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視点

情報管理2022.01.21

感度高めサイバー犯罪防ぐ

警察庁によると不特定多数の企業や個人を標的とするサイバー攻撃は増加が続いている。インターネットを利用するあらゆる企業は、セキュリティー対策の充実が求められている。

国内では昨年、「ランサム(身代金)ウェア」による被害が多発した。PCに侵入してデータを使用不能にし、その復元と引き換えに金を要求する手口だ。徳島県内では地域医療を支える町立病院が攻撃され約8万5000人の電子カルテが使えなくなり外来診療は停止、診療の全面再開まで2か月を要する事態となった。市民生活を脅かす無差別テロの一種だ。

一昨年に国内外で多数の企業が被害を受けたコンピューターウイルス「エモテット」は、いったん下火となったが、昨年11月から攻撃が再燃している。年末には国内の種苗販売の大手企業が被害を公表した。「エモテット」は電子メールの添付ファイルに仕掛けられ、感染するとPCのデータは遠隔操作により流出、さらにネットワークでつながる組織内のデータまで盗まれてしまう。

警備業者の内部情報、とりわけ大型施設の警備で警備員の配置や巡回ルートが漏れれば、侵入窃盗などの犯罪を招く恐れがある。警備員が警備現場の安全安心を守ると同時に、内勤者は情報データを守らねばならない。ウイルス検知サービスの継続的な活用、対策を担う社内の人材育成など、情報を守るための投資は重要だ。

警備業者のうち9割は、100人未満の中小企業だ。より多くの企業がペーパーレス化、オンライン活用などに対応してデジタル環境の整備を進めていくことは、警備業界の課題の一つ。こうした中で各社は、内勤社員がPCやデータを使用する際の社内ルールを整えて、情報の管理に万全を期すことが必須となる。

中小企業を狙うサイバー犯罪に「サプライチェーン攻撃」がある。セキュリティー対策が厳重な大手企業のPCに侵入するため、その企業と取引関係にあってセキュリティー対策が十分でない企業のPCを“踏み台”にするのだ。

警備会社の内勤社員は「インターネットに接続していれば攻撃を受けるリスクがある」との意識を高め、サイバー犯罪者にスキを与えないことが重要になる。コンピューターウイルスに感染しないためには「電子メールに添付された不審なファイルを開かない。開いてしまった場合、『コンテンツの有効化』『編集を有効にする』のボタンを絶対にクリックしない」といった基本対策を改めて心掛けたい。不審なメールが届いた場合は、社内に周知して注意を促すなど、社員一丸となった取り組みが感染被害を食い止める。

こうした体制づくりのために、経営者は情報に対する感度を一層高めてほしい。サイバー犯罪は日々巧妙化している。警視庁サイバーセキュリティ対策本部のツイッターを見れば、インターネットに横行するフィッシング詐欺などの最新手口や注意点を知ることができる。社内の担当者任せにせず、経営者自ら新しい情報を積極的に集めて社員に注意喚起することは、被害防止対策につながっていく。

教育訓練によって警備業務の質の向上を図るとともに、デジタル社会のリスクに対処する取り組みの推進が、企業の信頼をより厚くするに違いない。

【都築孝史】

謹賀新年2022.01.01

「警備員ファースト」今一度

旧年を振り返りますれば皆さまには、経営にご苦労を強いられながらも、小紙の発行を支える取材対応・情報提供・購読・広告出稿において、一方ならぬご支援を賜りました。衷心より感謝を申し上げます。

新しい年は新型コロナ「オミクロン株」の世界的な感染拡大が懸念される中で明けました。我が国の現下の情勢においても、先行きに不透明さを抱えながらの社会経済活動や日々の暮らしが続くことを危惧するのです。

昨年来、世上で取り沙汰されている語句に「コロナとの共生」があります。筆者は「終息の日は来る。そんなことあるのだろうか」と疑念を抱く一人でした。

しかしながら、3年目を迎えてもなお、「コロナ禍」に身を置く年明けの今、自身の中でコロナとの共生が現実味を増していることに気付くのです。

私たちは心新たに、社会の変転と環境の変化に鋭敏な感覚で対応し、警備業界の更なる発展の一助となりますよう、役立つ情報の発信に力を尽くす所存です。

「警備保障タイムズ」は今春の「3.11号」で創刊10周年の節目を迎えます。本年もご支援とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

昨夏の「東京2020」は、わが国警備業界の質の高さを世界に知らしめることができました。「安心・安全」の担い手である警備業が新たな地平を開いたと評価しても過言ではありません。

1年納めの12月21日号当欄、編集同人は「記憶の年」のタイトルを掲げ、次のように記しました。

「今や警備業は生活安全産業として、成長と発展を遂げ、国民生活に欠かせない存在となった。それを支えてきたのは、一途に適正業務の遂行を目指してきた経営者と現場の警備員である」

そして、文末でこう呼びかけたのです。「全ての警備員が生きがいを持って、安心して働き続けられる職場や業界をつくる。それが、次の警備業に向けたテーマである」――そのとおりでありましょう。

2022年。筆者は将来に思いを馳せながら、今年は足元に目を向け、企業としての土台をしっかりと固める1年にしてもらいたいと考えるのです。目指す先は優秀な人材の確保であり、そのための雇用待遇と労働環境の改善が問われているのです。

警備員の皆さんには、何より仕事と会社に愛着を感じ、長く働いてもらわなければなりません。まずは、言われて久しい、「警備員あっての警備業」と同意を為す「警備員ファースト」の精神を今一度、思い起こしていただきたい。

いくつかのステージが思い浮かびます。持ち合わすべきは、警備員に注ぐ目配りとその身を想う心配りです。具体的には、現場の環境整備、暑さと寒さを考慮した制服の提供、上質なカリキュラムの確立と教育施設を確保することなどです。

優秀な人材を現場に派遣することは、適正業務の完遂を意味します。そのことが、適正警備料金の獲得をもたらすことは、火を見るよりも明らかでしょう。これこそが警備員の賃金水準を高める原資なのです。

適正料金を得て、「警備員ファースト」を具現することは、「言うは易く行うは難し」と躊躇しないでほしい。経営陣の皆さんは、能力と知恵を発揮して、警備員を大事にする警備会社を実現してもらいたい。年頭に当たり、今年が飛躍の1年になること祈るや切です。

【六車 護】