視点
獣害問題2025.10.01
警備ノウハウ活かそう
クマによる被害が相次いでいる。
環境省は「今年4〜8月に69人が人身被害に遭い、そのうち5人が死亡」と発表。過去最悪レベルの状況に警鐘を鳴らし、「クマ出没対応マニュアル」を公式サイトに掲載して注意を呼び掛けている。秋季は冬眠に備えて食物を探すため活動が活発になることから、一層の警戒が必要だ。
クマの目撃情報が多い地域では隊員の安全を確保する必要がある。北海道内の一部の警備会社では「クマ撃退スプレー」を隊員に携帯させている。秋田県の警備会社はクマが嫌がる臭いを発する「忌避剤」を販売し地域の安全に貢献している。北関東地区にはクマの出没に向けて警備用「防護盾」を備える自治体があるという。
獣害問題は「人的被害」だけではない。農作物を食い荒らす「農業被害」も深刻だ。こちらは主にシカやイノシシによるもので、農林水産省によると2023年度の農作物被害は約164億円(前年度比約8億円増)に及んだ。
警備業は日ごろの業務で培ったノウハウを活かし「農業被害」に向き合っている。ALSOKは13年に鳥獣対策事業に参入。現在はグループ会社9社とともに鳥獣捕獲に必要な法人資格「認定鳥獣捕獲等事業者」を取得した。害獣捕獲用わなにカメラやセンサーなど警備用資機材を組み合わせた効率的な対策を提供している。
群馬県に本社を置くシムックスも同時期に資格を取得し「鳥獣対策課」を開設。わなが作動すると電話やメールで通知したり、電話回線など通信が確立されていない場所向けには送信機で通報するシステムなどを提供している。
ALSOK千葉は「ジビエ工房茂原」を開設し、捕獲された野生動物を食肉に加工・販売する「ジビエ事業」を展開。農業被害を減らし地域資源の有効活用につながる取り組みとしてエコプロアワード(主催=サステナブル経営推進機構)の優秀賞を受賞した。
ALSOK秋田は今年1月、県と暮らしの安全・安心を柱とする「包括連携協定」を締結。同社が認定鳥獣捕獲等事業者であることから佐竹県知事(当時)は「クマ対策に期待したい」と要望した。
生活安全産業である警備業は、被害が拡大している獣害問題にも積極的に関わり、社会からの信頼を高めてもらいたい。
【瀬戸雅彦】