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視点

最低賃金2022.08.01

料金引き上げ、積極的に

今秋から全国の職場に適用される「最低賃金」の引き上げの目安額が近く決定する。昨年に続き今回も引き上げ額のアップが予想され、これにより全国加重平均の最賃額も過去最高額となるだろう。

6月28日に始まった今年度の最賃を検討する審議会の冒頭、後藤茂之厚労相は、政府が6月7日に閣議決定した「新しい資本主義グランドデザイン」と同実行計画、経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針)への“配慮”を求めた。

新しい資本主義グランドデザインは最賃について「物価が上昇する中、官民が協力して引き上げを図る」、骨太方針は「中小企業への支援や取引適正化などに取り組み、地域間格差にも配慮しながら早期に全国加重平均1000円以上を目指す」と明記、それぞれ最賃引き上げを後押ししている。

社会経済情勢も最賃引き上げの追い風となっている。ロシアによるウクライナ侵略に対する世界各国の経済制裁に伴う原油や小麦などの価格高騰による物価高。欧米各国では、これに伴うインフレ抑制のために金利引き上げが行われているが、わが国では日銀が依然低金利政策を続けているために円安が進行、輸入品の価格高騰による商品値上げが相次いでいる。このため賃上げを求める声は日に日に大きくなっている。

日本商工会議所などの中小企業団体は、近年の政府主導による3%台の最賃の大幅な引き上げが続いていることに対し「中小の経営実態を反映していない」と反発しているが、最賃引き上げを跳ね返すまでには至っていない。

最賃順守は企業の義務

最賃は最低賃金法に規定された企業に課せられた義務であり、違反すれば同法に基づき罰則が科される。何よりも「最賃違反の企業」としてマスコミで報じられたりSNSで拡散されたら、その企業は人材確保の道を閉ざされこととなるのは必至だ。

警備各社でも自社の時給が、日給や月給を時給に換算した額が、それぞれの地域の最賃を下回ることのないよう再確認が求められる。

一方で、AIなど科学技術の進展が目覚ましいとはいえ、依然として警備業は個々の警備員に頼らざるを得ないのが実情。最賃引き上げは人件費アップとして企業経営に重くのしかかる。

警備各社には今後、さまざまな経営合理化が求められるが、最賃をクリアするためには、警備料金を引き上げて「原資」を確保するしか他に手立てはない。

幸い、その“追い風”も吹いている。

岸田政権は昨年12月に「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化会議」を設置、中小企業が労務費や原材料費のアップを価格に転嫁できる環境整備に乗り出した。同初会議には全国警備業協会の中山泰男会長も出席を求められ、警備業の課題として「低賃金の是正」を訴えた。

政府を挙げた「適正取引推進」の取り組みもある。全警協は「適正取引推進に向けた自主行動計画」を近く改定するとしており、その取り組みはさらに加速・強化されるに違いない。

企業経営にとっては悩ましい最賃アップだが、業界の悲願である警備料金引き上げの好機と捉え積極的に取り組んでほしい。

【休徳克幸】