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警備業ヒューマン・インタビュー2025.10.01

秋山一也さん(一般社団法人・交通誘導DX推進協会代表理事、KB―eye代表取締役、タスクマスター代表取締役)

「交通誘導警備」より安全に

<<秋山社長に話を聞くのは2018年2月21日号以来となります。当時はAI交通誘導システムの開発をスタートした頃でした>>

AI交通誘導システム「KB―eye」は、片側交互通行を制御する「KB―eye交通制御」と、脇道・枝道・通行止めに使う「KB―eye交通誘導」の2システムを、レンタルとリースで提供しています。

「KB―eye」の普及は全国に広がり、32都道府県の現場で所轄警察署からの道路使用許可を取得し稼働しています。

<<実用化までは困難な道のりだったのでは?>>

山梨県内で実績を作り、AI交通誘導システムを導入・活用しているユーザーと連携して各地域で稼働させ、全国の警察本部に出向き、AI交通誘導の安全性と高機能を説明してまわりました。

2024年2月に国土交通省から「交通誘導システム等を活用した費用計上方法」と「道路工事保安施設設置基準」が発出されたことで関係各所の理解が進みました。

<<21年には、秋山社長が代表理事を務める「一般社団法人・交通誘導DX推進協会(以下、推進協)」を創設しました>>

AIなどの先進技術を使った交通誘導警備を普及させることを目的に、同じ志を持ち汗を流してきた警備会社経営者が理事を務めています。現在、正会員123社、賛助会員4社、特別会員13社で構成しています。

活動としては、定例会を毎月開いて情報交換・共有を図っています。主にオンラインで開催しますが、3月・12月の定例会と6月の総会は都内で対面で行います。各地のAIシステム稼働状況や開発などの最新情報を報告し共有します。研究発表会や専門講師を招く研修会も行っています。

次世代の交通誘導警備の担い手育成にも注力しており、推進協主催の取扱責任者講習とオペレーター講習を山梨県を中心に全国各地の会場で定期的に実施しています。

当推進協は「交通誘導警備の未来」のため活動する団体で、警備業の発展に尽力する全国警備業協会と歩みを共にしています。私は特別講習講師を約20年務めていますし、推進協の理事をはじめ会員は全警協加盟員でもあります。交通誘導警備に関する最新技術や活用状況などの情報は、全警協に伝えて共有しています。

<<秋山社長が警備業と関わるきっかけは?>>

私は大学卒業後、故郷の山梨県に帰り警備会社に就職しました。私が住む地域に警備会社がなかったことから、独立してタスクマスターという2号警備の警備会社を創設しました。

しかし正社員にならずに離職し他の業種に移る警備員が多い現実に直面しました。また、脇見運転によって現場内に車両が突っ込み、隊員がはねられ重大事故に巻き込まれる事案が相次ぎました。私はこの現実を前に「交通誘導警備を事故のない安全な労働環境に改善し、若い人が家庭を持ち一生安心して続けられる仕事にしたい」と強く思うようになりました。

そんなとき、ある経営者勉強会でIT企業の経営者である橘田きった孝一氏と知り合いました。警備業の将来について相談したことがきっかけで、AIを活用した交通誘導システムの開発に着手することになり、共同代表でKB―eyeを創設しました。

KB―eyeは昨年6月に警備業の認定を取り今年10月から山梨警協に加盟します。これまで警備会社に交通誘導システムの提供をしてきましたが、これからは先進技術を活用する警備会社としても業務を行います。すべての交通誘導警備でAIシステムを活用していきます。

<<YouTube番組「REAL VALUE(リアルバリュー)」に橘田社長が出演してKB―eyeを紹介し、大きな反響があったそうですね>>

これまでメディアには積極的に露出してこなかったのですが、よい人材を集めてシステムを普及させていくため試みました。一般の人たちに広く交通誘導警備の現状を知ってもらう目的もありました。YouTubeを観た多くの人が道路でAIを使った交通誘導警備に目を止めてもらうことは業界のイメージ改善にもなります。

<<6月に山梨県警備業協会の青年部会長に就任しました>>

交通誘導警備だけではなくバックオフィスや教育、営業など、警備会社の業務全体のDXを進める意見交換や研修会を計画しています。建設業協会青年部との意見交換や建設業の展示会に出展するなど、他業界に警備業をアピールする活動も行います。

テクノロジーを活用できないと生き残れない状況は、すべての業種にいえます。交通誘導警備も前進していかないと、仕事自体がなくなる可能性があります。業界外部の力でそうなる前に自分たちで行動し、業界を守っていきたいと思います。

タスクマスターは3年連続で新卒社員を採用しました。若い人はAIシステムに興味を持ちますが、それ以上に「AIの力で地域社会の安全を守る」というビジョンに共感し入社してくれます。

警備業は地場産業です。全国に1万社以上の警備会社が地域に根付き、雇用を守り、暮らしの安全を支えています。私はそんな地域に根を張りながら、誇りを持って働ける警備会社を増やしたいのです。