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クローズUP

〝駅の地下街でテロ〟想定2025.10.11

東急セキュリティ 渋谷警察署と合同訓練

にぎわう渋谷駅の地下広場で、液体によるテロ発生を想定――。10月1日、同駅東口地下広場で「地下街におけるNBCテロ事案対処合同訓練」(主催=警視庁渋谷警察署、渋谷駅前エリアマネジメント)が行われた。東急セキュリティ(東京都世田谷区、下形和永社長)の警備員4人が参加した。

同署と同社の合同訓練は3回目。今回は、1995年に発生した地下鉄サリン事件から30年の節目にあたり「有害な化学剤がまかれた」想定で、警察官、警備員、東急電鉄の駅員は次の手順で訓練を行った。

地下広場を巡回中の警備員が、駅員から「駅に殺害予告の電話があった」と連絡を受け、スマートフォンで警備本部に応援を要請。同駅、大型複合施設の渋谷ヒカリエ、渋谷スクランブルスクエアの各警備隊から警備員が駆け付けた。

近くのカフェでは、不審な男が容器の液体を床にこぼし立ち去ると、客は体調不良を訴え次々としゃがみこんだ。警備員はマスクを装着して避難誘導。不審な液体と容器を発見するとセーフティーコーン、コーンバーで立入禁止区域を設定、到着した警察官に状況を説明した。

警察官は防犯カメラで、液体をこぼした男の特徴を確認、警備員も情報を共有した。野次馬にまぎれていた男は、刃物を取り出し暴れようとしたが警察官に身柄を確保された。警備員2人が警戒棒を構えて警察官に協力、他の警備員は近くの人々を避難させた。その後、化学防護服を装備した機動隊員が液体を処理、除染を行って訓練は終了した。

渋谷警察署・髙橋雅代署長は、講評で「官民連携による安全安心なまちづくり」に一層の協力を呼び掛けた。また、8月に渋谷ヒカリエ内で催涙スプレーが噴射された傷害事件について「発生直後に警備員が迅速な避難誘導を行ったことで大きな混乱もなく、容疑者逮捕につながった」と警備業の貢献に触れた。

ALSOK りそな銀行と連携協定2025.10.11

「収納自動化」を支援

ALSOK(東京都港区、栢木伊久二社長)とりそな銀行(大阪市、岩永省一社長)は、自治体の税金・公共料金の収納業務自動化を支援するため、9月24日に連携協定を締結した。自治体の業務効率化と市民の利便性向上を支援する。

連携による収納業務自動化は大阪府寝屋川市で5月に先行導入。無人機を利用した税金・公共料金の納付を可能にした。自治体職員の窓口対応の負担軽減、市民の待ち時間短縮を実現した。

さらに、納付書のデータ化で収納日報の作成や会計処理を自動化。オンラインシステムの導入で納付金の管理・搬送業務の負担を軽減した。

今回の連携協定締結により、りそな銀行が指定金融機関となっている自治体への支援拡大を図る。

ALSOKは「連携を強化し、『税公金ソリューション』の導入を推進していく。効率的、安全・安心に税公金を取り扱える環境を提供し、地域の持続的な発展に貢献する」としている。

特集ワイド 人に寄り添うシステム2025.10.11

現場と官制の負担を軽減

人手不足の解決に向けて、管制システムの導入を検討する警備会社が増えている。straya(ストラーヤ・東京都港区、渡辺拓也代表取締役CEO)の管制システム「KUMOCAN(くもかん)」は、管制業務の効率化を図るほか、現場データから警備員の「離職願望」をいち早く見付けてケアを行うなど“人に寄り添う”特長がある。システムの機能と2社の導入事例を紹介する。

AI搭載クラウド型の管制システム「くもかん」の機能や効果について、strayaの渡辺代表取締役CEOと、開発責任者を務める伊藤かおる取締役CTOに話を聞いた。

「くもかん」というシステム名称は、「クラウド(雲)を活用した誰でも扱うことができる(CAN)システム」を表している。

その機能は豊富で、警備会社を運営する上で必要な業務をワンストップで提供する。具体的には、▽顧客管理▽契約管理▽配置▽隊員管理▽シフト管理▽勤務指示▽上・下番報告▽給与計算▽請求書作成――などの機能を備える。

