警備保障タイムズ下層イメージ画像

視点

痴漢撲滅2024.07.11

「生活安全産業」の役割

痴漢犯の検挙件数が増加傾向にある。コロナ禍で減少していたが、5類移行で人流が戻ったことなどが背景にあるとみられる。生活安全産業の警備業に、犯罪抑止へのさらなる取り組みが期待される。

警察庁によると、2023年の痴漢犯検挙件数は2254件。前年を21件上回った。この数字はあくまで警察が検挙したものであり、実際の被害はそれより多いと考えるのが自然だ。

23年の検挙件数を発生時間帯別でみると、通勤通学の時間帯に当たる午前6〜9時が657件で最も多く、全体の29.1%。帰宅時間帯の午後6〜9時が413件、18.3%で続く。発生場所別では「電車等」が最多の1068件。全体の47.4%を占めた。次いで路上が400件(17.7%)、商業施設が326件(14.5%)だった。

国は昨年、「痴漢撲滅に向けた政策パッケージ」を策定した。▽痴漢は重大な犯罪である▽痴漢の被害は軽くない▽被害者は一切悪くない▽被害者を一人にしてはいけない▽痴漢は他人事ではない――を基本認識として示した。関係の府省庁が連携し、取り締まりの強化や社会の意識改革などを進めている。

一方、東京都は昨年、痴漢に関する大規模調査を初めて実施した。約27万人に「事前調査」を行い、電車や駅構内で痴漢被害に遭ったことがある人、痴漢を目撃したことがある人を抽出。被害者約2200人、目撃者約1300人から「本調査」への回答を得た。

調査結果の1つによると、電車内で「被害者が対応した」場合は71.7%、「目撃者が対応した」場合は92.7%、それぞれ痴漢行為が止まっていた。周囲が見て見ぬふりをせずに行動することが、被害軽減につながることを裏付けた。

キャンペーン協力

警察や鉄道事業者による「痴漢撲滅キャンペーン」が各地で行われている。社会全体で問題意識を共有し、「行動する人の輪」を広げていく上で大切な取り組みだ。

埼玉県警備業協会大宮支部は6月に、大宮駅で行われた撲滅キャンペーンに今回も参加した。会員会社のうちの20社から40人が集まり、駅構内を通勤通学で行き交う人に啓発品を配布。警備服姿での活動はひときわ目を引いた。参加した警備員は「安全安心を守る業界として、事案がなくなるように協力したい」と話した。

千葉県警備業協会は今年、県警による痴漢・盗撮防止グッズの作成に協力した。担当者は「安全安心産業として、できることを考えた」と語った。グッズは反射キーホルダーで、「痴漢・盗撮除」の文字が入り、お守りの形になっている。犯人を寄せ付けないために、バッグに付けてもらうことを願って作った。6月に八千代市内の商業施設で行われた撲滅キャンペーンで来場者に配布。被害に遭わないための対策はもちろん大切であり、警備業がその一助となった一例だ。

千葉では昨年、電車で通勤途中だった警備会社の社員が盗撮犯を取り押さえ、駅のホームで警察官に引き渡した事例があった。「被害者が悲しそうにしていたので、何とかしたかった」という。

こうした行動は結果として、業界イメージの向上につながっていく。卑劣な犯罪の撲滅は生活安全産業である警備業の重要な役割であり、業界としてできることがあるはずだ。

【伊部正之】

人材確保2024.07.01

求人票に「具体的情報」を

5月から6月まで開かれてきた都道府県警備業協会の定時総会で、多くの会長があいさつの中で強調した業界の喫緊の課題は「警備員不足」だ。

人手不足は現在、さまざまな業種で起きている。警備会社各社が他業種よりも好条件を示さなければ人材獲得で競り負けてしまう。警備員の処遇を改善することは警備業のイメージアップにもつながり、人材確保に追い風となる。

一般的な採用の方法としてハローワークの活用が挙げられる。民間の求人誌やウェブサイトのように情報掲載に費用負担がないことがメリットだ。若い求職者を中心にハローワークの利用が減少傾向にあるとも言われ、SNSなどを用いた採用活動も広がりを見せてはいるが、依然ハローワークを通じた採用を軸にしている中小の警備会社は多い。

全国のハローワークのうち117か所に設置されている「人材確保対策コーナー」では、警備業をはじめ介護・建設・運輸など人材不足が深刻な6業種への就職支援を行っている。各都道府県協会が取り組むハローワークや学校などと連携した「仕事セミナー」の開催は、警備の仕事内容への理解を深めながら警備業に興味を持ってもらう重要な機会だ。

先日、東京近郊のハローワークの同コーナーで「就職コーディネーター」として求職者の相談に応じている職員に話を聞いた。

コーディネーターは、窓口での面談の段階で迷っている人に対し「お話だけでも聞いてみましょうよ」と警備業関連の説明会やセミナーへの参加を促している。参加に慎重な人には「視野を広げるためにも話を聞いてみましょう」といった具合に、背中を押すそうだ。参加をきっかけに警備の仕事に興味を持ち、自ら警備会社の求人情報を集める求職者もいる。

このコーディネーターが勤めるハローワークでは昨年度、警備員として就業した人の半数近くが、ハローワークで開催した仕事セミナーや会社説明会に参加した人だったという。「警備の仕事を知っているようで知らないという人が多いというのが窓口での印象です。面談した際の説明で初めて施設警備と交通誘導警備という仕事を認識する人もいます」という。

求人票を取り扱う職員は「具体的な情報」を掲載した方が求職者の目に留まりやすく、ミスマッチによる早期離職を防げると指摘する。労働条件はそのままでも仕事内容を具体的に示すことで応募が増えることもあるという。

例えば、仕事内容の欄に「○○など」と書かれている場合、明記していない「など」の業務が早期離職の原因となる場合がある。施設警備の経験者がハローワークを通じて転職した際、「防災センターでの警備業務」とあり、経験が生かせると思って応募したが、実際は求人票に示されていない、未経験の「事務作業」をさせられた、あるいは「施設の営繕作業」があったから辞めたケースがあったそうだ。

また「資格支援制度あり」だけでは中身が分からない。法定教育のことなのか、別の資格取得に要する経費を会社が補助することなのかなど具体的に記すと求職者はメリットを感じやすいという。

ハローワークの求人票では人を集められない、という嘆き節の採用担当者はもう一度、求人票の記載内容を見直してみてはいかがだろうか。

【木村啓司】