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「最低賃金」決まる2021.08.21

7県で「目安額」上回る

厚生労働省は8月13日、今秋発効する2021年度の全国の「地域別最低賃金」を公表した。7月に中央最低賃金審議会が示した引き上げの目安額と同じ「28円」増は40都道府県。7県はこれを上回った。最賃の大幅引き上げを受け同省は、特にコロナ禍で厳しい業況にある中小企業などに対し、助成金の特例的な要件緩和や拡充などで支援する。

厚労省の審議会は7月、最低賃金の「目安制度」が始まった1978年以降で最高額となる目安額「28円」を答申した。これを受け都道府県の最賃審議会で調査・審議が行われてきた。

28円増は40都道府県。一方で島根は32円、秋田・大分が30円、青森・山形・鳥取・佐賀が29円――と、目安額を上回った。これにより全国加重平均は930円となり、最高額は東京の1041円、最低額は高知と沖縄の820円。700円台の地域はなくなった。

最賃引き上げを受けて同省は「業務改善助成金」と「雇用調整助成金」の要件緩和や内容拡充を行った。

業務改善助成金は、中小企業などが生産性向上のための設備投資や人材育成・教育訓練などを行い、事業場内で最も低い賃金を一定額以上引き上げた事業主に対し、その費用の一部を助成するもの。助成要件の「賃金引き上げ対象人数」は、これまで「4〜6人」「7〜9人」など4種、引き上げ額は「30円」「60円」など4コースが設定。人数と引き上げ額に応じ20万円から最大450万円を上限に助成していた。

8月1日からは「前年または前々年比で売り上げが30%減少するなど特に業況の厳しい事業主」と「事業場内の最賃額が900円未満の事業場」への特例として、対象人数「10人以上」を新設、助成額の上限を600万円まで拡大した。現行最も活用されている30円と60円の間に新たに「45円」を増設、事業主の選択肢を増やすことで助成金の使い勝手を向上させた。

さらに、同一年度内に複数回の同助成金受給を認めていなかったが、今秋の最賃引き上げに合わせて再度賃上げを行うケースも想定されるため、年度内2回の申請を可能とした。

雇用調整助成金は、新型コロナの影響で(1)経営環境が悪化し事業活動が縮小(2)最近1か月の売上高などが前年同月比5%以上減少(3)労使間の協定に基づき休業などを行い休業手当を支払っている――全ての業種の事業主に休業手当などの一部を助成する。今後、中小企業などが事業場内で最も低い時間給を30円以上引き上げる場合、10月から12月までの3か月間、休業規模要件(小規模の休業)を問わず同助成金を支給する。

警備JV、大会支える2021.08.01

加盟553社 ワンチーム

東京五輪が7月23日に開幕した。コロナ禍で大半の競技会場が無観客となったが、世界から集ったアスリートたちは躍動している。警備業は五輪史上初となる民間警備会社による共同企業体(JV)を編成、「ワンチーム」で安心・安全の大会を支えている。 

開会式が行われた7月23日の国立競技場周辺では、猛暑の中で張り詰めた空気も感じられた。競技場周囲は鋼鉄製の高さ2メートルを超えるフェンスですき間なく覆われ、中の様子をうかがうことはできない。無観客だが世界中の要人が多数参集したこともあり、警備員や警察官は緊張感を漂わせながら厳重な警戒にあたっていた。

大半が無観客となったものの、大会は予定どおり33競技339種目1エキシビジョンが実施されている。首都圏を中心とする全42会場で行われており、警備JVはじめ警備関係者の責務も有観客の時と変わることはない。地方会場を含めて延べ60万1200人の警備員が、安心・安全な大会運営に全力を尽くし、初の民間警備会社によるオリンピック警備を支えている。

過去最大級の警備を、警備JV加盟553社が「ワンチーム」で行うのは日本の警備史上初めて。全ての警備員が同じ制服を着用して警備を行うことは、日本の警備業の実力を世界に発信する象徴でもある。12年ロンドン、16年リオデジャネイロをはじめ、過去のオリンピックではできなかった民間警備を、東京2020が初めて実現した。

大会警備を行う警備員は全47都道府県の警備会社から派遣され、事前にeラーニングで警備の要点を学んできた。現場責任者も実務トレーニングを修了して警備に臨み、会場管理会社(VMC)が会場全体の警備をコントールしている。

フェンスで囲われた競技会場は、センサーや監視カメラを随所に配置。人と車それぞれのゲートで金属探知機などを使い、セキュリティーを確保している。オリンピックでは初めて顔認証システムを採用し本人確認を厳格化。一部の警備員はウェアラブル(身体装着型)カメラを使用し、監視カメラの映像とともに警備対策センター(VSCC)に情報を集積して、発報時も迅速な対応を可能にした。

大会警備開始に寄せて 警備業のレガシー

全国警備業協会 会長 中山泰男

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が、異例づくしの中、7月23日に開幕しました。

我々は安全安心な大会運営に貢献する大きな役割を担っています。私は警備業がこの役割を果たすことに3つの大きな意義があると考えます。

第一は、警備共同企業体(警備JV)という新しいモデルによる体制を構築したことです。警備会社14社による警備JV結成の2018年4月3日を皮切りに、大会組織委員会や関係機関との綿密な協議検討を経て3年以上の積み上げの結果、未曽有の規模の警備員が参集し、安全安心の警備が開始されています。JV組合員数は553社にのぼり、文字通りオールジャパンの体制となりました。これはひとえに、組織委警備局やJV事務局、さらには各都道府県警備業協会の支援の賜物です。

第二は、コロナ禍の中、感染症対策を十分に取った警備の実践です。今や警備業は、国民の自主防犯活動を補完・代行し社会に欠くことのできない生活安全産業に発展していますが、近年は頻発・激甚化する自然災害発生の危機時の役割が高まっています。今回、この災害の一つとしてCOVID―19等の感染症への対応が明確に付加されました。現在活用されている「バブル方式」など、警備のノウハウ、業務経験が活かされる場面が増えています。

第三は、参加アスリートが競技に集中し輝かしいパフォーマンスにより、その満足度、充実感を高め、世界に感動を届けられることです。記憶に残る試合や自己ベスト・新記録の傍らで、常に安全安心の警備がアスリートを支えています。

この実現は、直接的に大会警備に関わる警備員一人ひとりはもとより、警備員を送り出す企業や団体、さらには大会期間中もそれぞれの持ち場でお客さまに対して通常の警備を担っている警備会社の力があわさってこそ、まさに「ワンチーム」「チームジャパン」により成し遂げられます。

ロンドン、リオなどの過去大会における民間警備の失敗事例の教訓を持ち出すまでもなく、東京大会はコロナ禍という異例の困難を乗り越え克服した大会としてオリンピックの歴史に刻まれ、その安全安心を担う警備業にとってもかけがえのないレガシーとなることでしょう。1964年の東京オリンピックを契機に発展した警備業の国や社会に対する恩返しにも、さらには未来における警備業の益々の発展を支える力にもなり得ると信じています。