ほかに「くもかん」独自の機能として次のものがある。

▽退職者予想

勤務実績などのデータに基づいて、退職リスクの高い警備員を可視化する。

▽離職抑制

警備員に満足度アンケートを行い、希望シフトと実績のかい離などを可視化することで離職を抑制する。

▽AI自動配置

警備員から回収された各種アンケート結果や日々の勤務内容を考慮して自動で配置する。

管制員向け管理画面と、警備員向けアプリ画面は、見やすいデザインを採用。管理画面はホワイトボードのように操作しやすいデザインで、警備員の現在の状況(配置済み、通知済み、出勤可能連絡、出勤報告、上・下番報告)がひと目でわかる。シフト情報は配置画面に自動連携することで配置ミスを防止する。将来のポスト数と出勤可能人数が可視化されるため、管制員は「受注の最大化」と「欠員を埋める作業」を早期に着手できる。

警備員はスマホ画面からワンタッチで簡単に上・下番報告ができる。報告は管制システムですぐに確認できるため「いつ・誰が・どの現場に入ったか」をリアルタイムに把握可能だ。現場の住所、トイレ、コンビニエンスストアの場所をボタン一つでスマホ画面に地図表示する。

「勤務指示の確認をお願いします」「15分後に上番報告をお願いします」などのリマインド(確認)メッセージを事前に警備員へ自動通知し、確認漏れや遅刻の抑制につなげる。

「くもかん」の導入により、具体的にどのくらいの業務効率化が進むか。strayaでは警備員数約80人の警備会社の実例を次のように公表している。

「上・下番報告の電話対応」は、導入前の一日160件から10件に減少。対応時間は240分から15分に減少した。

「警備員への現場住所連絡」については、メール送信や電話説明から、警備員がアプリの地図ボタンを押すだけで確認できるようになった。

「警備員への指示・連絡」は、以前は電話で説明していたがテキスト通知により警備員の都合のよい時間に正確に確認できるようにした。現場の場所はアプリの地図で確認できる。

「管制員が配置作業にかかる時間」は、90分から20分に短縮され、効率化を実現させた。

strayaではスタッフ(カスタマーサクセスチーム)が導入企業を訪問して案内を行う。「導入説明会」を開いて基本的な使い方を伝え、顧客情報や隊員情報の入力・設定をサポートする。稼働後も、運用の中で不明点があった場合は必要に応じてミーティングを行う。新機能が追加された際にはリリースを送り、採用する場合はサポートを行う。スタッフは警備現場への訪問や案内も必要に応じて行うため、警備員のアプリ利用率は60代・70代を含め80%超となっている。

渡辺CEOは「管制員が確認する管理画面の『スマホ版』も制作しました。社外からでも現場状況を確認できます。今後は巡回のデジタル化のための機能も開発を進めていく予定です」と将来の構想を話す。

▽「くもかん」の問い合わせ先 straya(担当・山田氏) ☎090―9014―5428

straya・渡辺CEO

警備業の最大の課題は「人手不足」です。

当社の調査によると、警備員1人を採用するために20〜50万円が掛かります。しかし新規採用者の26%が1か月以内に、1年以内に約80%が辞めています。人がいないために案件を断った経験がある会社は100%で、需要はあっても供給が追いつかない状況となってます。

(1)採用が難しい

(2)採用してもすぐ辞める

(3)人がいないから案件を断る

――の3点の課題が警備業の持続可能性を危うくしています。

私の前職はリクルートホールディングスの求人サイト運営会社「Indeed japan(インディード ジャパン)」で、警備会社を含む大手企業の採用コンサルティングに従事していました。そのときに数億円規模の採用投資をしても在籍人数が減少するという警備業の現実を目の当たりにしました。

「このままでは警備業界全体が崩壊しかねない」と危機感を持ったことが、当社を創業するきっかけでした。警備業に特化したDXプラットフォーム「くもかん」を通じて、日々の業務の効率化と、システムに集まるデータを活用した「退職予測AI」「AI自動配置」などを提供しています。

多くの警備会社では、シフト管理や勤怠管理、給与計算、請求業務などをホワイトボードや紙、電話を使っており、膨大な事務負担が発生しています。「くもかん」はこうしたアナログ管理をデジタル化し、さらに一元管理することで事務作業を大幅に削減し、業務の効率化を進めます。

