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〝未熟練〟警備員守る2019.9.21

厚労省、全警協が教育マニュアル

厚生労働省と全国警備業協会(中山泰男会長)は、「警備業安全衛生教育マニュアル」を作成する。9月9日に作成検討委員会(委員長=新宅友穂・日本生産技能労務協会常務理事)の初会合を開催した。中小警備会社が行う安全衛生教育を支援、労働災害に遭う可能性の高い“未熟練”警備員の安全確保を目指す。2020年度からの警備員教育に活用する。

「警備業安全衛生教育マニュアル」は、厚労省が安全衛生支援事業として行う。同省入札で事業を受託した大手シンクタンク「みずほ情報総研」が作成実務と検討委の事務局などを務める。

検討委の委員には、警備業界から鈴木知実氏(MMS取締役社長)と關大介氏(セントラル警備保障東京研修センター)、全警協事務局から山本正彦氏(研修センター次長)が就任、大手・中小それぞれの視点から警備業の特性や警備員の安全衛生確保対策をマニュアルに反映させる。

マニュアルが対象とするのは、経験年数3年未満の警備員。業務経験が浅く、危険に対する感受性が低いため、労働災害に遭う可能性が高い。マニュアルは、警備会社が行う「雇入れ時教育」などでの活用を目指す。

主な内容は(1)警備業での労働災害発生状況や特徴(2)安全衛生教育の重要性(3)労働災害事例の紹介(4)労働災害防止対策の基本事項――など。施設、交通誘導、雑踏、貴重品運搬などの各警備業務での共通的な事項を網羅、安全衛生のポイントを紹介・解説する。

災害防止対策の基本では、転倒災害や交通事故、腰痛、熱中症など警備業で多く発生する労働災害を取り上げ、その防止対策を紹介する。また、KY(危険予知)活動やヒヤリ・ハット、リスクアセスメントなどの労働災害防止活動の内容や重要性も解説する。

9日の初会合ではマニュアルの“原案”が示され、各委員が内容を確認、意見を交わした。

検討委は今後、大手と中小の警備会社計10社ほどに教育実態についてのヒアリングやマニュアル原案に関するアンケートなどを実施。内容を修正し、2020年3月末の完成を目指している。

HPで公開 自由な活用を

マニュアルは、同省が都道府県労働局や全国326の労働基準監督署などに配布。同省ホームページにも掲載し、全国の警備会社がダウンロードして自由に活用できるようにする。全警協は、マニュアルを加盟社に配布するほか、都道府県警備業協会が行う研修会・セミナーで内容の周知、活用を働き掛ける。

厚労省は未熟練従業員に対する労働災害防止対策として、2015年から製造業、陸上貨物運送事業、商業など対象に安全衛生教育マニュアルを作成してきた。今回の警備業向けマニュアルも同取り組みの一環。

改正警備業法規則が施行2019.9.11

教育時間は大幅削減

警察庁は、警備業法施行規則と警備員検定規則を改正、8月30日に公布・施行した。それぞれの改正内容は、警備業法施行規則が新任・現任両教育の時間数の削減など警備員教育の合理化、警備員検定規則が空港保安と雑踏の両警備業務での配置基準の見直しなど。いずれも警備会社には大幅な規制緩和となる。

従来の「新任教育」は、基本教育15時間以上、業務別教育15時間以上の計30時間以上の教育が必要だった。

今後は基本教育と業務別教育を合わせて20時間以上の教育となる。基本・業務別それぞれの教育の時間配分は警備会社の裁量に委ねられる。

基本・業務別両教育の統合について警察庁は、「一定の裁量が警備業者に生じ、警備員の警備業務に関する知識や能力の違いに応じた必要な教育を重点的に行うことができ、より効率的かつ効果的な教育が可能になる」としている。

新たに警備員になる人に一定の要件下で業務別教育を「実地教育」で行う場合の時間数は、基本・業務別合わせて20時間の教育時間のうち、各社が定めた業務別教育の時間数を2で除した時間数または5時間のいずれか少ない時間数を超えない時間数となる。

「現任教育」は、これまでは2つの教育期(前期:4月1日〜9月30日、後期:10月1日から翌3月31日)ごとに基本教育3時間以上、業務別教育5時間以上の計8時間以上の年度内計2回・16時間以上の教育が必要だった。

