っているところです。
一方、警備員教育のデジタル化も進めています。毎月の専任指導員の「現地指導」は品質向上に非常に有効で、なくてはならない作業ですが、現在はデジタルカメラや紙のチェック表を指導員が携帯して歩き、毎月膨大な紙の量を費やしています。それを「タブレット」だけで現地で写真、チェック表を一画面で完結できるようにし、メール通信でデータ保管する仕組みを作成中です。
他に年2回の「顧客アンケート」も、社員が手分けして手配りしていたのをデジタル化したことで、省力化に大きく寄与しています。
<<健康経営を推進しています>>
警備に携わる社員は高齢者の割合が高くなり、長く健康で勤務してもらうため、2023年に「愛知県健康経営推進企業」として登録、健康経営に取り組んでいます。社内で考案した身体をほぐす「セクダム体操」を推奨し、定期的に「セクダム労災(転倒防止)標語キャンペーン」を実施するなど、常に注意喚起して健康維持を呼び掛けます。転倒などの事故が発生したときはSMSで全社員に「事故速報」を流し、原因と対策を即時共有しています。
<<金子社長ご自身は、「リスキリング」を実践されました>>
私は58歳のときに学びへの意欲を感じて地元の大学院に入学し、60歳で修了しました。2年間の学生生活も有意義でしたが、卒業生の会に入会させていただき、幅広い職業の方々と交流を深めることができました。さらに声を掛けていただいて、大学で非常勤講師を前・後期の2コマですが約10年間務めました。若い皆さんに聴講してもらうことで新たな発見があり、大きな学びとなりました。
<<忙しい日々の中で、息抜きはどのように?>>
私は無趣味なのですが、強いて挙げるなら「食べ歩き」でしょうか。友人や周りの人から口コミで教えてもらった店に、妻と車で出掛けます。決して高価な食事ではなく、地域で愛されている「B級グルメ」が好みです。
<<警備業での長年の貢献が評価され「令和7年・春の叙勲」で旭日双光章を受章されました>>
すべて皆さまのおかげであり感謝申し上げます。都内での伝達式と皇居での天皇陛下拝謁にあたり「警備」という言葉を何度か耳にしたことが心に残っています。
私は警備業に携わって半世紀を超えましたが、多くの方々の努力で業界が発展を続け、こうして社会に認知されるまでになったことは感無量です。今後も引き続き、警備業からの受章者が続くことを願っています。