視点
防犯活動2025.01.21
「一段の努力」期待
「治安情勢は厳しい」。警備業協会の集まりで、あいさつした警察関係者はそう話した。強盗や詐欺などの多発を受け、犯罪に巻き込まれる不安を感じている人は少なくないように思う。そうした中、「警備業への期待、役割は高まっている」という声を業界内外からよく聞くようになった。
犯罪は増加傾向にある。警察庁は毎月、刑法犯認知件数を発表しており、2024年は11月末までで67万8254件。前年同期を約3万2000件上回っている。「3年連続増」となるのは確実な情勢だ。オレオレ、架空料金請求などの「特殊詐欺」は依然として多く、うそのもうけ話や恋愛感情を抱かせて金銭をだまし取る「SNS型投資・ロマンス詐欺」も増加が続いている。
24年に発行した本紙を読み返してみた。警備業協会や警備会社が年間を通じ、犯罪の防止・抑止活動に取り組んでいることが改めて分かった。
昨年の元日に起きた能登半島地震。発生後まもなく被災地に入った中部地区警備業協会連合会は、複数の避難所で夜間パトロールに当たった。富山警協青年部会は侵入窃盗を警戒し、徒歩と車両で被災住宅街を巡回した。
警備業による防犯のための啓発活動は警察と連携して行うことが多く、独自の工夫も見られる。例を挙げれば、愛知警協は昨年、県警と「安全・安心なまちづくりの推進に関する協定」を締結した。犯罪多発エリアでのパトロールでは、会員会社の車両に、協会で作製したマグネットシートを貼付。安全安心のイメージカラーとしてシートには緑色を取り入れた。
警察との連携では、年金支給日に合わせた特殊詐欺への注意喚起や時季を捉えた痴漢撲滅、自転車の盗難防止に向けた活動も各地で展開され、警備業の認知度向上につながったはずだ。
子供たちの見守り活動にも力を入れている。静岡警協は昨年、オリジナルステッカーを「子供110番の家」に登録されている会員会社に配布。業界マスコットキャラクターのイラストをステッカーにあしらい、「困った事があったらいつでも声をかけてね」というメッセージを添えた。
セシム鴨川営業所(千葉県鴨川市)は、市内小学校周辺での見守り活動を継続して実施。学校関係者やボランティアからはこんな声が寄せられた。「警備会社の制服は犯罪やトラブルの抑止力になる効果が期待される。車のドライバーの交通ルール順守にもつながり、心強い」。
昨年8月以降、首都圏では「闇バイト」が絡んだ強盗事件が相次いで発生している。「高額報酬」「即日即金」「ホワイト案件」などをうたったSNSでの募集に若者が応募し、実行役として犯罪に加担した。
警備業界では、埼玉警協青年部会がいち早く、闇バイトの問題に目を向けていた。若い世代に注意を呼び掛けるポスターを一昨年、自主的に作製し、県内の高校や大学に配布。ポスターには、分かりやすくインパクトのある文言、画像を配した。
闇バイト事件などにより、体感治安が悪化しているといわれている中、社会の声に応える「一段の努力」を警備業界に期待したい。それは結果として、警備業の社会的評価をさらに高めるとともに、抜本的な処遇改善につながっていくと思う。
【伊部正之】
謹賀新年2025.01.01
2025(令和7)年を迎えました。警備業に携わる全ての人にとって、新たな年が実りと幸多き年となることを心より祈念いたします。
昨年元日は能登半島地震が発生、翌日には羽田空港で航空機事故が発生するなど波乱の年明けとなりました。国の内外ともに激動が続き、昨年最終号の本欄では「混乱の年」と一年を振り返りました。
今年は混乱のない穏やかな日常となり、警備業によき風が吹くことを願ってやみません。
人手不足、適正警備料金確保など課題山積の警備業ですが、編集部一同、これまで以上に警備業の皆さんに寄り添い、お役に立てる情報の発信に努めてまいります。今年も「警備保障タイムズ」への変わらぬご愛顧、宜しくお願い申し上げます。
「その時」に備える年だ
今年4月から半年間にわたり「大阪・関西万博」が開催される。一部では「国民的盛り上がりに欠ける」とも言われてきたが、コロナ禍の中で2021年に開催された「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」がそうであったように、いざ始まれば連日、多くの人々の耳目を集めるに違いない。
大阪では1970年以来55年振りの開催となる万博。その安全・安心な開催を縁の下で支えるのは、もちろん警備業である。
近畿地区警備業協会連合会傘下の府県協会はもとより、警備の主体となる関西警備業各社の警備員の皆さんには、これまでの業務の中で培ってきた新たな警備ノウハウを如何なく発揮して、わが国警備業の存在感を示していただきたい。そして「東京2020」と同様に新たな“警備レガシー”を手にしてほしい。
小紙恒例の「新春特別企画」では、例年のように業界トップの皆さんに警備業界や自社への思いを寄稿いただいた。全国警備業協会の村井豪会長も、万博開催が警備業発展の好機となることに期待を寄せている。
その一方で「災害対応」にも言及した。これまで警備業が行ってきた災害支援の経験の中で明らかになった、災害時における警備業の役割の確実な実施と、さらなる取り組みを求めている。
30年の節目の年
今年は1995(平成7)年に発生、未曽有の被害を兵庫県内をはじめとする関西地方にもたらした「阪神・淡路大震災」から30年となる。そのような節目の年に、警備業のこれまでの練度が試され、さらなる飛躍につながることも期待される万博が同じ関西地方で開かれる。
年末の出張時に新幹線車窓から見た神戸の街並みは、かつてここで大地震が発生したとは思えぬほどの発展ぶりだった。一方で、昨年1月1日の能登半島地震や全国で相次いだ豪雨災害は、わが国が「災害列島」であることを再認識させた。
南海トラフ地震や首都直下地震など「目の前に迫っている」とされる危機は多いが、警備業に求められる役割も大きい。
「その時」に備えた取り組みに、早過ぎるということはない。警備業の災害支援活動の契機となった阪神・淡路大震災から30年の今年を、大地震をはじめとする自然災害への備えをあらためて考え、取り組みを見直す契機としなければならない。
【休徳克幸】