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視点

広報活動2023.05.21

警備の魅力を内外に発信

全国警備業協会が構想を練っていた警備の魅力を内外に発信する広報活動の「プロジェクトチーム」が近々、発足することになった。今年度の重点テーマと位置づける取り組みだ。目指すところをキャッチコピー風に言うなら次のようになるだろう。

「若者が魅力を感じる警備業のPR」「業界発展のためのビジョン作り」「警備員不足を克服する切り札に」「人の心をひきつける次世代の警備業を目指して」etc。

広報活動を推進するエンジン役を担うのは青年部会だ。現在、都道府県警協の青年部会は39部会を数えるまでになった。

警備業界は、今後の5年、10年で、どのような業態になるのだろうか。デジタル化一つとっても、政府主導で急ピッチに進展している。さらに生産年齢人口の減少も相まって、警備業の在り方が大きく様変わりすることは明白だ。

プロジェクトの発足に当たって、青年部会の柔軟な発想と思考に期待したのは至極当然の成り行きであろう。もちろん、時々の節目で、その道の先輩たちの知恵を借りながらの作業であることは言うまでもない。

当方、アナログ人間を承知で思いつくままに広報活動のあれこれに思いを巡らせた。若者をターゲットとするなら、TV・CMからSNS(ネット交流サービス)まで多岐にわたる。そこではメディア・広告媒体とのジョイントが必要だろう。予算措置も視野に入れなければならない。

コンセプトは2つ。まずは、「警備業は社会貢献度が高く、人に誇れる仕事である」と感じてもらうことを念頭に置いて取り組むことが肝要と思われる。

具体的なネタで言えば「東京五輪」で海外メディアが絶賛した警備員の活躍ぶりをいかに取り込むかも重要なキーポイントだ。五輪警備のレガシーを生かす知恵を出し合ってもらいたい。

2つ目、これが一番肝心なことだが、警備員の賃金アップに向けた自主行動計画への取り組みを強くアピールしなければならない。全警協が昨秋、新しく制定した「適正取引・適正料金で処遇アップ!〜好循環を目指して〜」のスローガンを可視化して活用したい。

経営者の意識改革

4月中旬、新潟市であった関東地区連総会でのこと。全警協・中山泰男会長は熱い口調で新スローガンの実現を訴えた。プロジェクトが発信する「内外」の「内」に向けた思いである。警備の魅力を高めるには<経営者の意識改革>が急務であると言いたかったのだ。再録したい。

「今こそ適正取引に向けた自主行動計画をフル活用し、業界が一丸となって適正価格の引き上げに取り組まなければなりません。未だ道は遠い状況です。悪質なダンピングは自らの首を絞めることになるのです」

中山会長は厚労省の統計による警備員の平均賃金調査にも言及した。これまでの警備業は対象145職種の135番目。それが直近では140番目に下がった。「警備の魅力」を著しく低下させる数値だった。

今春、九州の警備会社が下した英断を紹介したい。従業員は180余人。4月から全員平均8%のベースアップを実施した。社会保険料の増加分などを含め3200万円近くの資金投入だった。経営者は次のようにも語った。

「社員には弊社に入社してよかったと感じてもらいたい。私たちは社員を家族だと思っているのです。9月の完成を目指してスマートな揃いの制服の製作も進めていますよ。秋の国体警備でお披露目です」――。

【六車 護】

G7警備2023.05.01

求められる「対テロ教育」

5月19日から21日までの3日間、広島市内で主要国首脳会議(G7サミット)が開催される。出席するのは、日本をはじめフランス・アメリカ・イギリス・ドイツ・イタリア・カナダの7か国と欧州連合(EU)の首脳。ロシアによるウクライナ侵略問題などの地域情勢や核軍縮・不拡散、経済強靱性・経済安全保障、気候・エネルギー、食料など多岐にわたるテーマについて意見を交わす。

これに先立つ4月15日〜16日に札幌市内で開催された「気候・エネルギー・環境相会合」をスタートに、今年は12月8日〜10日に水戸市内で行われる「内務・安全担当相会合」まで、15のG7閣僚会議が全国各地で開催される予定だ。

G7サミットはもとより、これら閣僚会議は主要国の要人が集まる会合だけに、警戒・警備も厳重を極める。すでに4月中から都内のターミナル駅では、コンコースやコインロッカーなどを警戒する警備員の姿を多く目にするようになった。全国各地でも同様の警戒・警備が行われている。

一方で、4月15日には和歌山市内の漁港を選挙応援で訪れていた岸田文雄首相に爆発物が投げつけられる事件が発生。昨年7月の安倍晋三元首相銃撃事件が頭をよぎった読者も多かったのではないだろうか。

両事件の犯人は、特定の組織に属さない単独犯とみられ、「ローンオフェンダー(単独の攻撃者)」とも呼ばれる。警察などの治安当局にとっては存在を把握しにくい対象だ。また、犯行に使用された手製とみられる銃や爆弾は、インターネットやAIなどで得た知識と市販品を用いて製造することが可能とされており、新たなローンオフェンダーによる新手の犯行も予想される。

「ローンオフェンダー」

ローンオフェンダーの特徴は、「事前にテロ実行場所を下見する」ともいわれている。実際に安倍元首相襲撃犯も事前に別の演説会場を下見、犯行が難しいと判断して奈良市内の演説会場で凶行に及んだとみられる。

日常的に施設警備や交通誘導警備、現金輸送などの各種警備現場で、周囲の警戒・警備にあたる警備員には、不審者や不審物の早期発見という役割も期待される。

その期待に応えるためにも、警備各社には新任教育や現任教育の機会などを活用した「対テロ教育」の実施が求められる。

不審者の特徴や見極め方、不審物発見時の対処法などを多くの警備員に教育することで、事件の未然防止や警備員が事件に巻き込まれることを防ぐことにもつながる。

2021年に開催された「東京五輪・パラリンピック大会」では、全国の警備業が「ワンチーム」となって大会の安全を支えた。今回のG7でも全国の多くの警備員が、広島や閣僚会議開催地で警戒・警備に従事している。五輪警備の際に習得した「レガシー」などを駆使、全国の警備会社が協力してG7サミットの安全を支えてほしい。

警備業がサミットの安全の一翼を担うことにより、警備員は誇りややりがいを自覚し、警備業の社会的地位向上にもつながるに違いない。それを警備料金のアップ、ひいては警備員の処遇改善にもつなげてほしい。

【休徳克幸】