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警備業ヒューマン・インタビュー2025.12.21

仲本恵三さん(南日本警備保障)

全国警備業協会(村井豪会長)は11月10日に都内で開催した「警備の日」全国大会において、人命救助、初期消火、容疑者の確保などで顕著な功績があった「模範となる警備員」17人(12案件)を表彰した。このうち3人の表彰警備員から話をうかがった。

「背部叩打」で人命救助

南日本警備保障の仲本恵三さんは2025年4月23日、那覇市内の商業施設の駐車場で警備業務に従事中、車内で食べ物を喉に詰まらせ意識を失った高齢女性(80代)に対し救命活動を行った。仲本さんは以前、水を飲んだ際に気管に水が入って呼吸困難になり、同僚に助けられた経験があった。背中を強く叩くことで気道の異物を除去する「背部叩打」を繰り返したところ、女性は呼吸が戻り、救急車で病院に搬送され回復した。人命救助に貢献した功労により那覇市消防局長から7月4日に感謝状が贈られた。

<<お年寄りが食べ物を喉に詰まらせたことをどのように知りましたか>>

私は、長年にわたって地域の皆さまから親しまれているスーパーマーケットの駐車場でお客さまを誘導する業務に取り組んでいます。

その日の正午を過ぎた頃でした。駐車場に停めた車から降りてきた女性が、非常に慌てた様子で「母が息をしていません」と助けを求めてきました。車の中で親子で食事をされていて異変が起きたようでした。

最初にお客さまを確認した時、呼吸はなく顔面は蒼白、唇は紫色でチアノーゼが出ていました。ただちに119番通報を行うとともに「何としても助けたい」という一心で行動しました。とっさに思い出したのは、20年ほど前に私が経験した、ある出来事です。

<<どのような出来事でしたか>>

猛暑時に勤務中、水分補給をしようと一気に水を飲んだ拍子に、気管に水が入ってしまったのです。直後に生体反応で「舌根沈下」(舌の根元が咽頭に落ち込み気道が閉塞)を起こし、全く息ができなくなりました。

近くにいた同僚に“背中を叩いてほしい”とゼスチャーをしました。しかし、叩き方が優しく、なかなか正常な呼吸につながりません。声も出せず息もできない状態で「もっと強く叩いて!」との意識は持っていました。そこで今回、訓練以外で応急処置を行うのは初めてでしたが、実体験を活かし「背部叩打法」で“連続して強く叩く”ことを実践しました。

その後、女性は無事に回復されたと聞いて、本当に良かったです。表彰は地元の新聞にも掲載されたので、スーパーマーケットに来店されるお客さまからもお褒めの言葉をいただき、改めて喜びをかみしめました。

<<勤続25年を迎えられました。業務で大切にされていることは>>

お客さまに安心感を持ってお買い物をしていただきたいという思いで勤務しています。安全安心とともに、自分自身の身も守るよう健康管理に留意することも肝に銘じています。

会社幹部による現場指導が逐次行われますので、現場でのちょっとした事案なども気軽に相談しやすい職場環境です。

長年勤務する中で「チームワーク」という言葉を意識するようになりました。隊員仲間はもちろん、上司、内勤社員、皆が力を合わせることで良好なチームワークが生まれ、日々の安全安心を守ることができると実感しています。

「警備の日」全国大会において表彰いただいた喜びを会社の皆と共有しまして、心から感謝しております。

警備という仕事は、さまざまな方々とコミュニケーションが広がる楽しさがあるものです。自分の役割、任務を全うすることで充実感を得られる職業だと思います。

<<オフの日の過ごし方は>>

ご近所のお年寄りの家で、草刈りや枝切りの選定をボランティアで行って喜んでいただいています。

<島袋哲安社長の話>

このたび仲本隊員が全国警備業協会・会長表彰を受けたことを会社として大変誇りに思います。

日頃から誠実に業務と向き合い、25年間積み上げてきた経験と過去の自身の体験も生かして、今回の救命活動を冷静かつ的確に行いました。この行動は「人の命を守る」という警備員の原点を体現したものであり、弊社警備員たちにとっても大きな手本です。

これからも教育・訓練体制を強化し、地域に信頼される警備会社として努めてまいります。

警備業ヒューマン・インタビュー2025.12.11

岡田侑也さん(ミライユ 代表取締役)

