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警備料金テーマに論議2021.03.21

全警協、青年・女性部会長会議開く

全国警備業協会(中山泰男会長)は3月10日、4回目となる「全国青年部会長・女性部会長会議」を開催した。初のオンライン会議形式で全国29青年部会と4女性部会が参加した。会議では「今後の警備業について」と題し、コロナ禍での警備料金問題、警備員不足などについて論議し、課題への認識を共有する会議となった。

中山会長はあいさつで「変動する不確実な時代を迎え、企業が生き残るためには多様性を取り入れるなどの『変化適応力』が極めて重要。20年先のビジョンを作る場合、中堅や若手の意見を大幅に反映する姿勢が必須だ。青年部・女性部が警備業界発展のために担う役割は、今まで以上に高まっている」と強調した。

論議の中では、ダンピング問題が取り上げられた。宮城警協青年部は、コロナ禍の中で昨年、極端な低価格を提示する業者が散見されたため、ダンピング予防に向けて協会主催の適正料金セミナーを企画したことを報告。これを受けて次の発言があった。

「都内などでも2号警備業務のダンピング問題は起こっている。低価格競争は“負のスパイラル”を招くものであり、より良い業界を目指す上で対策が必要だ」(東京)。「ダンピング抑止には、発注側に対して、質の高い適正な警備業務への理解をより深めてもらう説明などを重ねることが大切と考える」(同・女性部会)。

参加者は、企業がコンプライアンスのもとに公正な競争を行うため、引き続き業界全体で適正取引推進の徹底を図るとの認識で一致した。

人手不足については「警備料金の上昇傾向が続いてきた一方、なぜ警備員の賃上げは進まないか」(兵庫)との問題提起があった。

これに対し「警備員の賃上げは、経営者の意識次第と思う。公共工事設計労務単価が、労務費調査による賃金の支払い実態に応じて決まることなどを経営者は再認識すべきだ」(宮城)。「経営者の意識改革による処遇改善を促進するため、青年部全体として危機感を持って問題提起し、“うねり”を起こして業界発展につなげていきたい」(山口)などの発言があった。

経営者の世代交代に伴う「後継者不在」については「企業が目先の利益を追求するのでなく、次世代に引き継ぐ『将来の経営展望』を持っていることが業界の発展と成熟に欠かせない」(徳島)などの指摘があった。

宮城青年部が取り組み発表

会議では、宮城警協青年部の夏原潤担当理事が取り組み事例を発表した。

▽適正料金をテーマに協会の非加盟員も参加できるセミナーを開いたところ、協会加盟に結び付いた。

▽東北地区警備業協会連合会が「青年部サミット」を開催し、6県の青年部会員は連携を深めている。

▽昨年の「警備の日」に制服警備員によるファッションショーをライブ配信し警備業をPRしたところ若者に好評だった――など。

夏原担当理事は「青年部活動をさらに活性化させる必要がある。都道府県の青年部会が連携し、情報交換や協力体制を築くことが欠かせない」と述べた。

また福岡警協の女性部会「あやめ会」は、多数の女性警備員が出演する広報用のユーチューブ動画「警備の仕事を知ろう!」を再生し、参会者が視聴した。

復興に尽力する警備業2021.03.11

東日本大震災から10年

東日本大震災が発生した翌年の2012年3月11日に創刊した本紙は、編集方針の一つに「被災地に寄り添う」を掲げる。以来、3月11日号では例年、被災地で復興に取り組む警備業に光を当ててきた。震災から10年を経た今回は、岩手・陸前高田市と福島・相馬市の警備会社とともに、全国警備業協会が初の人的支援として「災害支援隊」を派遣した宮城県七ヶ浜町を訪ねた。

