クローズUP
「共同企業体の警備隊」解散式2025.10.21
大阪・関西万博が閉幕
大阪・関西万博は10月13日、184日間の会期を終えて閉幕した。翌14日、「2025年日本国際博覧会協会警備隊」(協会警備隊)のうち「来場者ゲート警備隊/会場警備隊」の解散式が夢洲(大阪市此花区)の会場内で行われた。
来場者ゲート警備隊は、会場の東西に設置されたゲートで手荷物検査などを実施。会場警備隊は、来場者が集中する「大屋根リング」をはじめ会場全域で業務を行った。両隊は、東洋テック(大阪市浪速区、池田博之社長)を代表企業としてセコム(東京都渋谷区、吉田保幸社長)、シンテイ警備(東京都中央区、安見竜太社長)の3社による警備共同企業体で構成した。
3社を代表して東洋テック・阪上学大隊長、セコム・菊池満大隊長、シンテイ警備・飯塚大輔大隊長補佐は、来賓の2025年日本国際博覧会協会・東川直正副事務総長に対し任務の完遂と解散の報告を行った。
東川副事務総長は「無事に終えることができたのは、最前線で奮闘した皆さまのおかげ」と謝意を述べた。
大阪府警察万博対策本部会場警察隊・紀田一警備課長は「皆さまの活躍で重大な事件事故は起こらなかった」と警備員をたたえた。
東洋テック・田中卓会長は「厳格な警備とおもてなしを心掛けて、来場者から感謝の言葉が増えていったことは、毎日の努力の賜物です」とねぎらった。
セコム・杉本陽一常務執行役員は「万博警備は、関係者の尽力のおかげで業界にとっての金字塔を打ち立てたと思います」と述べた。
シンテイ警備・安見社長は「半年にわたり培った経験は『宝』であり、同僚や後輩に伝えていただきたい」と述べた。
同協会が発表した一般来場者数は2557万8986人。警備共同企業体は毎日1000人以上の警備員を配置。手荷物検査では持ち込み禁止品を多数回収した。傷病者への対応では医療従事者と連携しAED、心肺蘇生を行って回復につなげた。
「警備員やらない?」2025.10.21
岐阜警協 ポスター制作
交通誘導警備を行う姿に「警備員やらない?〜街の安心はあなたが守る」のキャッチコピーで幅広いアピールを図る――。岐阜県警備業協会(幾田弘文会長)は、警備業界のイメージアップと人材確保に向けて、オリジナルポスターを制作した。
イラストは県内在住のイラストレーター・小島千枝さんが担当した。小島さんは、中津川警察署のイメージキャラクターを作成して同署の一日警察署長を務めた経験もある。
イラストの警備員の名前は「レンゲ」。県花のれんげ草にちなんでつけられた。プロフィールによると、年齢は「?」、警備員歴は1年5か月で、得意な誘導は「後進誘導」。家族は父(50歳、警察官)、母(48歳、パート)の3人家族、好きな食べ物は鮎。
協会はB2サイズのポスターを200枚印刷し、加盟会社(10月1日現在145社)に送付。事業所などの見やすい場所に掲出することで警備業界のアピールにつなげる。主要駅、図書館などにも掲出を依頼、「岐阜バス」8路線に車内広告を予定している。
ポスターのイラストは協会、加盟会社のホームページに掲載。A4サイズのチラシを作成し各種イベントで配付する。
イラストを印刷した「のぼり旗」も作成。「警備の日」などのイベントでポスターとともに活用するとともに、加盟会社へ配布し掲出を呼び掛ける。
大野太専務理事は「協会の『顔』となるオリジナルポスターです。企業では、ブランドの信頼性や魅力を高めブランドイメージを視覚的に伝える『ロゴ』を使用しています。誰もが一度見れば『これは警備業協会だ』と言ってもらえるようなポスターを制作して、さまざまなメディアを通じて警備業のPR活動を展開していきたい」と述べた。
特集ワイド AIで行動検知2025.10.21
警備の質向上、効率化実現
アジラ(東京都町田市、尾上剛代表取締役CEO)は、行動認識AIを搭載したサーバーを使って監視カメラの映像を解析、不審行動・異常行動を検知して事故や犯罪の発生を未然に防ぐ「AI Security asilla(AI警備システム アジラ)」を開発。全国の施設警備業務で活用が広がっている。システムの最新機能や今後のビジョン、2社の導入事例を紹介する。
「AI Security asilla(以下asilla)」は、「不審行動・異常行動」や「人の助けが必要な状況」を行動認識AIが検知し、警備員や管理者に即時通知する警備システムだ。アジラの神田オフィス(東京都千代田区)で尾上代表取締役CEOに話を聞いた。
