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視点

協会会長2024.06.21

新会長ガンバレ!

5月8日に新潟からスタートした2024年度の都道府県警備業協会の定時総会は、6月25日の三重を残すのみとなった。

昨年の新会長就任は1人だったが、今年は11都府県協会で新会長が誕生した。近年では20年の11人と同数だが、今回は全国警備業協会の会長も交代、中山泰男氏から村井豪氏にバトンが受け継がれた。

都道府県協会には、青年部会出身の若い副会長や理事、監事も数多く加わり、新たな風が吹き込まれた。

退任した前会長には、コロナ禍で多くの制約がある中、さまざまな工夫を凝らして協会活動をけん引してきたことに心より敬意を表する。新会長には、適正警備料金の確保や人手不足への対応など、依然山積する課題解決へ向けた手腕発揮を期待したい。

価格転嫁と広報を強化

全警協は24年度、価格転嫁や広報への取り組みを強化する。

価格転嫁は、人件費をはじめとする最近の諸物価高騰を警備料金に転嫁、適正警備料金を確保しようというもの。各社の経営基盤強化や警備員の処遇改善の原資となるだけに業界を挙げた一層の取り組みが求められる。

全警協は、警察庁も価格転嫁を支援していることを示す“ネーム入り”リーフレットの活用を勧めるとともに、国土交通省を通じて建設業界に、総務省を通じて全国の自治体に、それぞれ価格転嫁による適正警備料金の支払いを呼び掛けている。

都道府県協会も全警協の取り組みに歩調を合わせ、地元建設業界や県・市町村などの自治体に積極的に価格転嫁や適正料金の実現を働き掛けてほしい。

一方で、ある県の総会では、協会副会長が懇意にする与党幹部から「“業界の皆さんに伝えて”と託された」と次の言葉を紹介した。

――国交省などに働き掛けて単価は上がった。しかし、ダンピングで下がったら再び単価を上げることはできない。

各協会は加盟・非加盟を問わず地元警備業界や発注者にダンピング防止を強く呼び掛け、「警備業は安易な値下げ要請には応じない、手ごわい交渉相手」という評価を定着させてほしい。

広報への取り組み強化では全警協は、警備業のイメージアップやPRのために動画や児童向け図書を製作する。

各協会には、これら新たな広報ツールの活用とともに、警備員が「最前線の広報マン」でもあることを忘れないでほしい。

「東京2020大会」では、大会警備に従事した警備員の素晴らしい立ち居振る舞いが海外メディアから絶賛、わが国警備業の質の高さが世界中に発信された。

警備員の的確な案内や誘導、有事での毅然とした対応は当然のこと、相手に好感を与える身だしなみやマナー、言葉遣いなどは警備員や警備業のイメージアップには不可欠である。

11月1日の「警備の日」PR活動も全国に根付きつつある。青年部会や女性部会など多様な意見にも耳を傾けた効果的なPR活動を、慢性的人手不足打開の一助としなければならない。

これら課題解決や警備業発展のための業界活動の先頭に立つのが各警協の会長である。「新会長ガンバレ!」。エールを送らずにはいられない。

【休徳克幸】

デジタル化2024.06.11

課題改善につなげよう

各地の警備業協会が開く定時総会が続いている。会長あいさつでは業界の課題の一つに「デジタル化」が挙げられていた。

デジタル化とは、デジタル技術を活用して業務効率化や生産性向上を実現させる取り組みのこと。事務作業のペーパーレス化(電子化)から、AIを活用して業務に付加価値を生み出すDX(デジタルトランスフォーメーション)まで幅広い。

警備業では、省人化を図りながら業務の精度向上、従業員のモチベーションを高めて定着率アップ、付加価値を創出して売上を伸ばし経営基盤強化――など慢性的に続く課題の改善につながる。

全国警備業協会では事務局内にデジタル化推進チームを編成し、特別講習や指教責講習のデジタル化を進めている。今後は各講習の受付システムの構築、業務のDX化や資機材の開発に関する調査・研究などにも取り組む。

今年に入って警備業界で話題を呼んでいるのは、警備現場でのAI活用だ。施設警備では、AI機能を搭載した監視カメラによる顔認証や行動検知機能の活用が進められている。5月末に大阪市内で開催された「防犯防災総合展」に出展した行動認識AIのアジラは、多くの警備会社と連携して実証実験を行い、各業務に沿った検知項目をAIに学習させている。

交通誘導警備を行う警備会社では、AI交通誘導システムの導入が広がりそうだ。国土交通省は2月、地方整備局などに「交通誘導システムを活用した費用計上方法」を通達。交通誘導システムを「共通仮設費」として見積りに計上できるようになったことが全警協から都道府県協会に通知された。

