視点
警備この一年2025.12.21
明るい未来を信じて
歳の瀬の風物詩ともなった「新語・流行語大賞」「今年の漢字」が決まった。それぞれの評価はさておき、警備業で今年多く聞かれた言葉や一年を表す漢字として、何が思い浮かぶだろうか――。
4月、「大阪・関西万博」が開幕した。警備業は警備共同企業体や協会警備隊、個別警備会社が会場内外を警備、10月の閉会まで万博の安全安心を守り切った。「警備完遂は、警備業の存在意義を改めて世に知らしめた」――。村井豪・全警協会長は万博を振り返った(11月「警備の日」全国大会)。
夏は昨年同様、猛暑日の連続だった。厚労省は6月に労働安全衛生規則を改正、対策を強化した。熱中症による死亡者数の多い建設業と警備業を念頭に置いた改正だった。労災防止は業界の悲願。「ファン付きベスト」の着用は夏の警備員の標準装備となった。全警協の「サングラス着用ガイドライン」により、警備員の目の保護にも取り組んだ。
9月1日「防災の日」前後には、都道府県警協が自治体の防災訓練に参加、練度向上に努めた。「阪神・淡路大震災」から30年が経過した今年、同震災を機に警協と警察や自治体と締結された「災害支援協定」の見直しも相次いだ。費用負担を明確にした支援の持続性確保が狙いだ。
11月1日「警備の日」には、警協青年部会や女性部会などが中心となり警備業PRに取り組んだ。趣向を凝らした「警備の日」活動は、全国で秋の恒例行事になりつつある。
新たな課題に対する体制も整えられた。全警協は総務委員会を廃止して新たに「運営審議会」を、「経営基盤委員会」や「交通誘導警備」「外国人雇用」など新たな委員会、WGも設置された。警察庁との間で初設置の「官民協議会」は今後、警備業法をはじめとする制度改正へ向け注目される。
さまざまな出来事のあった警備業この一年だが、最も交わされたのが「人手不足」「価格転嫁」「適正料金」などの言葉ではなかったろうか。いずれも長年業界に横たわる一筋縄では行かない厄介な「壁」だ。一方で、労務費基準や取適法(改正下請法)などの追い風もある。何よりも生活安全産業である警備業への国民の期待は年々増している。「壁を超えれば明るい未来が待っている」を信じ歩みを続けてほしい。
【休徳克幸】
取適法2025.12.11
「自主行動」実践しよう
中小受託取引適正化法(略称・取適法)の来年1月1日の施行まで1か月を切った。この法律はその名の通り、適正取引を定着させることが目的であり、仕事を受ける側の利益保護の強化を図る。
現行の下請法を改正し、併せて名称変更するのが取適法だ。約20年ぶりの改正では用語の変更も行い、親事業者を委託事業者に、警備業に多い下請事業者を中小受託事業者に改める。下請という用語をなくすことで、「上下関係でなく対等な関係」という意識を浸透させ、適正取引につなげる。
公正取引委員会は11月に取適法の特設サイトを開設した。「協議に応じない一方的な価格決定の禁止」や「適用基準への従業員数の追加」など法改正のポイントについて、ショート動画を交え解説している。
新たに禁止となる一方的な価格決定とは、中小受託事業者から価格交渉の要請があったにもかかわらず、委託事業者がそれに応じることなく、取引価格を決めるという行為。現行の「買いたたきの禁止」に加え、価格に関する話し合いの場の確保がルール化される意義は大きい。
下請法では資本金の額のみとなっている適用基準に「従業員数」も追加。警備などサービス提供の場合、委託側が従業員100人超、受託側が同100人以下の取引に新たに法律が適用される。意図的な資本金操作による法律逃れを防ぐ狙いがあるという。
適正取引では、労務費や原材料費、エネルギーコストの上昇分を取引価格に、適正に転嫁することが依然として課題となっている。国は2021年9月から、9月と3月を「価格交渉促進月間」に設定。月間では、仕事を受ける側の中小企業を対象にフォローアップ調査を行っている。直近の調査結果によれば、コスト上昇分をどれだけ取引価格に転嫁できたかを表す「価格転嫁率」は平均で53.5%にとどまった。取適法の施行後も価格転嫁率に関する法的拘束力はなく、自助努力に委ねられる。
警備業の適正取引は、全国警備業協会が2018年に策定し改訂を重ねている「自主行動計画」が拠りどころだ。取適法の施行に向けて全警協は9月に計画の見直しを行った。業界を挙げて積極的に実践し、今回の法改正を大きなチャンスとして生かしてほしい。
【伊部正之】
労災防止2025.12.01
慰霊式のない警備業を
今年もまた、全国警備業協会主催による「全国警備業殉職者慰霊祭」が11月に執り行われた。
今回合祀された御霊は5柱。2022年の第一回から数え、殉職者名簿に記載された御霊は50柱となった。
慰霊祭で家族や会社上司から捧げられる「哀悼の辞」を耳にするたびに、志半ばで将来への道を絶たれた警備員の無念の声が聞こえてくるようだ。
業務中に亡くなった警備員の死を悼み、労働災害根絶へ向けた強い決意を警備業の内外に示すことを目的に始められた慰霊祭だが、例年10月に行われる「産業殉職者合祀慰霊式」をご存じだろうか。
主催は厚生労働省所管の独立行政法人である労働者健康安全機構、後援は同省や労災防止団体が行っている。式の会場は全警協の研修センター「ふじの」への途中駅・JR中央線高尾駅近くにある「高尾みころも霊堂」(東京都八王子市)だ。
みころも霊堂は、産業殉職者の慰霊と遺族の援護のため、労働者災害補償保険法(労災保険法)施行20周年記念事業として1972(昭和47)年、政府や産業界、労働界の寄付などによって建立された。24(令和6)年の慰霊式までに霊堂に合祀された御霊は計27万5897柱という。
霊堂開堂の慰霊式には、当時の皇太子殿下と同妃殿下(現・上皇さまと上皇后さま)もご出席。その後の合祀慰霊式にも5年毎に皇族は出席され、最近では22(令和4)年10月の慰霊式に秋篠宮皇嗣殿下と同妃殿下がご出席された。
みころも霊堂建立からも見て取れるよう、労働災害防止は企業や業界団体のみならず、政府や産業界、労働界全ての悲願でもある。
厚労省の調べでは、今年1〜9月に発生した労働災害により警備業では前年同期比1人増の16人が亡くなっている。死亡と休業4日以上を合わせた死傷者数は同192人増の1582人。予断を許さない状況であるとともに、他業種での労災が減少する中での労災増加は気になるところだ。
12月から年末や年度末に向けては警備業務繁忙期であるとともに、労災の多発時期でもある。
合祀された御霊に思いを致し、安全作業に取り組んでいただきたい。そして、慰霊式の必要のない警備業となることを願わずにはいられない。
【休徳克幸】