取材に訪れた岩手、福島、宮城それぞれの現地では、地域の復興状況も確認した。沿岸部では見上げるほどの防潮堤が整備され、津波で浸水したエリアの“かさ上げ”もほぼ完了していた。行政は、かつて同地にあったような街の再生を目指しているのだろうが、10年という時間は多くの人が新たな場所で再スタートを切るのに十分な時間となった。かさ上げした地域に出現した広大な“空き地”に人々の声が戻ってくるのはいつのことだろう。

岩手・陸前高田では、津波で大きな被害を受けた同業者の復活を支援してきた経営者に出会った。福島・相馬では、原発事故の影響などで厳しい経営を強いられながらも前に進む経営者母娘の声を聴いた。いずれも、苦難を乗り越え、警備業務を通して地元の復興に尽力する経営者だった。

宮城では、全国警備業協会をはじめとする5府県の警備業協会が、初の人的支援として防犯パトロールを行った七ヶ浜町を、元・埼玉県警備業協会災害支援隊の隊員と訪ねた。

日本三景の一つ「松島」の南部に位置する七ヶ浜町は、最大12・1メートルの津波に襲われた。被害は死者94人、行方不明者2人、半壊以上の建物被害1323世帯に及んだ。

今年2月28日、町内・菖蒲田浜の海水浴場に追悼モニュメント「祈望の鐘」が設置された。

同海水浴場は、地元住民によれば東北地方で初めて開かれた海水浴場として知られ、夏季には多くの人々で賑わっていた。しかし、津波で堤防や近くにあった多くの家々が消失した。

震災後、一部の地元住民やボランティアなどが「かつての美しい海水浴場を取り戻そう」と流れ着いた「がれき」などのゴミ拾いを開始した。宮城県警備業協会青年部有志も昨年から参加している。モニュメントに使用された鐘や流木も、浜に打ち上げられたものだ。

モニュメント設置当日は式典が行われ、町内外から約30人が参加。宮城・岩手沿岸部の寺から集まった住職が経を唱え、震災犠牲者を追悼したという。現地を訪ねたのは式典翌日の3月1日。時おり夫婦連れなどがモニュメントのある砂浜に降り立ち、横に置かれた小槌で鐘を叩いて海に向かって手を合わせていた。

労務単価 警備員A・B2.1%増2021.03.01

伸び率、全職種平均上回る

国土交通省は2月19日、2021年3月から適用する「公共工事設計労務単価」を決定・公表した。全国・全職種平均の単価は2万409円(加重平均値)。伸び率は対前年度比1.2パーセント増(単純平均値)で、前回の2.5パーセント増を下回った。一方で、同省は今回、新型コロナウイルス感染症の影響により、経済先行きの不透明感から一時的な賃金抑制が発生したと判断。昨秋の労務費調査で単価が前年度を下回った地域・職種については、単価を前年度と同額に据え置く特別措置を講じた。 

新たな労務単価には、昨年度から始めた年次有給休暇5日取得(付与)義務のための費用反映を継続した。全国・全職種平均の単価は、国交省が社会保険加入など企業に必要な法定福利費相当額の加算を始めた2013年度から9年連続のアップとなった。しかし、伸び率は前回(2.5パーセント増)を下回る1.2パーセント増にとどまった。

警備業の労務単価は、交通誘導警備業務の1級または2級の検定合格警備員の「警備員A」が、地域や標本数などで重み付けした加重平均値で1万4364円(単純平均値1万4287円)、警備員A以外の「警備員B」が1万2562円(同1万2285円)だった。前回A、Bともに全職種平均を下回った伸び率は、今回はともに2.1パーセント増と全職種平均を上回った。しかし単価額は、建設現場で簡単な清掃や後片付け、草むしり、水撒きなどを行う「軽作業員」の1万4623円をA、Bともに下回った。

昨秋の「労務費調査」で、新型コロナの影響により単価が前年度を下回った新潟・徳島・香川・愛媛・高知(警備員A)と、岐阜・静岡・三重(警備員B)は、特別措置により単価が前年度単価に据え置かれた。