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講習制度見直し進む2023.06.21

全警協定時総会

全国警備業協会(中山泰男会長)は6月7日、東京都内で2023年度定時総会を開いた。デジタル化を踏まえた各種講習制度の見直しについて警察庁と協議、6月下旬に「素案」を固める。事務局業務についても、今年度から専従の「デジタル化推進チーム」を編成しシステム設計などを進めていく。

警備業界の適正価格の引き上げを後押しする流れがある中、厚生労働省発表の業種別平均賃金が対象145職種中140位と前年より5位下がったことについて中山会長は「適正価格の引き上げ、賃金アップの好循環がいまだ実現できていないショッキングな現実」と指摘。賃金アップの原資を適正取引による経営基盤強化で進めていくよう要請した。

来賓の警察庁・露木康弘長官は刑法犯認知件数の増加により国民の体感治安が悪化している情勢に触れ「良好な治安の確保には、警察のみならず、事業者や地域住民、関係機関・団体が緊密に連携し、的確な対策を推進していくことが重要」と協力を呼び掛けた。

総会には43都道府県が出席し、本年度事業計画など4本の議案を承認した。同計画にはデジタル化に関連する事業が並んだ。

「教育事業の推進」では、「デジタル臨時行政調査会」の動向を踏まえ「警備員指導教育責任者及び機械警備業務管理者講習検討部会」、「特別講習デジタル化等委員会及び検定検討部会の合同会議」を立ち上げ、総会までにそれぞれ2度の会議を開いた。警察庁の意見を踏まえた「素案」に、都道府県警協からの声を集約し警備業界としての意見を「大枠案」にまとめる。大枠案を基に警察庁と協議しながらデジタル化を進めていく。

「警備業務適正化及び経営基盤強化のための各種施策の推進」では、全警協事務局内に「デジタル化推進チーム」を編成、警備業界のデジタル化を進める。チームはプログラミングを含めたシステム設計の技術者を中心に3人で編成。教育部門でのデジタル化をどう進めていくのかなどの喫緊の課題に取り組む。

このほか警備業務の適正化に関連し、「建築保全業務労務単価」と「公共工事設計労務単価」の調査に関するウェブセミナーを実施する。

「都道府県協会との連携及び加盟員に対するサービスの向上」では、ホームページにおける各種教材販売のEC(電子商取引)化を検討する。ただし「EC実施ありきというわけではなく、都道府県の状況を調査したうえで検討する」(事務局)と慎重な姿勢だ。

「関係機関・団体との連携協力」では、日本建設業連合会と定期的な会合の開催について検討する。

「労災の防止」では、受傷事故防止対策として「未熟練労働者の安全衛生教育マニュアル」の普及啓発を行う。「全国警備業殉職者慰霊祭」を「警備の日」(11月1日)に開催する。

「広報活動の積極的推進」では、警備業界の魅力を内外に発信するためのプロジェクトチームを編成する。都道府県警協の青年部会と連携し、警備員の人材確保に向けて検討する。

「適正価格で賃金アップ」実現できていない

中山会長「ショッキングな現実」

全警協が特に進めている2点を共有したい。

第一はデジタル臨時行政調査会(デジタル臨調)への対応です。テクノロジーの活用により、警備業務の質向上を図る観点を大前提にしなければなりません。全警協では4月から警察庁に各種講習制度の見直しを要望すべく「警備員指導教育責任者及び機械警備業務管理者講習検討部会」と「特別講習デジタル化等委員会及び検定検討部会の合同会議」を立ち上げました。6月下旬を目途に各方面からの要望を取りまとめ、警察庁に提出したいと考えています。

第二は、適正価格の引き上げについて。2021年の警備業の平均賃金は145職種中135番目、22年は140番目に下がりました。所定内給与額の実数では約4000円の減少です。警備業の魅力を著しく低下させる数値で、適正価格の引き上げを原資として賃金アップを図る好循環がいまだ実現できていないことを示すショッキングな現実です。

本年度も業界一丸となり粘り強く適正価格の引き上げに向けて取り組みます。昨年9月に見直した「警備業経営者のための倫理要綱」、スローガン『「適正取引・適正料金で処遇アップ!!」〜好循環を目指して〜』の周知を徹底していきます。

協会運営、新たな風吹く2023.06.11

2023総会 役員、理事に青年部会員

5月23日から31日までの間、28都道府県の警備業協会で総会が開催された。今年度は13人の専務理事が交代、青年部会員が役員や理事となるなど協会運営にも新たな風が吹き始めている。一方で課題も依然山積しており、各協会の取り組みが注目される。

長崎警協=5月24日・長崎市

冨野新会長が就任

2011年の就任以来12年間会長を務めてきた児玉正信会長(長崎綜合警備)が退任、6代目の会長に冨野つかさ氏(長崎綜合警備)が就任した。

児玉会長は、長引くウクライナ情勢の影響などで多くの品物が値上がりし、家計を圧迫していることに関し「物価高は賃金が安い警備員にとっては大きな負担です。この他にも、警備員の高齢化や経営基盤の強化など喫緊の課題が山積しておりますが、これら課題に業界一丸となって取り組み、生活安全産業として、社会の期待と信頼に応えていかなければなりません」と述べた。