今後は、基本教育と業務別教育を合わせて10時間以上、毎年度1回の教育となる。基本教育と業務別教育の時間配分は、新任教育同様、警備会社の裁量に委ねられる。

現任教育の実施時期や内容、方法、時間数、実施者の氏名と対象警備員の範囲に関する計画を記載した「教育計画書」、これら実施に誤りがないことを指導教育責任者が確認する「教育実施簿」についても、年度ごとに記載・整備する。また、教育計画書は、年度開始の日の30日前までに備えることが必要だ。

新教育計画書11月30日までに

改正規則施行前に作成した教育計画書の有効期限は、施行日前日(8月29日)。改正規則に基づいた新たな教育計画書は8月31日から3か月以内(11月30日まで)に備えなければならない。

教育方法の選択肢も増えた。これまでの講義(座学)と実技訓練のうち、講義に電気通信回線を使用する講義(eラーニング)が追加された。eラーニングを行う場合は(1)受講者が本人かどうかを確認できる(2)受講者の受講状況を確認できる(3)受講者の警備業務に関する知識の習得状況を確認できる(4)質疑応答の機会が確保されている――の全ての条件を満たすことが必要。

警備員検定規則の改正では、配置基準が見直された。空港保安と雑踏の両警備業務について、情報通信技術(ICT)の利用状況などを検定合格警備員配置の際に勘案する。具体的な解釈や運用は警察庁が別途定める。勘案する事情として同庁は、防犯カメラ、センサー、ボディスキャナーなどの活用状況を想定する。

警備員特別講習事業センターや同センターの委託を受けて都道府県警備業協会が行う講習会の実施基準も見直された。学科講習は講師1人につき40人以下、実技講習は講師1人につき10人以下だったが、いずれも人数制限が撤廃された。

災害警備 労働時間延長の対象2019.9.01

厚労省、70年ぶり基準改正

厚生労働省は8月20日、警備保障タイムズに対し、警備業が災害発生時に行う交通誘導警備業務や大規模なシステム障害発生に伴う機械警備対処員の対応が、労働基準法第33条に基づく「労働時間延長の対象になる」との見解を示した。同省が約70年ぶりに改正した、労働時間の適用除外に関する通達「許可基準」を受けたもの。時間外労働の規制強化の中、警備業は緊急事態発生時には十分な対応が可能となった。

労働時間は、労基法により1日8時間・週40時間と定められ、これを超えて時間外労働を行わせるには労使による協定(36協定)が必要だ。一方で、突発的な事故への対応や災害などで臨時の業務が必要な場合、労基法33条で一部業務が労働時間延長の対象として認められている。

しかし、同法による労働時間の延長は、通達「許可基準」(昭和22年9月13日・発基第17号、昭和26年10月11日・基発第696号)で「災害、緊急、不可抗力その他客観的に避けることのできない場合の規定であり厳格に運用すべきもの」とされ、4つの厳格な基準が示されている。

今年に4月にスタートした「働き方改革」では、同関連法として労基法が改正、時間外労働に“上限規制”が設けられるなど、これまで以上に労働時間管理が強化された。同33条に基づく災害時の対応などについては、現行通り厳格な運用の下で労働時間延長の対象とする措置が継続されたが、対象となる具体的業務については「解釈上、明確化する」こととされた(2017年3月閣議決定「働き方改革実行計画」)。

これを受けて警備業では、全国警備業協会が、2017年と翌18年に内閣官房長官や厚生労働大臣などに、労基法33条運用での警備業に対する柔軟な対応を要望していた。具体的には、災害発生時の被災地での雑踏警備や交通誘導警備、大規模システム障害発生による機械警備対処員の対応などを労働時間延長の対象とするよう求めていた。

一方、厚労省は「働き方改革実行計画」での指摘を受けて、労基法33条の運用詳細を規定していた通達「許可基準」を今年6月に約70年ぶりに改正。具体的には、(1)単なる業務の繁忙など経営上必要な臨時の業務は認めない(2)地震、津波、風水害等災害への対応など人命や公益を保護するために必要な業務は認める。例えば、ライフラインや道路交通早期復旧のための対応などは含まれる――など、現代的な事象などを踏まえた解釈の明確化を図った。

通達改正を受け本紙は、全警協が求めていた緊急時対応について同省の見解を求めていたところ、このほど、いずれも改正通達で労働時間延長の対象となるとの見解を示した。