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「アナログ規制」を一掃 デジタル臨調、方針示す2022.09.21

警備業 認定証掲示、特別講習も対象

政府の「デジタル臨時行政調査会(デジタル臨調)」は急ピッチで社会全体のデジタル化を進めようとしている。その中心施策が行政の“アナログ規制”の一掃。警備業法の一部も含まれており、実施されれば警備業にも大きな影響を及ぼすことが予想される。

政府は6月、デジタル化を決定またはデジタル化を検討する法令を抽出、「リスト」として提示した。

同リストには、警備業法関係からは▽第6条(認定証の掲示)▽第22条第1項(警備員指導教育責任者の専任)▽第23条第3項(特別講習)――など全7法令が明記された。認定証掲示では、現行は“紙”の認定証を事業所に掲示することが義務づけられているが、今後はホームページなどインターネットでも閲覧できるような掲示法が義務づけられるものとみられる。講習については、オンラインでの受講申し込みに始まり、座学の講習、修了証発行に至るすべての過程をデジタルで完結することが求められている。

リスト化を担当するデジタル庁は、継続的にアナログ規制のある法令の抽出を行っており、警備業法関係もさらに増える可能性がある。これらを受け全国警備業協会(中山泰男会長)は、年内にも“ワーキンググループ”を設置、対応を検討していく。

コロナ禍により医療・教育現場などでの日本のデジタル化の遅れが浮き彫りとなった。政府は、経済成長停滞の最大要因はデジタル化の遅れにあるとし、また、少子高齢化による人口減少で今後、あらゆる産業・現場で人手不足が進むと指摘。現行のアナログ的な規制を見直し、デジタル化を図ることで経済成長を実現する考えだ。経済効果として中小企業のAI導入で約11兆円、行政コスト20%削減で約1.3兆円を見込み、人手不足を解消して生産性を高め、所得の向上にもつなげるとしている。

今年7月から2025年6月までの3年間を「集中改革期間」とし、その間に法改正や政省令の改正を行う予定。見直しの方法は、全府省庁で一斉に行われた「押印見直し」のような法整備を含む規制・制度の“一括見直し”を行う方針で、これにより、わが国のデジタル化は急激に進むものと思われる。

デジタル原則5項目

デジタル化を推進しているのは、昨年11月設置の岸田文雄首相を会長とする「デジタル臨調」だ。具体的作業は河野太郎衆院議員が大臣を務めるデジタル庁が担当している。

同臨調は「デジタル化を阻害しているのは、法令をはじめとする社会制度やルール(の規制)だ」と指摘。昨年12月に策定した「デジタル完結・自動化原則」など5項目からなる“デジタル原則”に沿って現行の規制を点検・見直した。

その結果、現行法令の規定を「対面講習規制」「常駐・専任規制」など7つの規制に分類、これらを「アナログ規制」としてデジタル化する方針だ。同方針を受けデジタル庁は、各府省庁所管の法律・政令・省令の中からアナログ規制のある約5000条項を抽出した。

愛媛、埼玉、千葉の3警協「災害支援」に出動2022.09.11

各地で「防災」の取り組み

各地で相次ぐ豪雨や台風、さらには地震や火山の噴火など、自然災害が多発する日本は「災害列島」とも称される。9月1日の「防災の日」前後、全国各地で自治体による防災訓練が実施された。警備業からは愛媛、埼玉、千葉の各警備業協会が出動、災害支援の技術を磨いた。

工事車両を交通誘導

愛媛県警備業協会(田中克幸会長)は8月27日、内子町などで行われた「県総合防災訓練」に参加した。

訓練の想定は、前日から降り続く大雨のために内子町に土砂災害警戒情報が発表され、町内の一部地区に避難指示が発令。加えて、伊予灘沖を震源とする大規模地震が発生し、特に大雨で地盤の緩んでいた内子町では河川氾濫による建物の倒壊や浸水、ライフラインの寸断、大規模な土砂災害など甚大な被害を伴う複合災害が発生したというもの。自治体や警察、消防、自衛隊など96機関から約7200人が参加した。

