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視点

異業種交流2022.06.21

発想力養う鍛錬の場に

異業種交流は、今やビジネスを発展させる上での重要なキーワードになっている。警備業もその例に漏れない。普段は接する機会がない異業種の文化やノウハウに触れることで、発想の転換を促したり新たな価値を生み出す効果があるからだ。

セコム(東京都渋谷区、尾関一郎社長)は2015年から企業や研究機関、大学、ベンチャーが参加する異業種交流会「オープンラボ」を主宰している。数か月に一度「高齢化」「デジタル社会」といった旬の話題について、自由に議論する場として運営を行っている。

議論がビジネスに発展するケースもあり、テレビを使った見守りサービス「まごチャンネルwithSECOM」やバーチャル警備員、警備ロボット「cocobo」など注目を集めている新商品・サービスを生み出すことに成功している。それでも、最初の企画が商品化されるまでには数年がかかり、一筋縄ではいかなかったという。

異業種交流は、新たな仕事を獲得する手段としての側面もある。地元商工会の異業種交流会などに参加して新規受注を目指す警備会社が増えている。

清光警備保障(千葉県柏市、木村仁社長)は、15年以上前から地元の異業種交流会「柏木(はくもく)会」に参加している。同会は1996年に発足し飲食店、冠婚葬祭業、小売など約80社が加盟、1業種につき加盟は1社だけに限定している点が特徴だ。

木村社長は「柏木会は参加企業が仕事を相互に受発注するビジネス成果を主な目的としたものですが、獲得した仕事はそれほど多くありません。“仕事を獲りたい”意識が強すぎると商談がスムーズに進まないこともあります。ビジネスは度外視し自然体で交流を深め、その延長線上で仕事も受注する流れが理想的だと思います」と語っている。

三重県で交通誘導警備などを手掛けるプラス・ワン(松阪市、町田一成社長)の乗松延昭・管制係長は、今年4月から市の商工会青年部に参加し異業種との情報交換を始めた。乗松さんは「地域での交流活性化、友人づくりが目的。副次的効果として仕事の受注にもつながればよいと考えています」との姿勢で臨んでいる。

参加して数か月が経過したが、少しずつ人脈が広がりビジネスチャンスも見出せそうな感じになってきた。雑談の中から、交通誘導警備の閑散期に当たる7〜9月に、業種によっては人手が足りなくなり、繁忙期の年度末には仕事量が減ることを知り「何とかコラボレーションできないか、との思いを抱き始めています」という。

「楽しむ」気持ちで

異業種交流は、成果が少なかったり結果が出るまで時間がかかることもあるが、警備業界の中だけでは知りえなかった新しい知識や情報に触れることができる。最新テクノロジーを警備業務に活用するヒントを得られる可能性もある。

「新しい仕事がほしい」との思いは一旦脇に置き「知らなかった業界との交流を楽しむ」「発想力を養う鍛錬の場として活用する」くらいの気持ちで臨んだ方がよさそうだ。急いで結果を求めず長い目で取り組んでいけば、予想外の大きな成果を得られるのではないだろうか。

【豊島佳夫】

定時総会2022.06.11

協会活動で企業力向上を

全国各地で都道府県警備業協会の定時総会が開催されている。総会を機に退任される地域警備業の発展に尽くされた協会長をはじめとする役員、理事・監事の皆さんには、心より敬意を表する。新たに重責を担うこととなった新役員には、協会活動に新風を吹き込み、警備業のさらなる発展に尽力されることを期待したい。

全国の警備業協会に加盟する警備会社数は7052社(3月31日現在、全国警備業協会調べ)。前年同期に比べ約100社増加した。警察庁が調べた2020年12月末時点の全国の警備業者数(4条業者)は1万113社。地域によって加入率に若干のバラつきはあるものの、全国約7割の警備会社が都道府県警備業協会に加盟していることになる。

これら全国の加盟警備会社に対して各協会は、警備員の資格取得、ひいては警備技能向上を後押しする特別講習、適正業務実現の“キーマン”となる警備員指導教育責任者を対象とした研修会、経営者や経営幹部の育成・レベル向上を意図した経営者研修会――などを開催。加盟各社の企業力向上を支援している。

これらに加え各協会は、警備業の地域からの信頼をさらに高めるため、社会貢献活動の一環として警察と連携した振り込め詐欺被害防止の訴えや児童や高齢者の見守り、さらにはSDGs(国連が掲げる持続可能な開発目標)に関連した取り組みも行っている。

特に近年、各協会が注力している青年部会・女性部会の立ち上げや活動支援は、警備業の次代を担う経営幹部の育成の場として、全国の協会の主要な活動になりつつある。今や協会活動は警備会社にとって、経営者をはじめとする企業を支える人材育成や企業価値を高めるために不可欠なものとなっている。