青年部会については「先月、設立後初めて2社2人の新規入会があり組織も一段と充実した。警備業発展のための活動や警備業への認知度や信頼を高めるための社会貢献活動などに取り組んでほしい」と期待を寄せた。

総会と臨時理事会の終了後には4年ぶりに意見交換会を開催。38人が出席、意見・情報交換を行った。

埼玉警協=5月23日・川越市

需要の回復に期待

「(新型コロナへの)各種対応にご苦労され、警備業発展のために尽力された皆さんに敬意と感謝を申し上げます」――。炭谷勝会長(トップセキュリティ)は総会冒頭、会員の労苦をねぎらった。続けて「未曽有の事態が収束目前のところまで来ており、これまで中止や延期を余儀なくされた祭礼・イベントなども再開され、警備業への需要も回復すると予想している」と述べ、今後の業務量増加に期待を寄せた。一方で、「人材不足や高齢化、適正価格などの問題は今後も継続して取り組まなければならない」と、今後の協会活動への協力を求めた。

山口警協=5月23日・山口市

ICT化、努力が必要

豊島貴子会長(CGSコーポレーション)は「社会はコロナ禍の3年間で劇的なICT化が進みました。警備業界は全警協を中心にどのようにデジタル化に対応していくか調査・研究を重ねています。警備業を取り巻く他業界からもICT・テクノロジーを活用して安全安心産業に参入してくる可能性があります。警備業は50年間で培ったノウハウと信頼をもとに安全安心の一翼を担うため、一層の努力が必要なときです。協会は今後も会員各社に最新情報を提供していくとともに、各社の強みを結集して新しい社会に対応できるよう連携していきたい」と呼び掛けた。

総会に先駆けて「暴力団等反社会的栄力排除対策協議会」総会が開催、全員で暴力団等反社会的勢力排除宣言を行った。

福井警協=5月23日・福井市

会員間の絆が大切

2期目の舵取りを託された田﨑真弓会長(高草木警備保障)が欠席したため、水戸守一岳副会長(エル)が議長を務めた。水戸守副会長は「来春、北陸新幹線の金沢〜敦賀区間が開業するなど明るい未来を期待しているが、依然として県内は厳しい経済環境、経営環境にある」と現状を分析。「深刻な人手不足など問題山積みの今こそ、会員間、業者間の絆を強め、警備業の適正な実施を通じ社会的評価を高めていくことが大切だ」と結束を呼び掛けた。

各議案は原案通り承認され、10月23日に開催する創立50周年式典の実行委員会(水戸守委員長)発足が報告された。

秋田警協=5月24日・秋田市

期待以上の業務を

辻本光雄会長(ALOSK秋田)は、警備業を取り巻く厳しい社会情勢を指摘した上で「少子高齢化で労働人口が減少する中で、人手不足や処遇改善にどう対処していくかなど経営者にとって非常に悩ましい局面を迎えているが、経済が活性化する見通しも出ている。課題解決の糸口として適正な警備料金を確保できるよう、顧客が期待する以上の警備業務を提供する努力を惜しまないこと、誠意を持って料金改定をお願いすることが重要になる。生活スタイルが進化している時代に遅れを取ることのないよう、業界各社は協調・連携し、警備の質をより高め、適切な対応に努めることが必要ではないかと思う。今年度も資格取得やスキルアップの促進を図る教育事業をはじめ各種事業を推し進め、会員各社の期待に沿えるよう活発な活動に取り組んでまいりたい」と述べた。

「デジタル化」原則義務へ2023.06.01

厚労省「労災」含む7報告

厚生労働省は、労働安全衛生法令で警備業など事業者に課している労働基準監督署への報告の「電子申請(デジタル化)」を原則義務化する。6月上旬に関連する省令を公布、2025年1月に施行する。

電子申請(デジタル化)は、デジタル技術活用により事業者(報告者)の負担軽減や報告内容の適正化、統計処理の効率化を図るのが目的だ。

義務化されるのは全7報告で、うち警備業に関係するのは▽労働者死傷病報告▽総括安全衛生管理者・衛生管理者・産業医の選任報告▽定期健康診断結果報告書▽心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)結果等報告書――の4報告。

労働災害が発生した際に労基署に行う労働者死傷病報告は、詳細な業種や職種別の集計が容易となるよう、「事業の種類」欄と「職種」欄を現行の記述式から日本標準産業分類の分類コードの入力とする(警備業のコードは事業9231、職種923)。

同報告書中の「災害発生状況及び原因」欄は(1)どのような場所で(2)どのような作業をしているときに(3)どのような物または環境に(4)どのような不安全な、または有害な状態があって(5)どのような災害が発生したか――に沿って入力できるよう見直す。報告漏れを防ぐとともに、労災の分析を強化、再発防止に役立てる。

労災保険の補償対象外の「休業4日未満」の労災報告は、「労働保険番号」「被災者の経験期間」「親事業場などの名称」など、現行の様式では明確に記入欄が設けられていなかった事項を報告事項に追加する。

電子申請が困難な場合は、経過措置として当面は「紙媒体での報告」も可能とする。スマートフォンなどでも申請が可能となるよう、厚労省が2019年から開始した「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」を改修、デジタル庁運営の総合的行政ポータルサイト「e―Gov(イーガブ)」とも連携させる。