新卒者採用に成功

山口県岩国市の警備会社・CGSコーポレーションは、高速道路上の工事現場で工事車両の安全な退出を図る「高速道路AI退出支援システム」を山口大学と共同開発した。昨年9月に東京都内の展示会で発表し、実用化が始まっている。同社・豊島貴子社長(山口警協会長)は「デジタル化を喫緊の課題と捉えながら具体的な取り組みに躊躇している警備会社は多いと思います。警備業務のノウハウを新しいシステムの構築につなげることができた当社の例を見て、一歩踏み出してもらえれば嬉しいです」と話す。

山梨県昭和町に本社を置くKB―eyeが開発したAI交通誘導システムは現在、全国17か所で活用されている。能登半島地震の被災地では警備員が不足していることからシステム導入を決めた。同社・秋山一也代表は「2号警備は地場産業です。AI交通誘導システムはぜひ地域の警備会社に活用してもらいたい」と思いを語る。

秋山代表は甲府市内で2号警備会社・タスクマスターを経営している。AI交通誘導システムの活用は求人にもよい影響を与えているという。業務のイメージアップにつながり、地元の新卒者の採用に2年連続で成功している。

KB―eyeは6月24日、東京都練馬区内で警備会社を対象にした「2号警備フェア」を予約制で開催する。フェアにはAI交通誘導システムをはじめ、警備員教育用VRや管制業務システム、発注元・警備会社のマッチングシステムなどを展示する予定だ。さまざまな業務のデジタル化に寄与する機器・システムの現物を見て体験できるよい機会となりそうだ。

【瀬戸雅彦】

企業サイト2024.06.01

発信力高め、閲覧者増へ

改正警備業法が4月に施行された。都道府県公安委員会が交付していた「認定証」は廃止され、警備業者は、認定の有効期間などを記載した「標識」を作成、掲示している。標識は、主たる営業所の見やすい場所と、自社ホームページなどのウェブサイト、両方に掲示することが義務付けられている(一部免除の規定がある)。

警備会社に業務を依頼したいと考えているユーザーなどを含め誰もが、スマートフォンで警備各社の標識を確認することができる。社会全般のデジタル化に向かって、国が急速に取り組みを進めていると実感される。法令順守に関わる標識の掲示によって、警備会社のウェブサイトは今まで以上に重要なものとなった。

企業サイトは“会社の顔”であり、顧客や顧客候補などが閲覧することから“年中無休の営業マン”といわれる。人材確保においても重要な役割を担っている。数年来、警備各社のサイトは新規の開設や大幅リニューアルが行われ、発信される情報量は大いに増えていると感じられる。

自社が提供する業務の質の高さを示すため、警備業務検定など各種の資格を持つ社員の人数をサイトに掲載する警備会社は多い。なかには「『国家資格・交通誘導警備業務2級』の取得に必要な費用を、当社は全額負担します」として、試験勉強に向けてアドバイスを行うなど社員を応援する体制を整えていることを丁寧に説明している会社も複数ある。

警備員の育成にはコストが掛かり、法で定められた新任・現任教育に加え、国家資格である検定取得や社内研修などでスキルを磨き、顧客満足度を高めている――こうした警備業者の絶え間ない取り組みは、まだまだ世間一般に知られていない。自社が教育に力を注ぎレベルアップを図っていることについて積極的に発信することは、企業の信頼や認知の向上に結び付くに違いない。

教育に加えて、処遇改善、福利厚生の充実、熱中症防止策などの取り組み、社内の親睦行事や地域貢献活動などを実践して、タイムリーに発信する。サイトを訪れる顧客候補者、求職者が求めている情報を伝える。その積み重ねによって発信力はより高まり、サイトの閲覧数は増えることだろう。

多くの求職者がインターネット上で求人情報を収集し、企業サイトを見た上で応募するか決めるといわれる。社業の魅力について各社サイトでは、さまざまなアピールが行われている。

ある警備会社のサイトでは、降りしきる雨の中で合羽を着た警備員が拡声器を使ってイベント警備に奮闘するドキュメント動画などを公開している。その趣旨について、経営者は「警備の仕事を美化せず“ありのまま”を伝えることが必要です。美辞麗句でPRしても、入社した人が“現実は違った”と感じれば早期に離職してしまう」と話した。

「この会社で警備の仕事をして良かった」といった思いを警備員や内勤者が率直な言葉で語る動画などは、求職している人の心に触れるのではないか。

警備業の認知度アップに向けた広報活動は、業界にとって喫緊の課題となっている。都道府県警備業協会の青年部会などによるPR活動と、企業各社の情報発信の輪が相まって「警備員の仕事」に対する社会の認知度が一段と高まってほしい。

【都築孝史】