視点
万博警備2025.04.21
「警備員ってかっこいい」
新年度を迎えた4月、本紙をご覧になって「おやっ」と思われた読者もいらっしゃるだろう。
創刊以来、連載を続けてきた「複眼時評」が3月21日号で終了、新たな連載「資格は身を助く」と「警備業の健康管理」がスタートした。警備業の重要課題である「教育」と「安全衛生」を主題とした連載は、それぞれのテーマに造詣の深いエキスパートが寄稿。各社の経営や警備員教育に役立てていただければ幸いだ。
本コーナー「視点」も1面から5面に引っ越した。従来の漢字に平仮名を組み合わせた柔らか味のある標題とし、編集同人が毎号交代で警備業への提言や取材現場で感じた思いなどを硬軟織り交ぜてつづっていく。
このほかにも、警備業専門新聞として「より詳しく」「より分かりやすく」「より見やすく」をテーマとした紙面づくりに継続的に取り組む所存。変わらぬご愛顧、宜しくお願い申し上げます。
◇ ◇
4月13日、「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」が開幕した。10月13日までの期間中、警備業も安全・安心な開催を“縁の下”で支える。
最新の警備機器・ノウハウを駆使した万博警備が、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会での警備がそうであったように、新たな“レガシー”を関西警備業界にもたらし、全国に広がっていくことを期待したい。
業務に「懸命」「さっそう」と当たる警備員の姿を見た多くの人に、「警備員ってかっこいい」と感じてもらい、警備業の理解促進やイメージアップにつながれば、なおさら結構だ。
警備業と同様に、人材確保に苦労してきた建設業では、30年以上も前からイメージアップに取り組んできた。その代表的な取り組みが「3K(きつい・汚い・危険)」から「新3K(給料いい・休暇取れる・希望もてる)」への脱皮。そんな取り組みのきっかけともなったのが、当時建設業界でよく耳にしたエピソードである。
――狭い道路工事現場などでは休憩場所もなく、道端で弁当を広げたり休んだりすることもある。母子連れが“勉強しないとああなるよ”と話しながら近くを通っていった――。安全・安心を担う警備員が、そんな境遇に置かれていないことを願う。
【休徳克幸】
被害想定2025.04.11
警備員の命を守ろう
「死者数29万8000人」――。政府は3月末、発生が懸念される「南海トラフ巨大地震」について10年ぶりに「被害想定」を公表した。避難所などで体調を崩して亡くなる「災害関連死」は最悪、東日本大震災の13倍の5万2000人にのぼるとしている。
被災による死亡原因の内訳では「津波」が21万5000人と全体の約70%を占めた。「建物倒壊」7万3000人、「火災」9000人と比べて際立って多い。
津波は福島から沖縄まで25都府県の広域に及び、高知と静岡では高さ30メートルを超すおそれがある。波の到達時間は和歌山が最速で、地震からわずか2〜3分で第一波の到達が見込まれるという。
和歌山県串本町では次の「津波の心得5か条」を掲げている。
▽地震が起きたらまず避難。
▽津波は繰り返し来襲する。
▽情報を待っていては逃げ遅れる。
▽家族で話し合っておこう。
▽津波は引き潮から始まるとは限らない。
警備業の備えは万全だろうか。全警協のサイトから閲覧できる「警備員の安全確保のためのガイドライン」を今一度、確認してほしい。特に「安全3原則」として記される「警備員は被災の危険が切迫していると判断した場合、避難その他の安全確保行動をとる」は周知を図る必要がある。
業務を完遂しようとするあまり、警備員が危険な状況に陥ることは避けたい。西日本豪雨災害において、岡山市内で交通誘導警備業務に当たった警備員が氾濫した河川の濁流に飲まれ、2人が亡くなった。この痛ましい事案は、重い教訓としなければいけない。
開幕が迫った「2025年大阪・関西万博」は、会場の地盤の高さを津波の想定より5メートル高い11メートルとして安全対策を講じた。震災時には最大15万人が会場に孤立することから対応訓練が1月に行われた。海上自衛隊の船を使った避難やドローンによる医療品の搬送などの手順を確認した。
万博会場に程近いインテックス大阪では4月16日から18日まで「防犯防災総合展」が開催される。大阪警協はブースを訪れる来場者に「防災グッズ」を配布する。会場では防災用品の展示のほか「南海トラフ地震への取り組み」「能登半島地震の報告」など防災セミナーを行う。各社で警備員の命を守る参考にしてほしい。
【瀬戸雅彦】
新入社員2025.04.01
「Z世代」ほめて伸ばそう
春らんまんの新年度、新社会人は希望に満ちてプレッシャーも感じつつ職業人生をスタートする。
多くの業種が人手不足に悩み、新卒学生の売り手市場が続く中、縁あって「警備業の門」をくぐる新入社員を大切に育成して活躍と定着につなげたい。
警備業界では新卒者の定期採用に取り組む企業は大手が中心だったが、近年は自社サイトに「新卒者向け」ページを特設するなど採用に力を注ぐ中小企業は増えている。これまで通年(中途)採用をメインとしてきた企業が、厳しい警備員不足の中でコストを掛けて新卒者の人材確保に力を注いでいる。次世代の幹部候補、警備現場のリーダーとなる「はえぬき社員」を長い目で育てる取り組みだ。
一方の新入社員は「Z世代」。その定義には幅があるが、現在10代後半から20代後半の若者たちを指す。民間アンケートなどによるとZ世代の傾向は「承認欲求が強い」こと。仲間うちでSNSに投稿し“いいね”などと承認し合うのが日常的で、他者から承認されたい思いは他の世代より強いようだ。
あるベテランの特別講習講師は長年の経験で培った指導のコツを次のように話していた。
「相手の良い所を積極的に見つけて、少々オーバーにほめるよう心掛けている。ほめられると人は自信を持ち、一層意欲的に取り組むものです」。
こうした“ほめて伸ばす”指導は、承認を求めるZ世代に響くのではないか。
平均年齢の高い警備業界に入ってきた若者が早期離職せずに成長していくため、適正料金確保による待遇改善は不可欠。職場の良好なコミュニケーションも大事であり、若い世代の傾向を上司や先輩が把握していれば対話を深める糸口となるだろう。
社員80人ほどのある中小警備会社は、創業以来初となる新卒の社員を迎えるにあたって、教育担当者はもとより社員全員を対象として新入社員への接し方や丁寧に育てる心構えなどについての研修を行った。新人を歓迎し大切にする職場環境づくりの一環だ。
30歳未満の警備員は、警察庁の概況によれば全体の1割ほど。警備業を選ぶ新卒者が今以上に増えることで「幅広い世代がいきいきと活躍している業界」との認知が広まってほしい。
【都築孝史】