警備保障タイムズ下層イメージ画像

視点

シニア活躍2025.11.01

環境整備、リードしよう

警備員の約半数は60歳以上――。2024年末時点の60歳以上の警備員は約27万6000人で全体の47%を占めている。全産業での60歳以上の割合は19%であることから、警備業がいかにシニア世代の活躍で成り立っているかが分かる。体力や目的に応じた多様な働き方が可能な警備業で、シニアが安心して安全に働ける環境をつくることは重要な経営課題と言える。

個人差はもちろんあるが、一般的に60歳以上は、加齢による身体機能の低下から労働災害の発生リスクが高い。休業期間が長期化する傾向もある。厚生労働省によると、24年の労災による死傷者(死亡と休業4日以上)に占める60歳以上の割合は30%。20年前の15%から2倍になった。

警備業はどうか。24年の死傷労災で60歳以上は2100人弱。全体の53%を占め、半数を超えている事実は重い。警備業の死傷労災は「転倒」「動作の反動・無理な動作」「道路交通事故」が三大要因だ。

厚労省は20年に「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)」を作成し、事業者に取り組みを促してきた。だが、ガイドラインを知っている事業者の割合は20%程度。「自社の60歳以上は健康」などを理由として、手すりの設置や段差の解消、明るさの確保といった防止対策はあまり進んでおらず、60歳以上の労災増に結び付いている。

こうした状況を受けて来年4月、高年齢者の労災防止対策は強化され、事業者の努力義務となる。労働安全衛生法の改正によるものだ。努力義務化に向けて厚労省は、有識者や労使の代表を委員とする検討会を設置。現行のガイドラインをベースにした新たな指針づくりを進めている。

委員からはこんな指摘がある。定年退職後、それまでやっていた仕事とは別の、肉体労働の仕事に就くことが多く、それが労災につながっている可能性がある――。重要な視点であり、指針づくりに生かされればと思う。

高齢化が進むなか、警備の現場は今後もシニア世代によって支えられていく。だからこそ、安全に働ける環境整備をリードする業界であってほしい。高年齢者に優しい職場は、若い世代や女性にとってもそうなるだろう。

【伊部正之】