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「真夏日」は〝割り増し〟2019.03.21

熱中症対策、費用を確保

国土交通省は2019年度、同省発注の直轄工事で熱中症対策を強化する。公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)などを踏まえて3月12日に公表した「土木工事・業務の積算基準等の改定」に対策を盛り込んだ。工事現場での交通誘導警備業務を担う警備業にとっても朗報と言えそうだ。

対策は、工事現場での熱中症対策に要する費用の確保のため、現場管理費を補正・精算するというもの。対象工事は、全国で行われる「主たる工種が屋外作業」の工事。

補正の方法は、工事期間中の日中の最高気温が30度以上となった“真夏日”の日数を準備や後片付け期間を含めた工期日数で除した「真夏日率」に、補正係数1.2を掛けた数値を補正値として現場管理を算出する。直接工事費2億円の工事では、工期300日のうち真夏日が50日あった場合、補正値は0.2パーセントとなり、従来より現場管理費が約43万円増加、熱中症対策の強化に振り分けることが可能となる。

同省は昨年8月、7月中旬以降の記録的高温を受け、工期の見直しも含めた熱中症対策の実施を各地方整備局や都道府県の工事主管部局に通知した。今回の措置は、これを経費的に後押しするものだ。

厚生労働省の調べでは、2018年に建設業で発生した熱中症による死亡者数と4日以上の休業者数を合わせた「死傷者数」は225人。うち10人が死亡した。いずれも全産業の中で最多だった。

一方、警備業では18年に107人が熱中症となり、うち3人が死亡した。死亡した2人は、線路上での電気設備工事現場の列車見張りと橋梁建設工事での警備業務に従事。いずれも建設工事に伴う警備業務での死亡だった。

休日確保に現場閉所も

「働き方改革」などに取り組める環境の充実も図る。週休2日制実現に向けた環境整備として、現場閉所に応じた労務費や現場管理費などの「補正係数」の適用を継続する。係数は「4週6休」「4週7休」「4週8休以上」など3種類を用意、現場閉所を促す。休日確保のための新たな取り組みとして、技術者・技能者の交代制による週休2日モデル工事も実施する。対象工事は、維持工事や施工条件により土日・祝日などの休日に作業が必要な工事など。補正対象は労務費とし、現場に従事した全ての技術者、技能労働者の休日確保状況に応じて補正する。

公共工事品質確保法を踏まえ、間接工事費の地域補正も行う。交通量が多く、交通誘導警備員の多数配置など沿道の工事制約条件の多い都市部での下水道工事で、共通仮設費や現場管理費に「大都市補正」を適用。必要な経費を確保する。

見直された積算基準などは、4月1日以降に入札書提出締切日が設定されるものから適用される。

 

「震災8年」復興進まず2019.03.11

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、東北地方を中心に甚大な被害をもたらした。特に岩手、宮城、福島の3県では、巨大津波により多くの人々が犠牲となった。震災翌年の3月11日に創刊した本紙は、編集方針の一つに「被災地に寄り添う」を掲げ、被災3県で復旧・復興へ向けて汗する警備業にスポットを当ててきた。“あの日”から8年が経った今年、津波によって街がほぼ壊滅状態となった岩手県陸前高田市を訪ねた。

日本百景にも選ばれた約7万本の「高田松原」があったという場所には、復旧・復興のシンボルとなった「奇跡の一本松」が凛としてたたずんでいた。近くには松の流失を防いだ建物の残骸が“震災遺構”として残る。その背後には巨大な防潮堤が広がっていた。

陸側に目を転じれば、浸水地の「かさ上げ」のため、山を切り崩して土砂を運んだベルトコンベヤーも撤去されていた。各所では整地や工事が行われ、交通誘導警備に従事する警備員の姿を目にした。政府は20年春を一つの区切りとしているが、被災地の復興は、さほど進んでいないようだ。

 

新労務単価、過去最高に2019.03.01

交通誘導警備が大幅増

国土交通省は2月22日、2019年度の「公共工事設計労務単価」を公表した。全国全職種の加重平均単価は前年度に比べて760円(4.1パーセント)増の1万9392円で過去最高となった。

公共工事設計労務単価は、今回から単純平均の伸び率に加え、都道府県別・職種別の標本数(人数)を元に重み付けした、労務費積算への影響の推移を測るのに適しているとされる「加重平均」でも示された。

全国の全職種加重平均の新単価は1万9392円。これまでの1万8632円に比べ760円、加重平均で4.1パーセント、単純平均で3.3パーセント増加した。

岩手、宮城、福島の東日本大震災による被災3県は従来同様上乗せされ、新単価は2万1105円(同721円増、加重平均3.5パーセント増、単純平均3.6パーセント増)。ともに同省が全国全職種平均値の公表を開始した1997年度以降で最高となった。

交通誘導警備員はA(交通誘導警備業務の1級または2級の検定合格警備員)の加重平均単価は、対前年度比6.8パーセント増の1万3682円(単純平均は885円増の1万3662円)。B(A以外)が同7.0パーセント増の1万1998円(単純平均は770円増の1万1772円)。A、Bともに建設職種で加重平均の伸び率が最も高かった「トンネル特殊工」の4.9パーセントを大きく超えた。主に警備員を含む「保安の職業」の有効求人倍率8.32など、全国的な警備員不足が単価を引き上げた。

交通誘導警備員の都道府県別の新単価を見ると、Aで最も高いのは東京の1万5200円。次いで神奈川と愛知の1万5100円、宮城と福島の1万4900円、千葉と静岡の1万4700円など。いずれも前年度に比べ1000円のアップ。最も低いのは沖縄の1万1700円(同1100円増)だった。

Bは最も高いのが東京と神奈川の1万3200円。次いで茨城の1万3100円、愛知の1万3000円など。いずれも前年度に比べ900円アップ。宮崎の1万200円(同900円増)が最も低かった。

また、前回同様、建設労働者や警備員の雇用に伴う必要経費を含む額も“参考値”として明示した。労務単価には、事業主が負担すべき人件費である法定福利費などの必要経費分が含まれていないことを改めて示し、「下請代金(警備料金)に必要経費分を計上しない」「下請代金(警備料金)から値引く」ことは“不当行為”だと注意喚起している。

新単価は、2月7日に成立した18年度第2次補正予算を踏まえ、3月から適用される。