視点
街頭犯罪2025.03.01
「青パト活動」のすすめ
国民の「体感治安」が悪化しているという。警察庁が昨年10月に行ったアンケート調査では、「この10年間で日本の治安は悪くなったと思う」という回答が76.6%を占めた。
刑法犯認知件数は2002年の約285万件をピークに減少傾向で、21年に戦後最少を記録。しかし、コロナ禍収束後に増加に転じ、2月に警察庁が発表した24年犯罪統計では、認知件数約73万件となった。ピーク時の4分の1程度とはいえ3年連続増加している。
特に近年は、闇バイトで実行犯を募る匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)による強盗殺人や高額被害の詐欺など凶悪事件が全国で相次いで発生していることから、治安が悪化したと考える人が増えているのだろう。
一方で日常生活圏でも体感治安を悪化させる要因もある。自転車盗をはじめ、車上ねらい、ひったくりなどの「街頭犯罪」の増加である。街頭犯罪の認知件数は昨年、全国で約22万件で前年比4.6%増加。刑法犯総数の押し上げ要因となっている。
街頭犯罪の撲滅に向けては各地域で防犯カメラの設置や自主防犯パトロールの増強などの取り組みが行われている。自主防犯パトロールや児童の登下校見守りなどの活動は、住民や企業のボランティアによって支えられている。生活安全産業である警備業界でも積極的に取り組んでいる会社や団体も多い。活動を通じて住民やほかの企業や団体と交流の輪が全国に広がれば、警備業の存在意義やいち早く不審者の存在や街の違和感に気づくプロの技能を示す機会にもなるだろう。
新経済対策で助成金
国民の体感治安の悪化を受け、政府は昨年11月、新たな経済対策を策定した。この中に「国民の安心・安全の確保」として、防犯カメラの設置や、青色防犯パトロール(青パト)団体への活動助成が盛り込まれた。国民の安全安心を守るため政府の経済対策を、警備業の認知度を高める好機として活用できないだろうか。
青パトは車両に青色回転灯を装着し、児童の登下校の見守りなど自主防犯パトロールを行う04年12月に全国で始まった活動のこと。団塊世代の警察職員の大量退職や交番の統廃合などに伴う不安を払拭するため、警察や運輸局の許可を得た町内会などが、自主防犯パトロールに臨んでいる。青パトも20年を経て、各地で高齢化や人手・資金不足により継続が困難になるという団体が現れている。人口減少と高齢化が進む地方では、地元企業が関わることで担い手を確保しているケースもある。
警備業協会として青パト活動に取り組んでいるのが山形警協(我妻寿一会長)だ。13年12月に警協会長名で県公安委員会に青パト団体として登録した。現在は会員49社中10社の車両28台、実施者58人を登録し、警協は車両に取り付ける青色回転灯や「防犯パトロール実施中」と記されたマグネットシートの貸し出し、実施者向け講習会を開催している。ガソリンは会員の“自腹”だが、業務車で地域の防犯活動に参加することで、誰が地域の安全安心を守っているのか、住民にも伝わりやすい。
山形県の24年の街頭犯罪認知件数は458件。前年比17.5%減少した。警備業界が地域の防犯活動に貢献することで、安心して暮らせる住民が増えることを願っている。
【木村啓司】