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視点

資格認定制度2023.04.21

プランナー講習、受講した

全警協の資格認定制度「セキュリティ・プランナー講習」が4月12〜14日の3日間、都内で行われた。さまざまな業種から80人が参加、筆者もその一人に加わり受講した。

セキュリティ・プランナーは、防犯・防災などに備えて警備対象ごとに最適なプランを策定・提案し、安全を提供するスペシャリストだ。資格の有効期間は5年で、資格更新の講習を修了することで5年更新される。官公庁によっては警備業務の発注に際し、この資格の所持が入札条件になる。2012年にスタートして今回で85回を数え、これまでに約4400人が資格を取得した。

受講した理由は、業界紙記者として警備業の現状を総合的に把握しておきたかったからだ。講習は1号〜4号警備の業務知識とプランニング作成方法を横断的に学ぶほか、契約やセキュリティー機器などの専門知識も学習する。

全警協の山本正彦研修センター次長をはじめとするベテラン講師陣の講義はわかりやすく、警備業が労働集約型の「教育産業」であり、教育にも高い質が求められることを再認識した。

全警協・黒木慶英専務理事による“旬のテーマ”の講義を聴く貴重な機会もあった。内容は「危機管理」「警備計画の作成」「警備業の現状」の3テーマで、心に残ったのは「警備業務の質」についての言葉だった。要旨はこうだ。

犯罪対策閣僚会議が策定した「世界一安全な日本・創造戦略2022」には「警備業に対する社会的な需要が増大していることから、警察など関係各所と連携し生活安全産業として警備業の質的向上を図る」の一文がある。警備業は無形のサービスを提供することから、提供されるサービスに金銭的な評価につながる「質の優劣」がないと思われがちだが明確に存在し、警備計画にもまた善し悪しがある――と述べた。

資格認定制度には、警備サービスを提供する側だけでなく、発注元などサービスを利用する側にも知識を身に付ける機会を作り、相乗効果で全体の警備レベルを引き上げる狙いがある。顧客が警備業務に質の優劣があることを知り、その対価として適正な警備料金が必要であることを理解することで、警備業界のさらなる発展にもつながる。

被害が収まらない特殊詐欺や凶悪なアポ電強盗などを背景に、体感治安の悪化を感じる国民が増えている。演説中の岸田文雄首相に爆発物が投げられ社会に再び衝撃が走った。身近な犯罪への対策が求められる今こそ、エッセンシャルワーカーとして警備業の役割が注目されるときだ。それは資格認定制度の存在を広く認知してもらうチャンスでもある。

多くを学び、感じた3日間だった。受講中に思いを馳せたのは警備員の方々が24時間365日、従事するさまざまな警備現場だ。「花火大会の広報」「道路・建設工事現場のプランニング」「施設の巡回ルート作成」などの技能実習を通じ、サービスを提供する側の視点で考察する経験ができた。

セキュリティ・プランナーの資格を取得するためには、最終日の技能試験と学科試験のどちらも8割以上正解することが求められる。合否が明らかになるのは1か月半後だが、警備業の知識を広く得るという当初の目的は確実に達成できた。今後の紙面作りの糧としたい。

【瀬戸雅彦】

青年部会2023.04.11

会員増で未来切り拓こう

「私たち青年部会は、警備業界の輝かしい未来に向けて取り組みを行うことを宣言します」――。

全国警備業協会が3月に開いた「全国青年部会長等会議 in TOKYO」では「全国青年部会行動宣言」が採択された。

宣言は、次の3項目で構成されている。▽時代の最先端に立ち、柔軟な発想と情熱をもって業界発展に尽力する▽全国の青年部会の仲間と連携を強め切磋琢磨し、意見交換を通じて警備業の将来を追求する▽警備業の魅力を内外に発信する中心的役割を担う。

都道府県警協青年部会は発足が相次ぎ、39部会を数える。行動宣言は、全国の部会が連携して活動を進めるための指針となるものだ。

宣言にある「警備業の魅力発信」は、慢性的な警備員不足の打開に向けた大切な取り組みとなる。インターネット、デジタルツールを活用する幅広い情報発信、地域のイベント参加などは青年部世代の得意分野だ。人材確保など従来の課題に、DX(デジタルトランスフォーメーション)対応などの課題も加わった中、全警協はじめ関係者が“業界の若い力”に寄せる期待は、さらに高まっている。

青年部会のメンバーは、若手の経営者や経営幹部に加えて、幹部候補者などの若手社員にも裾野が広がっている。茨城警協青年部会の最年少部会員は20歳の女性、長野警協青年部会も最年少は20歳の男性だ。

部会員は、多忙な社業と併行して定例会議、研修会の開催、「警備の日」キャンペーンやSDGs(持続可能な開発目標)の清掃ボランティアなどに汗を流している。メンバーが増えることで、一人に掛かる負担は軽減されるだろう。

