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全警協 自主行動計画を改訂2024.08.21

「価格転嫁」項目を新設

全国警備業協会(村井豪会長)は「警備業における適正取引推進等に向けた自主行動計画」を改訂した。「価格転嫁の取り組み」項目を新設、政府の指針を盛り込むなど「より実用的な取り組みに向けた抜本的な改訂案」を8月1日の理事会(書面決議)で承認。全警協作成の「適切な価格転嫁リーフレット」の活用、価格交渉の後押しに向けて加盟員に周知を図っている。

自主行動計画の改訂内容は主に次の4項目だ。

(1)「発注者として取り組むべき事項」に「価格転嫁」の項目を新設した。政府が“物価上昇に負けない賃上げ”をめざし発注者に求める取り組みをまとめた。

(2)発注者として取り組むべき事項の中で、一方的な料金の減額など「買いたたき」について、下請法運用基準の改正を踏まえ「労務費などコストの著しい上昇が最低賃金上昇率などから把握できる場合に下請代金を据え置けば、その金額は『通常の対価に比し著しく低い下請代金』に該当する」との記載を追加した。

(3)「受注者として取り組むべき事項」の「買いたたき」項目で、積極的な「価格転嫁リーフレット」活用を呼び掛け、政府の労務費指針(2023年11月策定の「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」)の内容を追加。「通報窓口」として公取委・中小企業庁の「違反行為情報提供フォーム」などのURL、QRコードを追加した。

(4)「本計画の目的」に労務費指針を加筆。全体の構成も変更した。

改訂版は全警協ホームページに掲載し、9月の価格交渉促進月間に活用できるよう機関誌「セキュリティ・タイム8月号」に同封。都道府県警協には「抜本的改訂」の通知を出した。この中で「6月21日閣議決定の『経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太方針)」に初めて警備業に関する事項が明記されたことは、警備業界の価格転嫁を政府が後押しする表れであり、適切な価格転嫁を実現する絶好の機会』として、加盟員への周知徹底を要望している。

「価格転嫁の取り組み事項」(抜粋)

発注者は、毎年9月と3月の「価格交渉促進月間」などの機会に少なくとも年1回以上の協議を行う。取引価格が合理的式に算定され、受注者の適正な利益を含むものとなるよう協議し決定する。

発注者は、労務費、原材料費、エネルギー価格の上昇分の価格転嫁に応じるとともに、価格交渉を申し込むことが受注者の不利益にならないよう徹底する。2023年11月の「労務費指針」に掲げる「発注者として採るべき行動」をとった上で取引対価を決定する。

最低賃金 全国加重平均1054円2024.08.01

24年度目安 過去最大50円引き上げ

最低賃金(最賃=時給)の2024年度の引き上げ額について、厚生労働省の審議会は7月24日、過去最大の50円(5.0%増)を「目安」とすることを決めた。最賃の全国加重平均は、現在の1004円から1054円となり、過去最高を更新。物価高や春闘の賃上げ水準を反映した。実際の引き上げ額は、都道府県ごとの審議会の議論を経て決定し、10月以降に適用される。

目安は毎年、労使の代表と有識者で構成する「中央最低賃金審議会」(厚生労働相の諮問機関)が決めている。引き上げ額は都道府県を経済情勢に応じて3ランク(A=6都府県、B=28道府県、C=13県)に分け、ランクごとに提示。24年度は一律50円とした。

過去最大の上げ幅により、1000円台は現在の8都府県から16都道府県に増え、現在12県の800円台はゼロとなった。

都道府県別で最高は東京の1163円。神奈川の1162円、大阪の1114円が続く。最も低いのは岩手の943円。引き上げ額の一律により、「地域間格差」は縮まらなかった。

23年度改定では各都道府県審議会の議論の結果、24県で目安を上回った。24年度の行方が注目される。

中央審議会の今年度の議論は6月25日にスタート。7月23日の第4回小委員会で結論が出る見通しもあったが、引き上げ額をめぐって労使委員の主張に隔たりがあり持ち越しとなった。翌日に第5回小委員会が開かれ、労使双方が求めた有識者委員の見解を踏まえて協議を続け、決定に至った。

中央審議会は7月25日、武見敬三厚労相に答申を行った。

政府は最賃の全国平均について、2030年代半ばまでに1500円とすることを目指している。

上昇分、価格転嫁を

最低賃金の今年度改定額の目安が決定し、引き上げ幅は過去最大となった。物価高騰を上回る持続的な賃上げを実現するという政府の目標に沿った形だが、企業が賃上げを行うためには、その原資を確保する必要がある。コストに占める人件費の割合が高い警備業では、とりわけ上昇分を適切に警備料金に転嫁できるかが鍵となる。

24年版の「中小・小規模企業白書」で中小企業庁は、価格転嫁率向上のための取り組み強化が課題とした。物価高や人材確保への対応として、業績が改善しない中で賃上げを行う企業が増えていることに言及し、危機感を示した。

今年3月の「価格交渉促進月間」後に同庁が行ったフォローアップ調査によると、価格転嫁ができた割合は67.2%。前回調査(昨年9月の同月間後)から4ポイントほど伸びた。だが肝心の「全額転嫁」の割合は20%弱にとどまっていた。

政府が6月に閣議決定した「骨太方針」では初めて、警備業に言及があった。具体的には「警備業での賃上げに向けて労務費の価格転嫁を進める」などと明記した。方針を後ろ盾に、業界を挙げた価格交渉・転嫁の努力を続けたい。