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過労死〝新基準〟で初の認定2022.01.21

労災不支給、国が取り消す

安全配慮義務尽くすように

千葉県の柏労働基準監督署(工藤仁美署長)は昨年12月6日、過労死の新基準で全国初の労災認定を行った。旧基準に基づく労災不支給処分を国が自ら取り消した。新基準では月65時間〜70時間の残業が認められれば過労死認定の可能性があり、警備業についても警備員の労務管理を適正に行う必要があると過労死弁護団は指摘している。

仕事中に脳内出血を発症して倒れ病院に救急搬送された調理師(発症当時56歳)は、死には至らなかったが左半身まひの後遺症を負った。そのため、労災保険の給付を柏労基署に申請したが退けられ、裁判の二審や三審に該当する労災保険審査官、同審査会などへの再審査請求も行った。しかし、再度請求は退けられ、19年1月に国の判断を取り消すよう同労基署長を相手に東京地裁に提訴していた。

21年12月23日に判決前の審理を終える予定だったが、厚生労働省が同年9月に改正した認定基準に沿って同労基署が再検討を開始。12月6日に判断が見直され、国が自ら処分を取り消す全国初の事例となった。

「過労死ライン」と呼ばれる月100時間あるいは2〜6か月間平均で月80時間を超す残業を前提に労災認定を行うのがこれまでの原則だった。一方で、同ラインの厳格な扱いに対する不満も多く、申請を退けられた人が行政訴訟を起こすケースが相次ぎ、国の認定が取り消される事案も少なくなかった。

新基準はそれら社会情勢を背景に改正されたもので、過労死ラインに“近い残業”が行われていれば「不規則な勤務」や「交代制勤務」などの負荷要因も総合的に考慮する形に変更された。今回の事例は、脳内出血発症前2か月間の残業時間は75時間、6か月間平均でも80時間に達する月はなかったが、原告側はタイムカードの打刻時間以外の就労時間の多さに加え、シフト調整が急で生活リズムが乱されがちだったなどの負荷要因を強く主張していた。

国は処分を取り消した理由書で「改正基準により評価し直した結果、長期間の過重業務による負荷が認められる」と述べている。

原告を弁護した過労死弁護団全国連絡会議の松丸正代表幹事(堺法律事務所・大阪府)は「救済の門戸が明確に広がった。月65時間〜70時間の残業が過労死ラインに近い残業であることが国の通達から分かる。人手不足の警備業も注意してほしい」と述べ、代表幹事の川人弁護士と同様に適正な労務管理を求めた。

過労死弁護団全国連絡会議・川人博代表幹事(川人法律事務所・東京都)の話

わが国では、国家行事等の重大イベント、日常的な企業活動の警備、市民生活の警備等、近年においても警備業界に対する要請がますます高まっています。労働時間の長さ以外にも、宿泊勤務、深夜勤務、不規則勤務、猛暑・寒冷等の過酷な労働環境、防犯等のための精神的ストレス等、働く人の命と健康にとり危険な要因が多数存在しています。実際、過労・ストレスによる死亡や病気になる例が少なくありません。警備会社の経営者は、労働者に対する安全配慮義務を尽くすよう、強く求められます。

羽ばたく青年部会2022.01.01

東北地区連・北海道警協 連携で協定

東北地区警備業協会連合会(会長=氏家仁・宮城警協会長)は2月、北海道警備業協会(小松裕会長)と両者青年部の連携強化などを内容とする協定を締結する。地区連と警協が青年部会の連携と活動支援のために協定を結ぶのは初めて。今後、全国の青年部会設立や活動にも大きな影響を与えそうだ。

東北地区連と北海道警協の協定調印式は、2月4日に札幌市内で行う。地区連からは氏家会長をはじめ宮城警協の小野寺憲幸副会長、小林光一青年部長などが、北海道警協からは小松会長、協会副会長で青年部長の清水拓也氏などが、それぞれ出席する。

協定内容は現在検討中だが、東北各県と北海道警協の青年部の連携強化を促し、これを地区連と北海道警協が支援する内容となる見込み。具体的には2019年から地区連が開催している「東北地区連青年部サミット」に、20年から“オブザーバー”として参加している北海道警協青年部を“正会員”として承認する。

また、相互乗り入れの講演活動、これまでの活動を取りまとめた小冊子(ガイドブック)の作成、分科会設立による課題ごとの検討なども計画。「青年部(会)未設置の協会に青年部活動の意義などを伝える“青年部活動伝道師”の役割も担いたい」(高橋敦・東北地区連事務局長)としている。将来的には「全国青年部サミット」の開催も視野に活動を進める。

四国地区連 4県一体で設立へ

四国地区警備業連合会(会長=北川豊彦・香川警協会長)は12月21日、松山市内で4県の会長と副会長、専務理事による「臨時総会」を開いた。全国警備業協会から黒木慶英専務理事と小澤祥一朗総務部次長が出席した。

会議の主テーマは「青年部会の活動活性化」。四国地区では愛媛警協が2020年3月、徳島警協が同年10月に青年部会を設立し、香川警協は22年6月の設立に向けて準備中の状況だ。

会議では、高知警協も含めた四国4県の青年部会で構成する「四国地区警備業連合会・青年部会」を設立することで合意した。22年6月の地区連総会で、正式に発足する予定だ。

目的は、地区内で適正料金の確保など施策の足並みをそろえ情報交換や交流をさらに深めること。同地区連は18年11月に徳島市内で開いた臨時総会でも「地区連・青年部会」の設立について協議したが、各県で青年部会を設立したのちに足並みをそろえることになっていた。

全警協・黒木専務理事は「警備業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の観点からも、都道府県協会の青年部会にはさらに活発に活動していただきたい」と期待を寄せた。