asillaは既設のネットワーク(IP)カメラをそのまま使用し、あらかじめ検知する行動を学習済みの行動認識AIを搭載したサーバーが映像を解析する。サーバー1台で最大50台のカメラを制御可能だ。
行動認識AIは次のような特長がある。
▽24時間・365日、複数台のIPカメラを同時にモニタリングする。警備の精度向上のほか、警備員の作業負担を軽減し人員不足を補う。AIを活用することで警備員の経験やスキルに関係なく警備の質を一定に保つ効果もある。AIは自律学習により、判定精度をさらに高めていく。監視カメラは映像記録の用途に留まらず映像解析や検知時の通知に活用することで利用価値を大きく高める。
▽人の関節の動きから行動を分析・推定する映像解析技術で、喧嘩や転倒、ふらつき、滞留、侵入などを「異常行動」として検知する。人の骨格を分析のベースにしているため鳥や猫など動物の誤検知がない。
▽通常行動から逸脱した行為を「違和感検知」として把握する。犯罪や事故などの予兆と認識し、通知することで犯罪や事故を未然防止できる可能性がある。例えば建物の周囲を行ったり来たりする行動から「不審行動」を予測したり、柵を登ろうとする行為から「違和感行動」を推察する――など。
行動認識AIは車椅子や白杖利用者も検知するため、ホスピタリティーに向けた活用もできる。
アジラは今年、asillaとほかの機器やシステムと連携させるサービスを開始した。
ネットワークスピーカーとasillaを連携させて、自動検知による自動音声発報が可能となった。「侵入禁止エリアです。直ちに退出してください」などの警告を行ったり、離れた場所からの音声対応ができる。
またサイエンスアーツ(東京都渋谷区、平岡秀一代表取締役社長)のスマートフォンアプリ「Buddycom」と連携し、asillaの検知を複数の警備員が即座に共有できるようになった。音声とテキストによる同時通知なので、聞き漏れや聞き間違いを防ぐ。
さらにasillaに今年、新たな2機能が追加された。「滞在者チェック」は、施設内に人が残っていないかをリアルタイムで確認できる。カメラ画角内に人がいた場合のみ映像を映し出し滞在人数を表示する。警備本部から施設内の滞在状況をリアルタイムに確認できる。
もう1つの新機能は「ライン通過検知」。画面内の任意の場所にラインを設定すると一定方向からの侵入を検知する。必要な時間帯のみの検知も可能だ。不正な侵入や一方通行の逆走など迷惑行為を防ぐ。センサーは必要なく監視カメラのみで対応する。
アジラはライン通過検知機能を利用した付加価値的なサービスとして「asilla BIZ(ビズ)」の提供を開始した。独自技術で施設内の人の流れを解析したり、混雑を把握するなど人流を可視化できるサービスだ。
施設内の最大50か所に設定したラインを越えた人数を方向別に計測する。カメラ1台で最大3本のラインを自由に設定できる。設定したラインは出入口ごとやフロアごとなど、グループに分けた分析が可能。時間帯や曜日ごとの混雑状況のデータ収集・分析もでき、災害時の避難誘導やマーケティングに活用できる。データはリアルタイムに表示することもできる。
asillaは導入にあたり初期コストがかからない。事前にアジラのスタッフが既設のカメラシステムを確認、申し込み契約締結後、すぐにレンタル用サーバーを設置。既存のネットワーク構成を変えずに利用でき、複雑な設置工事が不要だ。正常動作を確認して運用満了期間までシステムを利用する。
監視カメラの設置についてアジラが推奨する条件は、カメラ位置が高さ2メートルから5メートル、画角は30〜45度。屋内と屋外、対象エリアの明るさを問わず検知可能だ。
アジラではAI警備システムのデモンストレーションを神田オフィスで行っている。問い合わせと申し込みは電話(☎042―785―5091)で。
アジラ・尾上CEO
アジラは行動認識AIを中心にAIによる映像解析技術を駆使し、安全で快適な世界の実現を目指しています。警備システム「AI Security asilla」は26の特許を取得しており、他社が追従できない高度で多彩な検知機能を備えています。
新機能の開発は大切ですが「警備員の方々の負担を減らすこと」が何より重要です。今年はIPスピーカーと連携して不法侵入を防ぐサービスや、滞在者がいないかを確認して退出を促すサービスを発表しました。いずれも監視や巡回、駆け付けなどの業務を効率化し負荷を軽減できます。
行動認識AIは、より人の感覚に近づけるべく研究・開発を進めています。「転倒」を例にとると、高齢者がつまずいて倒れたのか、子供がふざけて寝ころんだのか、見分けが付くところまで精度を高めたいです。駆け付けて助ける必要があるか明確になるからです。
