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警備業ヒューマン・インタビュー2025.09.21
阿部和弘さん(メイクスジャパン 代表取締役社長)
「地域の安全・安心」高度に
<<新潟県警備業協会青年部会(19社21人)の部会長を2023年2月の発足時から務めています>>
警備業のPRを行うことを、青年部会の活動として明確にしています。警備の仕事を地域に、もっと理解していただくためには、1社だけの努力では限界があり、一緒になって取り組むことが必要だと思っています。活動を重ねていくなかでコミュニケーションがよく取れるようになって、絆ができています。
青年部会には、他県の青年部会と情報交換ができるというメリットがあります。私自身、人手不足対策や熱中症対策などの知恵をもらっています。
<<10月4日にデンカビッグスワンスタジアム(新潟市)で行われるサッカーJ1・アルビレックス新潟のホームゲームで、新潟警協青年部会がPR活動に取り組むことになっています>>
新潟県警察本部、県防犯協会と一緒に、特殊詐欺への注意を観客に呼び掛けるほか、「警備の日」(11月1日)にちなんだPRを行います。15分間のハーフタイムにのぼり旗や横断幕を掲げ、約40人でピッチを一周する予定です。青年部会が発案し、実現することになりました。青年部会は統一感を出すため、ワイシャツ姿で、新潟警協の腕章を付けて歩きます。ガードくん(警備業マスコットキャラクター)の着ぐるみも参加することになっています。
青年部会にとっては一生に一度、あるかないかのこと。警察機関に協力できる業界であることや、安全・安心を「業」として担っていることをあらためて知ってもらえるようにしたいです。
<<警備業界に入ったきっかけは何だったのでしょう>>
私は山形県酒田市の出身です。酒田市内の百貨店に入っている総菜店でアルバイトをしていた19歳の時、百貨店の巡回警備に当たっていた人(40代)から「警備をやってみない」と誘われたことがきっかけです。総菜店ではお客さんから見える厨房のなかで、お寿司や天ぷら、揚げ物などをつくったり、パックして売り場に並べたりしていました。若さや、がむしゃらに働く姿を見て、声を掛けてくれたのかもしれません。警備の制服がかっこいいこと、規律を持って重要な仕事をしていることが印象に残り、やってみようと思いました。
アルバイトで警備会社に入り、1年半で正社員になりました。施設警備の仕事に携わり、従業員出入り口の管理や店内巡回がメインでした。あいさつをすると返してくれたり、「頑張っているね」と言われたりすると、うれしく思ったものです。
転勤を重ね、新潟では商業施設で隊長として働きました。保安警備に従事したこともあります。仕事をしていくなかで「自分で会社をやってみよう」と思い、31歳の時に独立しました。
新潟は東北地方にくくられることもあれば、北陸や関東に入ることもあります。事業をしていく上で面白いと思い、新潟で創業しました。仕事としてやっている会社が少なかった商業施設の保安警備や、イベント警備を中心にやっていくことにしました。
<<メイクスジャパンという社名には、どんな思いが込められていますか>>
英語表記(Make’S Japan)で社名の真ん中に「アポストロフィーS」を置いています。このSはスタッフやセキュリティー、シンシアリティー(誠実さ)の頭文字で、これらをメイク(創造)することを表しています。ジャパンと付けたのは、日本を創造するとか、そんな大それたことではなくて、日本のなかにこの会社があるということです。
<<10月19日に、創業からちょうど20年を迎えます>>
会社として20年の歴史をつくらせてもらいましたが、「これでいい」というのは全くなくて、まだ道半ばです。世の中が求めることは変わっていきますが、地域の安全・安心を高度にするために「警備会社はある」と思っていますし、警備員の人間力、ホスピタリティーの向上にさらに力を入れていきたいです。
縁あって入社していただき、仲間となって仕事をしている社員、そしてご家族に「メイクスジャパンに入って良かった」と思ってもらえる会社をこれからも目指していきます。
<<趣味はありますか>>
映画鑑賞です。映画館で何も考えないで、1時間半とか2時間、集中して見ることが好きです。普段と全く違う空間にいると、いろいろなことを忘れることができて、心がリセットされます。月2回のペースで映画館に行っていて、その時に面白そうな作品を見ています。