愛媛警協は、大雨と地震の複合災害で大規模停電が発生。断線した主要送電線の復旧工事で、工事車両などの交通誘導警備を担当。同協会災害支援隊(村田純一隊長=大洲警備)の警備員5人が出動し、速やかなインフラ復旧をサポートした。

九都県市訓練に参加

首都圏の1都3県5政令指定都市の“9都県市”が同時期に行う防災訓練の一つ「埼玉県北本市総合防災訓練」(九都県市合同防災訓練埼玉会場、主催=埼玉県、北本市)は8月28日に行われた。埼玉県警備業協会(炭谷勝会長)からは炭谷会長と前島順二・同協会災害対策委員会委員長(エス・エム・ティ・ガードシステム)、尾前健三専務理事、鈴木久生事務局長、災害警備隊隊員など7人が参加した。

訓練は、県北部の断層帯を震源とするマグニチュード8.1の地震が発生、北本市内で震度7の揺れを観測したとの想定で行われ、消防や警察、自衛隊など55機関から約1000人が参加した。

埼玉警協は、訓練会場を災害被災地と想定、場内の警戒警備に当たった。また、県内で多発している熱中症の防止のため、ビブス(チョッキ状の衣服)に「熱中症に注意!」などと記したシートを挟み込み、来場者に注意を促した。

前島災害対策委員長は「雨天の中、多くの参加者の真剣に訓練する姿を見て改めて防災意識の高さに感心した。警備業は日々の業務の中で警備員一人ひとりが防災・防犯意識を高め、災害や犯罪の兆候を感じ取ることが大切だと学んだ一日でした」と述べた。

首相が視察

千葉県警備業協会(加藤智行会長)は9月1日、「九都県市合同防災訓練」の中央会場となった蘇我スポーツ公園(千葉市中央区)の訓練に加藤会長らが参加した。岸田文雄首相をはじめとする関係閣僚らも現地入り、訓練を視察した。

訓練は千葉市で震度6強の直下地震が発生し、建物の倒壊や道路損壊したことを想定して行われた。警察、消防、自衛隊など約85機関(団体)・約1900人が参加した。

千葉警協は道路啓開訓練に臨み、倒木の撤去作業、放置車両のレッカー移動現場で交通誘導を行った。

訓練には同警協の青年部会の「社会貢献活動グループ」リーダーの加藤圭氏(MSK)らが“出動”。加藤氏は「災害支援隊員として参加して訓練を行う機会を得たことは、貴重な経験になりました」と話した。

災害対応の警備員を守る2022.09.01

安全確保へ「ガイドライン」

豪雨災害など大規模な自然災害が相次ぎ、住民の避難誘導や復旧・復興支援として警備業が出動する機会が増えている。災害対応に従事する警備員の安全確保は大きな課題だ。全国警備業協会(中山泰男会長)は、自然災害への対応に出動した警備員を守るとともに、持続可能な災害支援を後押しする新たな取り組みを行う。

全警協は、豪雨などの自然災害が発生した際、住民の避難誘導などのために出動した警備員が労働災害に遭うことを防止することを目的に「警備員の安全確保のためのガイドライン(案)」を作成中だ。

同ガイドラインが対象とする自然災害は、台風や豪雨、洪水、地震、津波、高潮、大雪、土砂崩れなど。それぞれの災害の際に出動した警備員が安全に避難するための目安、手順、方法などを示す。例えば、自治体が「警戒レベル5(緊急安全確保)」を発令した際には、直ちに避難するよう求める。警戒レベル4(避難指示)の場合であっても現場などの状況により避難を促す。

全警協は都道府県警備業協会や加盟員が、同ガイドラインを災害支援協定や警備契約を結ぶ自治体や企業に提示することで、現行の警備契約に「警備員避難の目安」として反映されることを期待している。

また、警備各社でも業務の性質上、これまで「台風でも警備先に向かう」といった行動が見られていたが、ガイドラインが各社の災害時の業務執行の判断基準として活用されることが期待される。