asillaの今後のビジョンとして(1)対象施設の小型化(2)システムに付加価値をつける(3)海外展開――の3つがあります。
「対象施設の小型化」は、これまで大型施設を中心に導入を進めてきましたが、今後は小型施設にも展開していきます。今年3月にNTT東日本と共同開発したクラウドと映像解析AIを連携させた「MIMAMORI(みまもり) AI」を使用して、スポーツジムやコインランドリーなどへの設置を提案します。
「付加価値」では、「asilla BIZ」という既存カメラを使って施設内の人の流れをリアルタイムに可視化するサービスを開発しました。
警備業と同様に介護業界も人手不足が深刻です。介護施設では巡回する介護士が不足しており、AI付きカメラを活用してもらいたいです。
「設備管理」を効率化するサービスも開発を進めています。
「海外展開」は、現在リサーチを始めたところですが、すでにいくつかの国から問い合わせが来ています。AI警備の普及を国内のみならず、世界に広げていきます。「日本製AI」を輸出し、グローバル化させることを目指しています。
マックスセキュリティサービス
マックスセキュリティサービス(東京都港区、白川尚樹代表取締役社長)は、施設警備を中心に業務を行う従業員数約700人の警備会社だ。不動産業を営むザイマックスグループの子会社として創業17年目となる。
白川社長はasilla導入の理由を次のように話す。
「人手不足の課題改善のために新技術で効率化を図る警備会社が多いと聞きますが、当社がシステムを導入した理由は『未来の警備』に備えるためです。警備業は現在、労働集約型の産業ですが、将来は人と先進技術が役割を分担して行う時代になると予想しています」。
同社は2024年4月、都内の商業施設で実証実験を開始。約1年かけて効果を確認し25年4月から管理する商業施設にasillaを導入して本格稼働を開始した。
約半年間の稼働の効果として「新たな気づき」を挙げている。これまでは問題が発生した時点で監視カメラ映像を見返す運用だったが、監視カメラにAIを搭載したことで異常行動や不審行動の通知を受け、問題が起きる前に対策することが可能になった。
一例として、車両専用の通路に人が進入している事案がある。いずれ人と車両が接触する可能性があることから、事前に安全確保の対策を行った。asillaは問題発生につながる事象がどのぐらいの頻度で起きているかのデータをとれるため、対策の必要性が可視化できる。
問題発生後の対応も大幅に変わった。例えばエスカレーターで利用客の転倒事故があった場合、これまでは目撃者から連絡を受けて警備員が駆け付けていたが、asilla導入後は警備員がシステムから直接通報を受けるため、迅速な対応が可能となった。
白川社長は「当社がasillaを使用して警備業務を行っている施設は、親会社のザイマックスグループが管理・運用する物件に限られています。今後はグループ外の施設の警備でも、『警備の質向上』などの効果を説明し活用していきたい」と話す。
大成
大成(名古屋市中区、加藤憲博代表取締役社長兼CEO)は、1959年創業、従業員数5588人のビルメンテナンス会社だ。
同社は都内の複合施設と名古屋市内の商業施設で、asillaを活用した施設警備業務を行っている。これまで監視カメラにAIを搭載したasillaの行動検知で警備員が通報を受け、施設内のエスカレーター周辺で発生した事故事案に早期に対処し、事故を未然に防ぐことができた事例があるという。
大成は安全性向上や警備員の効率化・作業負荷軽減など、asillaの効果を実務を通じて確認し、2025年1月にアジラとの資本提携を発表した。
大成は警備ロボットの開発と提供、運用を行うugo(ユーゴー・東京都千代田区、松井健代表取締役CEO)とも業務提携を行っており、今後はAIとロボティックスを活用した先進的な施設警備業務を行うとともに、その普及にも取り組む。
同社では先新技術の活用による採用への効果にも期待している。警備業のイメージアップを図り、若年層など新たな人材の獲得に努める。
同社・加藤千加良常務執行役員は「アジラ・ugo両社の最先端技術と連携し、当社が長年培った施設管理のノウハウを融合させて、これまでの施設警備にはなかった新たな管理手法を実現させたい。その実績を見てもらうことで、警備業界全体のDX推進にも貢献したいと思います」と語った。
大成とアジラは10月、都内のオフィスビルと、名古屋市内の商業施設にasillaを使った警備を提案し、実証実験を開始する予定だ。