警備業ヒューマン・インタビュー2025.09.11
池端常雄さん(静岡県警備業協会会長 ティア警備取締役会長)
協会活動、積極参加を
<<静岡県警備業協会の第6代会長に就任されました>>
警備業は生活安全産業として大きく発展を遂げてきた一方で、警備業者は警備料金をめぐる問題や人材不足などの厳しい状況に直面しています。
こうした中、協会活動は一層重要です。当協会では近年、会員が集まって適正料金や人材確保についてざっくばらんに話し合う「明日の警備 大討論会」や、協会活動への参加が活発な会員の表彰などを行ってきました。より魅力ある協会づくりを進めるため関係者と方策を練っているところです。
静岡県は東西に長い地形で、会員は東部、中部、西部の3地区に分かれています。会員の皆さまが協会活動を契機に他の地区の会員と交流して、情報交換や人脈づくりを図ることは企業と業界の活性化につながる有意義なものと考えています。
私は30年にわたり協会活動に携わってきました。交通誘導警備の労働環境整備、警備料金問題の研究などに関係者と汗を流し意見を交わす中で、視野も交流も広がって、数々の学びや気づきを得ることができたと思っています。
協会に加盟しているメリットは、企業としての信用向上、業界情報の共有などがありますが、受け身にならずに積極的に協会活動に携わる過程で、さらなるメリットを手に入れていただきたいと願っています。
<<人材確保に向けた研修会を重ねています>>
8月に開いた経営者研修会では、ハローワークの担当官を招いて労働市場の動向から求人票作成のポイントまで詳細に解説していただきました。
7月に行った研修会は「あなたの会社を動画でPR」と題する初の試みでした。会員が自社のホームページなどで広報する際に役立つよう、映像の専門家を招いてスマートフォンの効果的な撮影方法や動画編集のコツを解説してもらい、参加者から好評でした。
動画をテーマとする研修を企画したのは当協会の青年部会です。これまでにも資格者配置路線をインターネットで確認できるマップの作成や、警察官と警備員の合同テロ対策訓練を撮影し広報動画を協会ホームページで公開するなど、デジタル分野に強みを発揮しています。若い感性とアイデア、行動力で協会活動をリードしてほしいと大いに期待しています。
昨今の警備料金問題については、公共工事設計労務単価の上昇や価格転嫁で上向きの傾向はあるものの、まだまだ厳しいと認識しています。あらゆる業種が人手不足の中、警備業に人材を呼び込むには適正料金を原資とする処遇改善を急がなければなりません。
適正料金と一体になるのは、質の高い警備業務の提供です。車を運転していて警備員の的確な誘導に感心することがあります。しかし時には、その立ち位置や誘導の仕方を見て思わず心配になる場合もあります。教育訓練のさらなる充実、技能向上は必須であり、特別講習で検定合格者が増えることは業界のレベルアップに直結するものです。
資格者育成に取り組む特別講習講師チームの役割は極めて大きく、情熱あふれる指導は県内警備業の発展を支えていると思います。
<<社業では「ティア警備」(磐田市)の会長を務めています>>
弊社は静岡県西部で主に交通誘導警備を手掛けて35年目になります。創業のきっかけは、地元の知人から「警備の需要が増えて警備会社が足りない」と聞き、将来性を感じたことでした。
警備という仕事は、安全と信用で成り立っています。長年かけて築いた信用も一つの失敗で崩れかねない厳しい世界です。だからこそ教育に力を注ぎ、隊員を大事にして密接なコミュニケーションを心掛けてきました。
現在、経営のバトンは息子で代表取締役社長の池端直樹が引き継いでいます。経営については社長にまかせて、相談を受けた時には意見を言うスタンスです。経営は教わるよりも自ら学ぶことが成長につながると思うのです。
かつては、大学生のアルバイトなど20代の若者が交通誘導警備員の募集に集まった時代がありました。今後、若者に興味を持ってもらうには処遇改善に加えて警備業のイメージアップが必要です。「社会に貢献している業務」であるとPR動画などで伝えることは重要と考えます。
<<地域の防犯ボランティアに長年取り組まれてきました>>
静岡県防犯アドバイザー協会の主任講師として県の依頼を受け、小学校を訪問して防犯授業を行っています。あぶない時の対処方法を身につけるトレーニング「あぶトレ」に、警備業ならではの知識や視点も織り込むよう心掛けて、子供たちや先生方から喜ばれています。
警備業ヒューマン・インタビュー2025.09.01
