警備保障タイムズ下層イメージ画像

TOP NEWS

アクションプラン策定へ2020.07.21

全警協「成長戦略検討会」が初会合

全国警備業協会(中山泰男会長)は7月14日、「基本問題諮問委員会(成長戦略を検討する委員会)」の初会合を「ウェブ会議」方式で開催した。6月10日の全警協総会で委員会設置と検討テーマ、委員を明らかにしていた。検討結果は2021年総会で「全警協アクションプラン」として公表する。

5テーマに作業部会

基本問題諮問委(成長戦略検討会)の目的は、厳しさを増す警備業を取り巻く環境を踏まえた、喫緊かつ重要な課題に絞り込んだ議論。来年総会までに短期的なアクションプランを策定、迅速にその実行を図る。併せて、中・長期的な視点に立った将来的な制度設計の策定も目指す。

検討テーマは(1)外国人雇用(2)ICT、テクノロジー活用(3)成長戦略に資する警備業法の見直し(4)経営基盤の強化、単価引き上げ策(5)災害時の警備業の役割明確化――の5分野。14日の初会合では、テーマごとに5人の委員が警備業での現状や課題、私見を交えた今後の検討の方向性などについてプレゼンテーションを行った。

外国人雇用では、「特定技能外国人」の受け入れ状況などが報告。今後も国内警備員の確保難が予想されることから、警備各社の外国人警備員の受け入れニーズの調査や外国人を受け入れる際に必要な技能水準や日本語能力などについて検討することが提案された。

成長戦略に資する警備業法の見直しでは、警備業法が「警備事業者から見てどうあってほしいか、どうあるべきか」――との視点に立った検討などの方向性が示された。例えば、取引条件の適正化のため、警備業法に建設業法のように不当取引を禁止する条項を付加するなどのアイデアも披露された。

諮問委では今後、今回プレゼンを行った委員を部会長に5つの「作業部会」を編成。部会メンバーは原則として委員が務めるが、必要に応じて委員以外の人材にも協力を求める。

初のウェブ会議で

基本問題諮問委(成長戦略検討会)の初会合は、新型コロナウイルス感染症への感染防止のため、全警協会合では初のインターネット回線を用いた「ウェブ会議」方式が採用された。中山会長と在京の4委員は、新宿区内の全警協会議室に集合、他の委員は各道県の自社などから、それぞれパソコンを用いて参加した。

委員会に先立ち、仙台大学(宮城県柴田町)の遠藤保雄学長による「警備業60年の軌跡を踏まえ成長を考える」と題した講演が行われた。同講演も大学と全国の各委員をインターネットで結んで行われた。

遠藤氏は、警備業に造詣が深く、宮城県警備業協会とインターンシップや各種事業で連携している。同氏は、警備業が抱える構造的な課題や今後の展望などについて解説、委員会での議論の出発点となった。

全警協・中山会長「未来の警備業つくる」

「未来の警備業をつくる」という気持ちで議論できた。課題を一つひとつ解決してアクションプランを作り、成果を上げられるという確信を持てた。5つのテーマごとの作業部会の部会長も決まった。今後は警備業の資産をフル活用し、テーマ・内容によっては14人の委員以外にも参加してもらうことになるだろう。アクションプランで課題を解決することが、警備業のステータス確立にもつながる。

請求件数が過去最多2020.7.11

2019年度 過労死等の労災補償状況

厚生労働省は6月26日、2019年度の「過労死等の労災補償状況」を公表した。脳梗塞や心筋梗塞などの「脳・心臓疾患」や、強いストレスが原因で発症した「精神障害」により死亡(自殺)や病気になったのは、仕事の過重な負荷による「労災」だとして、本人や遺族から保険請求されたのは2996件あった。前年度に比べ299件増加し、脳・心臓疾患、精神障害ともに過去最多となった。

精神障害に関する請求件数は、前年度比240件増の2060件。うち未遂を含む自殺は同2件増の202件だった。支給決定件数は同44件増の509件で、うち未遂を含む自殺は同12件増の88件。

業種別では、請求・支給決定ともに「社会保険・社会福祉・介護事業」が最も多く、各256件、48件。警備業が含まれる「その他の事業サービス」は各59件、12件だった。