社員が青年部会に参加するには、本人のやる気だけでなく、所属会社が快く送り出すことが必須の条件となる。上司や周囲の理解があってこそ取り組むことができるのだ。

今回採択された行動宣言は、全国の青年部会メンバーが読み込んで共有を図るとともに、より多くの経営者・業界関係者が目を通して、今まで以上に青年部活動の推進に理解を深めてもらいたい。

青年部活動の経験者は「参加して出会いが増え、物事を多角的に見られるようになり、視野が広がった」という。仕事上のライバルだった同業他社の社員と交流して人材確保などの“共通する悩み”を語り、警備業の発展、地位向上、将来像などについて意見を交わし、協調して活動に取り組むことは、社業だけでは得ることのできない貴重な経験となるようだ。

ある青年部会長は「部会員が所属する会社から『社員を青年部に参加させて良かった、学び成長している』と思ってもらえるよう、勉強会や各種の取り組みを進めていきたい」と話している。

青年部会の参加資格は50歳以下などの年齢制限が設けられているため“卒業”による欠員は補充しなければならない。経営者が、社員の参加を積極的に後押しすることで部会員は増えていくのだ。

多くの青年部会員が連携を深め、アイデアを出し合い「行動宣言」に基づく実践を重ねて、視野を一層広げてほしい。活動を通じたメンバーの成長・スキルアップは、送り出した会社にとって有益となるに違いない。青年部メンバーの増員によって、業界と自社のより良い未来が切り拓かれることだろう。

【都築孝史】

人手不足2023.04.01

求人倍率「42.9倍」の現実

言われて久しい警備業の人手不足が深刻の度合いを増している。厚生労働省が3月初めに公表した今年1月の警備業有効求人倍率は7.45倍。半年前と比べて1.17ポイントの上昇となった。全産業は1.35倍だった。

この数値は公共職業安定所(ハローワーク)での求人、求職、就職の状況をとりまとめたもので、毎月の一般職業紹介状況の傾向を読み取ることができる。

筆者には知りたい数値があった。2号警備(交通誘導・雑踏警備)の倍率だ。厚労省雇用政策課の担当官が問い合わせに応じてくれた。伝えられたのは「42.9倍」という途方も無い数字だった。

具体的には、2号警備を請け負う会社が求めた警備員数4万8000余人に対し、交通誘導と雑踏警備に求職希望したのは1120人に過ぎなかったのだ。ちなみに1号警備の施設警備員は3.2倍だった。

本紙は毎夏、警察庁による「警備業の概況」について詳報してきた。昨年7月に公表した2021年概況の中から大枠と2号警備にまつわる集計結果のいくつかを再録してみたい。2号警備の現状が浮き彫りになるのではないかと思われるからだ。

全国の警備業者数は1万350業者、警備員数は58万9900余人で、ともに過去最多となった。業者数の内訳は、2号警備が7854業者でトップ、全体の75.8%を占めていた。2号警備の交通誘導は前年比245業者増、雑踏は同163業者の増となった。

注目したのは、会社の規模を示す警備員数別の業者状況と警備員の在職年数だった。警備員「5人以下」が最も多く全体の26%。次いで「10〜19人」が18.6%となっている。警備員数100人未満は全体の9割を占めた。

在職年数は「3〜10年未満」が33.8%。さらに早期の離職となる「1〜3年未満」が21.5%に達した。

いずれの数値にも大半が小規模な2号警備が関わっていると推察できるだろう。有効求人倍率「42.9倍」の数値がはじき出された要因であり、2号警備が警備員の確保に苦心惨憺していることの証だったのだ。

「一にも二にも処遇アップ」

2人の経営者に業界の警備員不足について話を聞いた。ともに社員数は100人余の1号・2号警備の経営者だ。近年、両社には警備員の欠員はなく、生業は順調に推移しているという。人手不足の対応策を尋ねると即座に返ってきたのは、「一にも二にも警備員の処遇アップ」だった。2人の声を紹介したい。

「警備員採用の決め手は、所得内給与の増額しかないと思う。145職種のうち135番目の低さでは話にならない。原資を得るには、お客さんに料金の引き上げを了承してもらうことに尽きる。検定資格を取って仕事をきちんとこなし、接する人に好印象を与える人材教育をしなければならない。最後は経営者が何度も発注元に足を運んで交渉することだ」――。

「2号経営者からは“人手不足でギブアップ寸前”という声を聞くが、我が社が人材の確保で心を砕いたのは、永年勤続への取り組みだ。去年の秋、長く勤務してほしい優秀な警備員に月額2万円の昇給を決めた。4月からは全員に定昇に加えてベースアップを実施する。70歳近くの定年退職者は何人か出るが、補充の採用はうまくいっているよ」――。

2号警備の有効求人倍率「42.9倍」という驚愕の数字は、是非とも一過性のものであってほしい。警備業界すべてが生涯を託せる職業になることを願うことしきりである。

【六車 護】