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最高裁弁論「手当」で対立2020.09.21

待遇差訴訟 10月に4つの判決

最高裁判所は9月10日と15日、正社員と非正規社員との待遇差是正を求める4件の訴訟で「弁論」を開いた。10日の弁論では非正規社員側が「労苦に報いる各種手当に雇用形態は関係ない」と主張。会社側は「手当は長期雇用を期待する正社員へのインセンティブ(優遇措置)」と反論した。同訴訟の判決は10月15日に言い渡される。

10日弁論の訴訟は、いずれも日本郵便の東京と大阪の事業所で働く非正規社員が起こした。正社員には支給・付与されていた「年末年始勤務手当」「祝日給」「扶養手当」「夏期・冬期休暇」などが、非正規社員を対象外としていたことから、「不合理な待遇格差」として是正を求めていた。

最高裁での弁論後、厚生労働省内で記者会見を開いた原告の非正規社員側弁護団は、各種手当・休暇に対する弁論内容を次の通り明らかにした。

▽年末年始勤務手当や祝日給は、多くの労働者が休日として過ごしているはずの年末年始に業務しなければならない正社員の労苦に報いる主旨で支給されている。労苦は正社員も期間雇用社員(非正規社員)も同じだ。

▽扶養手当は、扶養家族の有無や人数などを考慮して支給の要否が決定されるべきもの。家族を扶養するための生活費に対する補助であり、家族構成に応じた手当を受給する必要性が正社員と契約社員とで変わるものではない。

▽夏期・冬期休暇は、盆休みや帰省のためだけでなく、休息や娯楽のための休暇。正社員には一律に取得させており、同じように時給制契約社員にも有給の休暇を取得させるべきだ。

一方、会社側は「正社員の待遇を厚くすることで有為な人材の長期的確保を図る必要がある」と“有為人材確保論”を展開。長期雇用を期待する正社員へのインセンティブだとし、正社員のみの各種手当・休暇の正当性を主張した。

15日に弁論が行われた2つの訴訟は、退職金や賞与などの待遇差是正を争うもの。判決は、ともに10月13日。いずれの判決も今後の「同一労働同一賃金」に大きな影響を及ぼすことが予想される。

愛媛、香川警協 災害支援隊、緊急車両を誘導2020.09.11

コロナ禍の防災訓練

コロナ禍の影響により自治体主催の防災訓練が相次いで中止になる中、愛媛県と香川県では「防災の日」を前に総合防災訓練が行われた。愛媛県警備業協会(二宮義晴会長)と香川県警備業協会(北川豊彦会長)の災害支援隊は各訓練に参加し、道路啓開で確保した救援ルートでの緊急車両の誘導訓練などを行った。

「愛媛県総合防災訓練」(主催=愛媛県、松山市、伊予市ほか)は8月29日、伊予市内で行われた。大雨と地震により土砂崩れなど複合災害が発生したことを想定した訓練に、警察や消防、自衛隊など99機関・約6000人が参加した。

愛媛警協は災害支援隊6社9人がメイン会場で行われた倒壊家屋救出訓練に参加。隊員は2班に分かれ、大渕勉班長(旭警備保障)以下4人は陸上自衛隊によるガレキ撤去作業現場、三浦久志班長(信和警備保障)以下4人は四国電力による電力復旧作業現場で、それぞれ交通誘導業務を行い、各機関と連携を取りながら被災後の速やかな応急復旧に取り組んだ。

池内秀樹隊長(愛媛県警備保障)は訓練後、「有事に成果を活かせるように今後も訓練を徹底していきたい」と語った。愛媛警協の災害支援隊は1998年4月に発足し、現在45社・80人で編成している。

「香川県総合防災訓練」(主催=香川県、多度津町)は8月30日に高松市内で行われた。南海トラフ大地震発生(震度6強、津波2.9メートル)を想定した訓練に、防災に関係する41機関500人が参加した。

香川警備は災害支援隊7人が参加。訓練は災害発生時に多重事故が起こった想定で行われ、隊員は警察・レッカー業者と連携して事故車両を撤去する際の通行車両誘導業務に従事した。

香川警協では2009年4月に「安全パトロール災害支援警備隊」を発足させた。13年9月には災害支援活動に目的の重点を置いた「香川警協災害支援隊」を21社72人で再編成した。

非正規待遇格差に新判断へ2020.9.1

最高裁 今月、是正訴訟5件で「弁論」

最高裁判所は9月、アルバイトなど非正規社員が、正社員との待遇格差の是正を求めた5件の訴訟で「弁論」を開く。最高裁が弁論を開くのは、2審の高等裁判所での判決を見直す場合とされる。来春から「同一労働同一賃金」が中小企業にも適用となるが、非正規雇用の警備員を抱える警備会社にも大きな影響を与えそうだ。

最高裁での「弁論」は、9月10日と15日に各2件、24日に1件の計5件の訴訟について開かれる。いずれも、雇用形態による不合理な待遇差の解消や同一労働同一賃金を規定した現在の「パートタイム・有期雇用労働法」の原形となった旧・労働契約法20条の適用可否をめぐるもの。大学や地下鉄売店、郵便局などで働く正社員には支給・付与されていた年末年始勤務手当、祝日給、扶養手当、夏期休暇、病気休暇、賞与、退職金などが、アルバイトや契約社員など非正規社員には支給・付与されなかったことから、正社員との待遇格差の是正を求めて訴訟となっていた。

5件の訴訟の高裁判決では、一部については「待遇の相違は不合理」として、非正規社員の会社への損害賠償請求を認めたものの、その判断は訴訟によってまちまちとなっている。また、旧・労働契約法20条をめぐる訴訟では、最高裁は2018年の2件の判決(ハマキョウレックス事件と長澤運輸事件)で同法に関する最高裁の考え方を示していたが、「不合理な待遇差」の判断には、さらなる判例の積み重ねが求められていた。

今回の弁論により最高裁は、正社員と非正規社員の違法な待遇格差について新たな判断を示す見込みで、今後の不合理な待遇差の解消や同一労働同一賃金への影響も予想される。