警備員の定着まで支援

<<ミライユの求人サービスは効果があると注目されています>>

当社は警備業専門の転職サービス「セキュリティーワーク」を運営しています。「セキュリティーワーク」には2つのサービスがあります。一つは求人サイト、もう一つは人材紹介です。

求人サイトは、警備業に特化して掲載するので警備の仕事に興味がある求職者が集まることから採用率が高いのが特徴です。スマートフォンからの応募が90%以上を占め、年齢層は30〜40代がメインで、年間約1万人のユーザーが利用しています。サイトは約11年続けており、登録者数は延べ約5万人、今も毎月約1000人ずつ増えています。

<<一方の人材紹介はどのようなサービスでしょうか>>

就職・転職希望のユーザーを警備会社に紹介します。人材紹介会社は数多くありますが、警備業は離職率が高い業界であるため、当社は定着するまでしっかりと支援しています。

登録があったユーザーに対して、当社の専任担当者「キャリアアドバイザー(CA)」が付きます。CAは警備業の仕事内容をユーザーに詳しく説明して理解を深めてもらいます。その上で面接を受けてもらうことで、「思っていた仕事と違った」という理由で辞めてしまうことがありません。

CAは入社後もLINEなどで定期的にユーザーとコミュニケーションをとり続け、仕事上の悩みなどの相談があった場合はフォローし、同時に企業へフィードバックを行います。現場で起こっている問題は、社内でも把握しにくいものです。当社はそれを拾い上げ、現場改善の提案を行います。

<<採用支援以外のサービスも提供しているそうですね>>

その一つに「離職防止」があります。当社が紹介した人以外の警備会社に勤務する人を対象に入社日から3か月間、CAが毎月面談します。「入社後、どうですか」「会社に何を求めていますか」などのヒアリングを行い、結果を会社にお伝えします。

働く人の不満を当社が第三者機関として吸い上げ、離職を防ぐ取り組みです。我々は警備業に長く関わっているので「警備員がなぜ辞めてしまうのか」を把握しており、会社とユーザーのことも理解しているので、適切な解決方法を提案できるのです。

そのほか、フリーターの方を正社員にする就職支援、社内でスキルがない人を一旦当社が雇用して営業やウェブマーケティングを教えてから就職してもらう教育事業、働きたくても就労できない障害のある方の支援、外国籍の方の就労支援など、合計15のサービスを提供しています。

<<会社と求職者の両方に手厚い支援を行っています>>

当社ではウェブマーケティングや社内DX化、データ分析などを推進し、効率化による生産性向上を図っています。

CAが適切なタイミングで求職者にコンタクトをとってない場合、管理職にアラートを行うなど行動管理を徹底しています。会社ごとに退職理由などのデータを保管してあり、それをベースにして「新たに紹介する人が過去辞めた人に近い属性なら同様に辞める確率が高い」など、人の感覚ではなくデジタル的に判断しています。

<<警備業の求人を始めようと思った理由は何ですか>>

私は新卒で介護・医療に特化して採用・人材支援を行う会社に就職しました。そこで身に付けたのは「仕事をすることは社会貢献。人が困っていることに対し自分たちにしかできないサービスを創造し提供することが働く上での幸福度につながる」という価値観です。

私はもともと起業を考えていました。「自分にしかできないこと」として身に付けていた「採用とウェブマーケティングの専門性」を活かせるサービスを社会に提供したいと考えました。

対象とする業種として「よい仕事だがあまり知られてなく、将来的に人手不足が進む仕事」を調査したとき、「警備」と「タクシー」の2業種がありました。

警備員の方々に実際に話を聞いてみると、年齢的な理由などから職務に就いている方がいる一方で、やり甲斐を感じプロ意識を持って働いている方もいました。警備員の仕事のよい部分が社会に知られていないと感じ、「警備業の採用をやろう」と決めました。

<<忙しい毎日ですが趣味は?>>

趣味と仕事の境がなくなっています。仕事は遅い時間までやり、帰宅後は世の中のトレンド情報などを収集するほか、TikTokのライブ配信やYouTubeに出演して思いを伝えています。睡眠は毎日、午前4時から午前7時の3時間に凝縮させています。

TikTokは自分でやってみて効果を感じたので、警備会社向けにもSNSのショート動画を作成し採用につなげるノウハウを提供する事業をスタートさせます。「ライブ配信のノウハウがない」という会社にはクリエーターを紹介したり、クリエーターやインフルエンサーの育成事業も始めます。