年齢別の請求は「40〜49歳」639件、「30〜39歳」509件、「20〜29歳」432件の順。脳・心臓疾患に比べて若年層が多い。

1か月平均の時間外労働時間別の支給決定は、「20時間未満」が68件で最多。次いで「100時間以上〜120時間未満」の63件と、長短に分かれた。

出来事別の支給決定は、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けた」79件、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」68件、「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」55件の順で多かった。

一方、脳・心臓疾患に関する請求件数は、前年度比59件増の936件だった。支給決定件数は同22件減の216件。うち死亡は同4件増の86件だった。

業種別では、請求・支給決定ともに「道路貨物運送業」が最も多く、それぞれ144件、61件。警備業が含まれる「その他の事業サービス業」は各75件、15件。職種別では、「自動車運転従事者」が最も多く各177件、67件。警備員が含まれる「その他の保安職業従事者」は各32件、8件。

請求が多かった年齢は「50〜59歳」333件、「60歳以上」294件、「40〜49歳」248件の順で、支給決定は「50〜59歳」の91件が最も多かった。

1か月または2〜6か月の1か月平均の時間外労働時間別では、支給決定は「評価期間1か月」では「120時間以上〜140時間未満」が33件、「評価期間2〜6か月の1か月平均」は「80時間以上〜100時間未満」が73件で、それぞれ最も多かった。

優良な警備業者選定へ2020.7.01

宮城警協「ガイドライン」策定

宮城県警備業協会(氏家仁会長)は、自治体が警備業務を警備会社に発注する際に活用する「優良警備業者選定ガイドライン」を策定した。一部自治体からあった警備業務へのクレームがきっかけ。今後、全県での活用を働き掛ける。

ガイドラインでは、警備会社の選定を、「価格」と価格以外の選定基準に基づいた「評価点」の両方で総合的に審査する「公募型プロポーザル方式」で行うよう提案している。

選定基準には(1)宮城警協加盟社(2)落札後の警備計画提出(3)実施する警備業務に係る検定合格警備員の1人以上配置――などを「必須条件」に掲げた。また、必須の「申告事項」として、実施する警備業務に係る▽警備員数▽年齢層▽性別▽経験年数比率▽検定合格警備員数▽社会保険加入警備員数などを、“任意”の申告事項として、会社概要・沿革、過去の行政処分や表彰事例などの賞罰の有無、法定教育以外に実施している教育内容――などを、それぞれ求めた。また、従前から協会を挙げて取り組む「適正料金確保」実現のため、「入札3条件」として次の事項の導入も明記した。

▷見積りに国土交通省決定の労務単価と経費率を用い、その明細を記載する。

▷最低価格を設定、最低価格以下の見積もりは無効とする。

▷最低価格の80パーセント未満の見積もりは失格とし、再入札に参加させない。

ガイドライン策定のきっかけは、昨年行われた県内自治体での選挙投票日のトラブル。ある自治体が、投票所に来場する有権者の車両を安全に誘導するため、交通誘導警備業務を発注した。その際、警備会社A社が低価格での営業を行い、同警備業務を受注。しかし、「誘導に不慣れで、何をするべきか分かっていない」「アルバイトの寄せ集め」など数多くの苦情が、投票所の自治体職員に寄せられた。このため同自治体は今年2月、宮城警協に適正な業務を遂行できる優良な警備会社を選定する方法について相談に訪れた。

事態を重く見た宮城警協は、同警協青年部の調査研究グループメンバーと高橋敦専務理事が検討を重ね、ガイドラインの“叩き台”を作成。理事会での検討を経て、5月に「優良警備業者選定ガイドライン」を策定し、6月に同自治体に提示・説明した。

自治体との対応やガイドライン策定に当たった宮城警協・高橋専務理事は「行政の警備会社への要求事項はますます高まっている」と指摘。宮城警協の方針の一つである「教育・資格取得の促進」に取り組む加盟社が適正に評価されるために選定基準を設けたと説明した。

宮城警協では今後、警備業に理解のある県議会議員の協力を得て、県発注業務など全県でのガイドライン活用を働き掛ける。