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視点

警備の日2022.10.21

青年部の団結深める機会

今年も「警備の日」が近づいた。1972年11月1日に警備業法が施行されたことにちなみ、全国警備業協会は2015年3月の理事会で「11月1日」を警備の日に制定。記念日として日本記念日協会に申請し認定された。その目的は「警備業がこれまで以上に社会からの理解と信頼を得ること」にある。

今年も11月1日を中心に、都道府県協会が趣向を凝らした警備の日の活動を予定している。愛媛警協は、県のマスコットキャラクターの着ぐるみ3体を松山市中心街のアーケードに動員し、3回目となるブース出展を予定。毎年、買い物客など通行する人にアンケート調査を行っており、今年は小学生を対象に実施する。子供の目に警備業がどのように映っているのか興味深い。

徳島警協は、ハローワークと連携し、求職者に向けた「警備の仕事相談会・PRセミナー」を開く。人手不足が深刻な運輸・建設・介護などの業種と合同で行うセミナーは各地のハローワークで行われているが、警備業のみで開催される貴重なケースとなる。

四国地区で予定されているこれらの活動は、いずれも「青年部」が企画・運営の中心を担う。他県でも青年部が活動の中核となる協会は多く、これまでの警備の日にも若い力がユニークなイベントを企画してきた。

その一つに宮城警協の「警備業セキュリティフェア」がある。昨年のフェアは「大型商業施設でのリアル・イベント」と「人気ユーチューバーのライブ配信」というハイブリッド開催。現役警備員出演のランウェイ(ファッションショー)や高校生によるライブ演奏・ダンス、自衛隊車両の展示、警備会社合同の企業説明会など盛り沢山の内容だった。

取材して印象的だったことは、イベントを裏方として支える青年部のチームワークだ。青年部長の小屋広和さんからこんな話を聞いた。「かつて我々はただの商売敵でした。東日本大震災が発生して警備料金が高騰し、仕事を奪い合った時期があります。青年部が設立され適正料金のことを学んでから皆の考えが180度変わりました。腹を割って話し合ってみると、誰もが『震災需要は一時的なもの』と将来に不安を抱いていたのです」。青年部はセキュリティフェアを企画し同じ目標に向かって一緒に汗をかくことで、団結がさらに強くなったという。

小屋部長は「顔を知っている人がいる会社の仕事を奪う気にはなりません。会員社が全て青年部に入ってもらえたら県内の警備料金は上がると思います」と笑う。各協会の青年部会にも、警備の日の活動を横の連携や団結を深める機会にしてほしい。

青年部会には警備業の魅力を発信する「広報」の中心的役割を担うことが期待されている。全警協の中山泰男会長は今年3月の「全国青年部会長・女性部会長会議」で「ビジョン、デジタル、イベントをキーワードに今こそ業界の未来に向けてアクセルを踏み込む時」とエールを送った。深刻な人手不足が続く状況の中、10年・20年先を見据えた業界のアピールは、重要度を一層増している。

今年は日本に警備業が誕生して60年目の節目。8回目となる警備の日の活動で、各協会はどのように業界のイメージアップを図るのだろうか。警備業の新時代を切り開くための意義ある活動に期待したい。

【瀬戸雅彦】

ユースエール2022.10.11

「認定」受け、若者迎えよう

「ユースエール認定」をご存知だろうか。若者の採用に積極的に取り組む企業を支援する制度で、雇用管理が優良な中小企業(300人以下)を厚生労働大臣が認定するものだ。

認定の要件は▽直近3事業年度に採用した新卒者など正社員の離職率が20%以下▽前年度の正社員の月平均所定外労働時間は20時間以下▽年次有給休暇の取得率は平均70%以上または年間取得日数10日以上▽育休制度あり――など。

新卒採用の実績がない会社も諸要件を満たしていれば認定を受けることができる。

メリットは、ハローワークでの重点的なPRや認定企業限定の就職説明会へ参加できることだ。厚労省の「若者雇用促進総合サイト」に会社情報が掲載される。求人票には「ユースエール認定マーク」が印刷できる。

2015年のスタート以来、全国で908社(10月6日現在)が認定を受けているが、警備業者はクレーンヒル警備(山形県鶴岡市)、東和セキュリティ(静岡県浜松市)、電気硝子ユニバーサポート(滋賀県大津市)、ATUホールディングス(福岡市)、DENKEI(デンケイ、佐賀市)の5社にとどまる。

20年に認定を受けて昨年、今年も認定基準を満たし更新しているATUホールディングスの岩﨑龍太郎社長は、ユースエールの意義をこう語っている。

「求職者に対しては『認定マーク』の説明から入って、安心して働ける職場であることを伝えます。この認定が即、若者の応募増加につながるわけではありませんが、適正な労務管理を徹底している証になるものと考えています」。