警備会社自身が採用力を付け、警備の仕事のよさを世の中に発信し、隊員の待遇をよくして辞めない仕組みを作ることが理想で、当社はそのお手伝いをしていきたい。新卒の若者が「警備の仕事をやりたいんだよね」と言うことがあたりまえになる世界にしたいのです。

警備業ヒューマン・インタビュー2025.12.01

八下田達哉さん(カルテック 代表取締役社長)

警備業に「公示価格」を

<<警備会社のカルテックの社長に就いて15年になります>>

私はカルテックと、貸切バス事業を行っているキャリー交通、そして複数の関連会社を経営しています。警備業一筋ではなく、異なる事業領域を横断していることが最大の強みだと自負しています。警備業界の常識に染まりきらない“異質の視点”を持つことで、警備業が抱える構造的な課題が鮮明に浮かび上がってくるのです。

その象徴が「制度の差」です。貸切バス業界には「公示価格」という安全を守る制度が明確に存在します。適正な労務単価と安全運行を担保するために不可欠な仕組みであり、基準に従わない料金を提示すれば行政処分の対象になります。「貸切バス適正化センター」による巡回指導も義務化されています。

貸切バス業界では運賃と安全が制度としてリンクしていて、国が最低ラインを保証する構造が確立されているのです。

警備業では、警察による巡回指導はありますが、料金については完全な自由競争です。過度な価格競争が起きれば、人件費の低下や教育コストの削減といった安全の根幹を崩す現象が起きます。

警備業は安全を提供する産業であるにもかかわらず、安全を支える仕組みが制度面で極めて脆弱なまま放置されていて、この矛盾は看過できません。私は長年、この構造を変えなければ、持続可能な業界にはなれないと感じてきました。

警備業にも「公示価格制度」を導入すべきです。安全や教育の原価を踏まえた適正な料金基準を国が明示し、最低限守るべきラインを制度化することが不可欠です。安全への対価を社会全体で共有しなければ、真の安全は維持できないと思います。

<<カルテックでは、警備員が足りない会社と警備員を出せる会社をウェブ上でマッチングさせる「SECURINET(セキュリネット、警備会社協働ウェブサービス)」を今年3月から行っています>>

公示価格が導入され、労務単価が改善されたとしても、警備員不足の根本的な解決にはなりません。人口減少が進む日本で、採用を増やすという従来型のアプローチには限界があります。DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進も大切ですが、警備需要が高まるなか、同業者が協力し合う環境を整えることが不可欠だと思い、全警協加盟員を対象にSECURINETを始めました。

会員数はまだ多いとは言えませんが、県境を越えた協働が実現するなど成果が生まれています。より多くの警備会社に使っていただけように、サービスの内容を分かりやすく伝える努力をしていきたいと思います。

私は来年1月に、「一般社団法人全国警備業協働推進委員会」を設立します。協働事例のワークショップや、会員アンケートに基づいた政策提言を行っていきたいと考えています。

<<経営する会社では、「心から安心できる世界を創造する」を経営理念に掲げています。理念を具現化するための「社長塾」をカルテックとキャリー交通の従業員を対象に行っています>>

月1回の社長塾では私がお題を出して、従業員にワークショップ形式で考えてもらい、発表してもらっています。お題は例えば、「自発的にスピード感をもって行動します――を現場に当てはめた時、どういった業務改善ができますか」。花火大会の警備で、期待を超える行動が顧客の安心につながるなど、社長塾の成果が表れています。

カルテックとキャリー交通の従業員からメンバーを選抜して、事業そのものを創造するための「未来創造会議」も月1回行っていて、事業としてやることが決まったものもあります。

カルテックでは、企業の「危機対応力」を本質から底上げする取り組みを来年度から進めます。

<<栃木県警備業協会青年部会(部会員10人)の部会長を務めています。今年の「警備の日」活動では、「宇都宮餃子祭り」で警備業をPRしました>>

活動する人が増えることで、青年部会でできることが多くなると思います。経営者視点を持った部会員を増やしていきたいです。

<<休みの日はどのように過ごしていますか>>

平日は多くの人と向き合うので、休日は一人で過ごす時間を大切にしています。車やバイクで走りに行ったり、カフェで読書をしたり。一人でバーに立ち寄ることや、家で映画を見て終わる日もあります。日々判断の連続だからこそ、心を静かに整える“余白の時間”を持つようにしています。