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視点

感染爆発2021.08.21

警備機能守る体制を

新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。第5波の到来で国内全体の感染者数は1日2万人を超え、変異ウイルスであるデルタ株も猛威をふるっている。警備業も感染防止対策に加え、陽性者発生を前提とした体制構築に全力を注がなければならない。警備業は他業種のようなテレワークが難しく、施設警備や雑踏警備のように密になりやすい業務もある。常に感染リスクにさらされており早急な対策が求められている。

筆者は1年ほど前、短期間だが施設警備に携わった経験を持つ。ある日、警備員と一緒に防災センター勤務の施設管理会社社員の家族が陽性判定となった。その社員は自宅待機となったが、私を含む警備員5人も濃厚接触者として出勤停止となる可能性があった。

このため、出勤停止となっても警備機能を維持するための対策が必要だったが、会社側から具体案は何も示されず、私たちは勤務を続けた。最悪の場合、防災センターは閉鎖され警備が何日も機能不全を起こす恐れがあり、瀬戸際の状態だった。幸い自宅待機の管理会社社員は陰性判定となり、5人の警備員が濃厚接触者となることは免れた。

だが、こうした事態は多くの警備現場で起こりうる。警備員が自宅待機となった時の対策を準備しておくのは、警備機能を維持するためにも不可欠だ。しかし、多くの警備現場では対策が十分になされているだろうか。

警備員が自宅待機となっても、代わりの警備員が出勤することが必要となる。ただし、単なる数合わせではだめだ。代わりに出勤する警備現場の機器取り扱い、業務手順などを理解している即戦力の警備員でなければ意味がない。

そのためには、陽性者や自宅待機者が出る前に警備現場で研修を受け、業務内容を把握しておくことが大切となる。こうした用意があれば警備機能は維持できるが、準備不足の現場もかなりあると想定される。欠員が1人出ただけでも対応に追われている中、5人、7人といった大人数が一斉に出勤不能となっても適切に対応できる現場は限られているだろう。

陽性者発生を前提に

警備の機能不全を回避するには手間もコストも時間もかかるが避けては通れない。感染爆発がさらなる脅威を招く前に、陽性者発生を前提とした体制構築を急いで進めるべきだ。警備員には現在担当する現場に加え、少なくとも1〜2か所の警備が担えるような教育が必要となる。

代替要員を手配したため、別の警備現場が人手不足になってしまうような事態も回避しなければならない。普段から警備員の配置に余裕をもたせ、感染爆発が終息するまでの間だけでも多めに人数配分しておけば効果的だろう。必要に応じ施設警備員や雑踏警備員、交通誘導警備員の相互乗り入れを検討するやり方もある。人手に余裕のない警備会社は、同業他社との協力関係構築が重要だ。陽性者発生を迅速に把握できるよう健康管理の徹底も大切となる。

警備業は感染リスクが高いだけでなく、人手不足などで平時から労働環境が厳しい。しかし、いかなる理由があっても警備の機能不全は許されない。感染爆発という現実を直視し、あらゆる手立てを講じながら万全の体制を確立しておくことが重要だ。

【豊島佳夫】

最賃アップ2021.08.01

警備料金、引き上げ好機

厚生労働省の審議会は7月16日、2021年度の地域別最低賃金の引き上げの目安額「28円」を田村憲久厚労相に答申した。

今回の引き上げにより、全国平均の最賃額は現行の902円から930円となる。政府や労働組合が求めてきた「早期に全国平均1000円」「誰もが時給1000円」に大きく近づく。

昨年度はコロナ禍による経済への影響を理由に、同審議会は引き上げの目安額を示さずに「現状維持」を答申した。その後に開かれた地方の審議会で若干の引き上げが行われ、全国平均額は前年度比0.1%増の1円アップにとどまった。

それが一転、21年度は16年度から19年度まで年約3%増、額にして25〜27円増だった「コロナ前」の水準に戻った。

特に今回の引き上げでは、経済実態などに応じて全国をA〜Dの4ランクに分け、それぞれ目安額を示していた従来の手法を採用せず、初めて全国一律の引き上げ額を提示した。その結果、これまで引き上げ額が低かった東北や九州などのDランクの地域では、最賃の大幅なアップが実現する。長らく指摘されてきた「賃金の地域格差」是正にも一定の効果を発揮するものと思われる。

一方で、審議会での議論開始前から、政府主導のコロナ禍での最賃引き上げに反対してきた経済団体、特に中小企業団体の反発は大きい。

中小企業が大半を占め、マンパワーに頼らざる得ない警備業にとっても人件費アップは経営を大きく圧迫する。最賃引き上げに異を唱える警備業経営者は多いに違いない。

コロナ禍での最賃引き上げを行う代わりに政府は、中小企業を対象とした助成金や相談窓口の設置などの支援策を示しているが、その更なる拡充を求めたい。

最賃は社会的コスト

企業にとって義務でもある最賃は、違反すれば罰金が科されるだけでなく、即「ブラック企業」のレッテルを貼られてしまう。

他業種以上に法令順守が求められる警備業にとって、法違反などあってはならない。むしろ、他業種に比べ低賃金と指摘されてきた警備業は、最賃引き上げを警備料金引き上げの好機として捉えてほしい。

国土交通省が年度末に決定する「公共工事設計労務単価」に基づく警備員や建設作業員の労務単価(人件費)アップは、原資が税金であるにもかかわらず、今や公共工事に欠かせない社会的コストとみなされつつある。

同様に考えれば、最賃引き上げは働く人の生活向上や経済の好循環化を後押しする社会的コストとも言える。加えて、最賃は全ての企業に適用されることから、最賃アップを理由とした警備料金引き上げは発注者の理解も得られやすいはずである。

現在のコロナ禍でも「エッセンシャルワーク」として、また、開催中の「東京2020」においても、警備業は国民の安全・安心を担っている。胸を張って料金アップを訴えてほしい。

賃金をはじめとする労働条件の改善が優秀な人材の確保につながる。優秀な人材は、警備業務の質向上と発注者の信頼獲得を可能とする――。警備業経営者の料金引き上げへ向けた取り組みを応援したい。 

【休徳克幸】