金子慶太郎さん(愛知県警備業協会会長 セクダム代表取締役社長)
「会員のためか」自問自答
<<愛知県警備業協会の7代目会長に就任されました>>
私一人では何もできません。キャリアが豊富で優秀な5人の副会長とチームを組み、理事・監事の皆さん、専務理事・事務局長をはじめ事務局の方々の協力をいただきながら、協会を盛り上げていきたいと考えています。
現在、警備業界は深刻な人手不足や、進まない価格転嫁など、多くの課題を抱えています。常に「会員の皆さんのためになっているかどうか」を自問自答しながら事業を進めていきたいと決意しています。就任してまだ2か月余ですが、少しずつ活動を始めています。
最初に、労働安全衛生規則が改正され熱中症対策が6月から罰則付きで義務化されました。当協会では愛知労働局から講師を招き、企業に義務付けられる対策の具体的内容や対応手順について学ぶ研修会を開催しました。
また年2回発行している協会機関誌「SECURITY AICHI」のデジタル化の取り組みを広報委員会が中心となり開始しました。紙媒体からの移行は、作業負荷や経費の大幅削減につながることがわかり、2026年1月号から実現できればと考えています。
さらに、協会会員数は現在529社ですが、県内には警備会社が約800社あることから、未加入会社がメリットを感じ入会していただけるよう会員増強を図っていきたいと思います。
最後に、安定した収支の維持です。出費を抑えながらも会員のニーズがあれば思い切って資源を投入するという姿勢で、将来にわたって健全な収支を維持できるよう努めたいと考えています。
<<セクダムの代表取締役社長としても多忙な毎日です>>
当社は企業理念の中に「誠実」を掲げています。コツコツと誠実に仕事に向き合うことを信条とし、「拡大より継続」を重んずる経営を心掛けてきました。
また大手企業とは比較になりませんが、少しずつデジタル化の取り組みも進めています。当社の場合、給与計算のパッケージソフト以外は、全て自社開発の基幹システムで運用しています。上・下番報告の自動化を含む勤怠システムは数年前から稼働させており、今は請求書作成との連動を図っているところです。
一方、警備員教育のデジタル化も進めています。毎月の専任指導員の「現地指導」は品質向上に非常に有効で、なくてはならない作業ですが、現在はデジタルカメラや紙のチェック表を指導員が携帯して歩き、毎月膨大な紙の量を費やしています。それを「タブレット」だけで現地で写真、チェック表を一画面で完結できるようにし、メール通信でデータ保管する仕組みを作成中です。
他に年2回の「顧客アンケート」も、社員が手分けして手配りしていたのをデジタル化したことで、省力化に大きく寄与しています。
<<健康経営を推進しています>>
警備に携わる社員は高齢者の割合が高くなり、長く健康で勤務してもらうため、2023年に「愛知県健康経営推進企業」として登録、健康経営に取り組んでいます。社内で考案した身体をほぐす「セクダム体操」を推奨し、定期的に「セクダム労災(転倒防止)標語キャンペーン」を実施するなど、常に注意喚起して健康維持を呼び掛けます。転倒などの事故が発生したときはSMSで全社員に「事故速報」を流し、原因と対策を即時共有しています。
<<金子社長ご自身は、「リスキリング」を実践されました>>
私は58歳のときに学びへの意欲を感じて地元の大学院に入学し、60歳で修了しました。2年間の学生生活も有意義でしたが、卒業生の会に入会させていただき、幅広い職業の方々と交流を深めることができました。さらに声を掛けていただいて、大学で非常勤講師を前・後期の2コマですが約10年間務めました。若い皆さんに聴講してもらうことで新たな発見があり、大きな学びとなりました。
<<忙しい日々の中で、息抜きはどのように?>>
私は無趣味なのですが、強いて挙げるなら「食べ歩き」でしょうか。友人や周りの人から口コミで教えてもらった店に、妻と車で出掛けます。決して高価な食事ではなく、地域で愛されている「B級グルメ」が好みです。
<<警備業での長年の貢献が評価され「令和7年・春の叙勲」で旭日双光章を受章されました>>
すべて皆さまのおかげであり感謝申し上げます。都内での伝達式と皇居での天皇陛下拝謁にあたり「警備」という言葉を何度か耳にしたことが心に残っています。
私は警備業に携わって半世紀を超えましたが、多くの方々の努力で業界が発展を続け、こうして社会に認知されるまでになったことは感無量です。今後も引き続き、警備業からの受章者が続くことを願っています。