ガイドライン作成の背景には2011年の「東日本大震災」や2018年7月の「西日本豪雨災害」などがある。東日本大震災では全警協をはじめとする全国の警備業協会が組織する災害支援隊が出動、被災地の防犯パトロールを行った。西日本豪雨災害の際は、岡山県内で交通誘導警備業務に従事していた警備員が濁流にのまれ、2人が死亡した。今後も自然災害発生時に警備員の出動が見込まれるが、西日本豪雨災害での悲劇を繰り返さないため、警備員を守るための“指針”としてガイドラインを作成することとした。

同ガイドラインは月内にも開催される全警協理事会で正式決定し、都道府県警備業協会に通知される。全警協では都道府県警備業協会が行う経営者研修会などで同ガイドラインの周知・広報を行う予定だ。

協定見直し「ひな型」を作成

全警協は、都道府県警備業協会が警察や自治体と結んでいる災害時の支援協定を見直す際の「ひな型」を作成した。

ひな型の種類は、現行協定で多くを占める「協会と都道府県」「協会と警察」に加え、「協会と都道府県、警察の3者」の3パターンを用意。協定内容では「費用負担」と「出動警備員への補償」を明確にした。

費用負担では、国土交通省が毎年定めている直近の「公共工事設計労務単価」を役務提供直前の“適正価格”の基準とすることを明記。変化する市場労働単価を協定に反映させるようにした。

出動警備員への補償では、災害支援活動中の負傷を業務災害とし、労災保険による補償を明記するよう求めている。

同ひな型を参考に、実際の協定見直しでは、費用負担については単価の割増を行う「災害係数」の導入や補償では業務の危険度に応じた補償上乗せなども想定される。

都道府県警備業協会は現在、県などの自治体または警察本部のいずれかと災害発生時の支援協定を締結。内容は住民の避難誘導や復旧・復興工事に伴う交通誘導警備、避難所や避難で無人となった住宅地の警戒警備など多岐にわたる。

いずれの協定も、出動に際しての費用負担を明記しているものの、“ボランティア”となっているのが実情だ。一方、近年発生する自然災害による被害は甚大化し、警備業が行う災害支援活動も大規模かつ長期化する傾向にある。

このため全国の警備業協会では、災害支援活動の実効性を高めるとともに、持続可能な活動とするため、現行の協定を「有償化」の視点で見直そうという動きが広がりつつある。

広域にわたり甚大な被害が発生した2018年7月の「西日本豪雨災害」では、災害支援に当たった岡山県警備業協会(松尾浩三会長)が県や県警と協議、支援活動の有償化を実現した。同取り組みは“岡山モデル”として全国の警備業の注目を集め、後に発生した長野や宮城で警備業が行った災害支援活動にも活用された。全警協が作成した「ひな型」は同取り組みを参考にしたもので、協定見直しを検討する都道府県警備業協会の取り組みを後押しするものと期待される。

ひな型は、安全確保ガイドライン(案)同様、月内にも開催される全警協理事会で正式決定し、都道府県警備業協会に通知される。

災対法の「指定公共機関」 今後の検討テーマに

団体や企業が災害発生時の支援活動を行う取り組みとして、災害対策基本法に基づいた「指定公共機関」がある。同法は1959年の伊勢湾台風を契機として61年に制定。政府が行う災害対策を体系化したもので、大規模な災害が発生した際などには、内閣総理大臣の指揮の下、政府が一体となって対処することを規定している。

「指定公共機関」は、同法に基づいて政府が指定するもので、災害発生時に司令塔となる内閣府や警察庁、国土交通省などの行政機関のほか、電気、ガス、交通など公益的な事業を行う機関や団体、企業が指定されている。

警備業の一部でも、政府に警備業を指定公共機関とするよう求める声もある。しかし、防災業務計画の策定や必要物資の備蓄、定期的な訓練の実施などが法律上の義務として課されることや、費用負担について特段定められていないことなどから、警備業の指定公共機関は今後の検討課題と言えそうだ。