加盟メリット伝える

一方で「協会活動に積極的なのは一部の会社だけ」との指摘は以前から聞く話だ。なかには「日々の業務に追われて余裕がない」などの理由を挙げる中小の加盟社もあろうが、まずは協会活動に参加してほしい。

一方の協会も、活動を対外的に積極的に周知することで、加盟社の参加を促すことも必要だ。警備業が協会を中心に行っている特別講習など一般にはあまり馴染みのない警備員教育や各種社会貢献活動への取り組みを一般社会に、適正警備料金確保のために非加盟社(アウトサイダー)の不公正な料金ダンピングに抗していることを警備業務の発注者団体に、それぞれ強く訴えてほしい。同時に非加盟社には、協会加盟のメリットを伝え、加入につなげてほしい。

そうした積み重ねが協会に対する社会や発注者からの信頼をより高め、地域警備業のさらなる発展につながることは明白だ。

建設工事の公共入札では、自治体が建設会社の県建設業協会などへの加盟を「加点評価」の対象としている。同様の仕組みを警備業にも適用できないのか、業界を挙げた検討が待たれる。

協会活動の最大の目的は、日常はライバル関係にある同業者同士が、警備業に山積する課題を共有し、互いに力を合わせて解決に向けて歩みを進めていくことである。全国約7割の警備会社が手を携え、同じ目的のために取り組めば、警備業のさらなる発展は必ずや実現するだろう。

【休徳克幸】

eラーニング2022.06.01

教育と業務の質上げよう

eラーニングはインターネットを利用し、パソコンやスマートフォンで動画を視聴する学習方法だ。警備業では2019年の警備業法改正で法定教育として使用可能になった。警備員教育が義務化されて40年の節目となる今年、全国警備業協会制作のeラーニング有料配信が4月4日にスタートした。

全警協には各地の警備会社から資料請求や問い合わせの連絡が数多く寄せられており、関心の高さがうかがえる。利用を始めている警備会社も多い。警備業協会の定時総会で参加者が情報交換したり事例が口コミで広がることで、活用はさらに広がりそうだ。

eラーニングの制作責任者を務めた全警協の山本正彦研修センター次長は、各都道府県の警備業協会に趣旨を説明し理解を求めた。今年2月下旬に47都道府県協会の全てと事務委託契約を結ぶに至り、一丸となって販売していく合意がとれた。

全警協では当初、昨年10月からeラーニングの提供を始める予定だった。しかし学習に重要な映像の見やすさなど商品価値を一層高めるために延期を決定。映像技術者をアドバイザーとして招き、プロの見地からカメラワークや照明の当て方、編集方法などの助言を受け見直しをかけた。撮り直したシーンも多く撮影は深夜に及ぶこともあったという。

制作会社に丸投げせず全警協内部で作り上げたことで、制作スキルが協会内に構築できた。今後、法改正などによる内容の修正があっても迅速な対応が可能となる。

「使いやすさ」にもこだわった。操作はできるだけシンプルを心掛け、操作マニュアルの内容もわかりやすくした。その結果、利用者から操作についての質問はほぼないそうだ。

従来の対面教育と比べたときeラーニングのメリットとは何か。これまで警備員教育は各社の指導教育責任者に一任され、教育効果にばらつきがあった。全警協が発行する教本をベースにした技術研究専門部員の講義を聴講することで「質の高い教育を均一に受けられる」。これが第1点。

2点目は「いつでもどこでも教育が受けられること」。インターネットの環境があれば、パソコンやスマートフォンを通しての受講が可能だ。3点目として「教育コストの削減」があげられる。新任教育10時間、現任教育6時間の教育を、全警協加盟員は3300円で受講可能だ。教育のための場所を確保する必要もない。指導教育責任者は教育のための拘束が短時間で済むようになり、その時間を別の業務に当てることで生産性が向上する。

一方で注意が必要な面もある。いつでもどこでも受講可能なことから、管理者は実施する場所や日時についてしっかり把握する必要がある。勤務時間外に受講した場合は残業手当が発生するし、時間によっては深夜残業となる。またeラーニングは法定教育時間の全てを網羅するわけではなく、業務に合わせて実技訓練を行う必要がある。eラーニングを活用することを教育計画書に記載することも忘れてはいけない。

労働人口は減少傾向にあり、警備業では現場の業務や事務処理と同様に、警備員教育も効率化を図る必要がある。各社の業務内容に合わせて適正に活用を進め、教育と警備の両面で質を高め、経営の好循環を実現してほしい。

【瀬戸雅彦】