若者の採用と定着促進は、企業の将来に関わる課題だ。他業種からの人生経験豊富な転職者を即戦力とするだけでなく、新卒者・若者の採用活動に力を注ぐ警備会社は増えつつある。長い目で次世代の経営幹部、警備現場のリーダーを育成することは企業の成長につながるためだ。

若者の“長い職業人生”を預かるうえで、長時間労働の是正や年休の取得推進など職場環境を整備して迎え入れることは経営者の責務といえる。職業選びにあたって、今なお警備業に付きまとう旧来の“3Kイメージ”を払拭するためにも、ユースエール認定は効果を上げるだろう。

現在、認定をめざしている警備会社の担当者は「社員全員の勤怠記録や有休取得の状況など提出すべき書類は多く認定のハードルは高いが、だからこそ意義があると思っている」と話した。労働局のアドバイスを受けながら準備を進めているという。

今後、厚労省サイトの「ユースエール認定企業一覧」に掲載される警備会社が増えるにつれて、警備業界全体のイメージはさらに向上していくに違いない。

コロナ禍で迎えた3度目の秋、感染防止と経済活動の両立が進む中で有効求人倍率は8か月連続の上昇となった。警備業は、人材確保の方策に一層の工夫を凝らさなければならない。

処遇・職場環境の改善に加えて本人の努力に応じキャリアアップできる仕組みなど“魅力ある職場づくり”と、都道府県警備業協会の青年・女性部会をはじめ業界を挙げたイメージアップ活動。各社と業界の取り組みが相まって、より多くの若者が警備業を選んで定着し、今まで以上に活気あふれる業界になってほしい。

【都築孝史】

協会設立50年2022.10.01

健全な発展へ決意新たに

今秋は全国警備業協会をはじめ、都道府県警備業協会の「設立50周年記念式典」が目白押しだ。

すでに式典を終えた9月の兵庫警協に続いて10月は滋賀、11月7日には全警協が「警備の日全国大会」と結び合わせる形で創立50周年式典を執り行う。同月24日は北海道、神奈川、島根の3警協が揃って開催する。年が明けた1月は京都警協である。

警備業協会が積み重ねた50年の歴史を振り返るとき、<十年一昔>という字句が思い浮かんだ。その意は「10年たてば、もう昔。10年を一区切りと見て、その間には大きな変化がある」というもの。この一語にこと寄せると、協会設立は<五昔>も前のこと。半世紀の歩みである。

協会がスタートにあたって掲げた看板の名称は、連合会、協議会、協同組合などさまざま。昨年10月に創立50周年の節目を祝った東京都警協は「警備会社連絡協議会」だった。設立に賛同して参加した警備会社は47社である。今年6月には1002社になった。

翌年に発足した全警協は「警備業協会連合会」。加盟会社は26都府県協会に所属する340社だった。現在は7119社。全警協未加盟を含む認定警備業者は1万社を超えた。警備員数は約58万人。市場規模は3.5兆円に膨らんだ。隔世の感ひとしおである。

井戸を掘った人たち

これまで警備会社を興し、協会設立に関わった人たちと何度か話をする機会があった。警備業界の草創期に井戸を掘った先駆者である。共通していることがあった。それぞれに厳しい日々があっただろうに、そろって明るい笑顔で、ときに笑い飛ばすように語ったのだ。曰く――

「施設警備の仕事をもらうのに社長が駆け込み営業をするのは当たり前の時代」「警備員の不祥事もあって企業モラルを高めるために知恵を絞った。これがまとまらなくてね。何度も怒鳴り合いだ」「イベントの共同受注など考え及ばなかった」「全警協は警察庁、県警協は県警本部と自治体に何度足を運んだことか」――。

50周年の節目を迎えた協会と会員は、警備業の健全な発展に向けた決意を新たにしているはずである。取り組む課題は明らかだ。要は、経営に携わる人たちが自ら率先実践して結果を出すことであろう。

6月の全警協総会で採択された「令和4年度事業計画」は、取り組まなければならない課題を詳細に掲載している(機関誌、セキュリティ・タイム7月号)。細字を詰め込んだ編集ではあるが一読に値する。

協会を支える会員会社の経営者は2代目に引き継がれ、さらには3代目の若いリーダーも出現した。そんな時代、次代を担う青年部会の活動が全国的な広がりを見せて盛り上がっている。女性の活躍を推進する女性部会は、女性警備員の雇用拡大という“新しい風”を吹き込んでいる。

これから10年。業界は想像を超える速さで業態の変容が予想される。今日を生きる人たちは、先人の労苦に思いを馳せながら、社会公共の安心と安全に寄与する「エッセンシャルワーカー」としての確かな地歩を築いてもらいたい。

次の節目の60周年。経営基盤の強化、警備員の処遇改善、人手不足への対応、DX化の推進などに手応えを感じ、苦労した甲斐があったねと皆で笑いを交えながら<十年一昔>を回顧できる日が来ることを願っている。

【六車 護】