警備員の配置や指示など管制業務は、経験豊富な管制員の記憶や感覚に頼っており、組織としてノウハウが蓄積されにくいのが実情です。「くもかん」は「現場満足度データ」や「資格・配置履歴」を活用し、誰でも同じ水準で適正な配置・マネジメントができる環境を作ります。導入した会社では、退職を考えている警備員を導入直後に検知し、離職防止につながった事例が生まれています。

「テクノロジーの力で警備業を若者が憧れる職業にする」をビジョンに、「くもかん」の現場データを生かしながら、業界の課題を解決していきます。

シーマ・エージェンシー警備保障

シーマ・エージェンシー警備保障(静岡県浜松市、山下ひとみ社長)は、1994年設立、従業員数35人、2号警備を主業務とする警備会社だ。

管制業務の中で、警備員の電話による上・下番報告が同じ時間帯に集中するため受けきれない課題があった。管制を含む警備業務全体を統括するフィン・コン・ニュ部長は、管制システムを導入してスマートフォンのボタンプッシュによる自動報告に切り替えることを検討していた。

そんなときに偶然、strayaからの電話を受け、渡辺社長やスタッフによる「くもかん」のプレゼンテーションに情熱と信頼を感じて導入を決めた。

今年6月にシステムを稼働させると、約8割の警備員が「くもかん」の自動報告機能を活用し始め、電話報告が集中する課題は解消した。

それまで管制員が確認する配置表はエクセルで制作していたが、「くもかん」の配置画面の見やすさに驚いたという。

フィン部長は「これまでは警備員の配置計画に多くの時間が掛かっていましたが、システムを導入して効率化を図ったことで他の業務に時間をとれるようになりました。これからは『警備現場の巡回』に力を入れ、職場環境の問題把握・改善や警備員とのコミュニケーションを深めたいと思います」と話す。

フィン部長が特に心強く感じているのはstrayaのサポート力だ。文字の大きさを調整して見やすくするなど、細かいカスタマイズの要望に迅速に対応してくれたという。両社は導入後も定期的にミーティングを行い、問題を抽出して対応する取り組みを続けている。

フィン部長は「初対面のときにスタッフの皆さんに感じた信頼性は、今ではさらに強まりました」と語った。同社では今後、警備報告書のデジタル化を進め、警備員の作業負荷をさらに軽くする。

サンエス警備保障

サンエス警備保障(福岡市博多区、龍隆幸代表取締役)は、2015年設立、2号警備を行う従業員334人の警備会社だ。

同社では管制員の仕事量が多く、残業が続く状況だった。このため警備業務全体を統轄する廣松雄一部長は、管制員の負担軽減を模索。具体的には「上・下番報告の確認」や「翌日の作業指示」、「シフト配置」などを効率的にするシステムを探していた。

3社の管制システムが候補に挙ったが、「離職抑制」などほかにはない“警備員ファースト”の機能に惹かれて「くもかん」に決めた。

当初は4月に同社7拠点のうち2拠点に導入し、様子を見て残り5拠点を7月導入の予定だった。しかしシステムが予想以上に使いやすく導入効果が高いことがわかり、7拠点とも4月から稼働させることにした。

効果はすぐに表れた。警備員は警備報告書がデジタル化されメール送信で会社に提出できるようになったため、会社に立ち寄る手間がなくなり「直行・直帰」が可能になった。

業務終了後に行う満足度を4段階評価するアンケートの結果から、警備員の不満や現場の問題に対し早期に対処する機能は離職率低下の効果があった。

管制員は画面上で組んだシフトの内容をボタンひとつで全隊員に一斉送信可能となった。シフトを組んで連絡する手間と時間を大きく削減できるようになった。

廣松部長は「管制業務はこれまで、担当者の長年の経験や知識、センスなどの“職人技”が求められてきましたが、『くもかん』導入後はシステムに使い慣れていくことで誰でも管制業務の練度を上げることができます」と話す。

同社は今後の計画として、管制システムに売上や販売管理のシステムを連携させて、バックオフィス業務全体の効率化を図る予定だ。